
魔闘気で足元を切り崩され、地下の空洞へと落とされたケンシロウ。そこで彼を待っていたのは、辺り一面に噴き出した毒ガス、硫摩黄煙であった。呼吸困難と全身の麻痺が、ケンの動きを鈍らせる。対照的に、カイオウの身体には何の変化も無かった。カイオウは無呼吸状態で闘うことのできる奥義を持っていたのである。しかし、ケンの受難はこれだけではなかった。ケンの動きを妨げていたもの、それはこの洞窟に生えた幾本もの石柱であった。ケンの移動を封じるかのように生えたそれは、まるでケンの動きを呼んでいるかの如くであった。しかし、それは偶然ではなかった。拳を極めた北斗神拳継承者がとるという、北斗七星の動き。この石柱の並びは、正にその北斗七星の形だったのである。打倒北斗宗家の陣、北斗逆死葬。それは北斗宗家への憎しみが生み出した、カイオウの一族に伝えられる秘奥技であった。そしてカイオウが死を宣告してきたその場所は、死兆星と呼ばれる星の位置する場所であった。
眠れるリンを取り囲み、その目覚めを待つサモト達。だがその時、一同の元に更なる吉報が飛び込んできた。目の前のこの女は、目覚めたとき最初に見たものを愛する破孔、死環白を突かれた女だと言うのである。それを知ったサモトに、もはや目覚めを待っている余裕など無かった。目覚めの破孔に狙いを定め、指を振りかざすサモト。だが彼は気付かなかった。既にその場はただならぬ気配に包まれていた事に。そしてその気配に、部下達の身体が消し飛ばされていた事に。振り下ろされた指が貫いたのは、サモト自身の胸板であった。リンの危機を聞いて駆けつけたヒョウが、間一髪リンを救い出したのである。襲い掛かってきたサモトを一蹴したヒョウは、リンを起こさぬよう注意しつつ、再びケンシロウ達のもとへと急ぐ・・・
カイオウが新たに繰り出してきた拳。それは、生まれ持った時よりカイオウに備わっていたという不敗の拳であった。しかしカイオウは知らなかった。それが北斗宗家のみに伝えられている拳であることを。それは、カイオウもまた北斗宗家の血を引きし男であることの証であった。ケンは言った。お前の額にある北斗七星の痣が何よりの証拠だと。女人像に隠されていた北斗宗家に纏わる哀しき悲話を、ケンは今語り始めた。
その夜、妹シュメは姿を消した。息子シュケンへを助けにいったのである。だが彼女の逃亡劇は、高僧達の手によってすぐに終わりを迎えた。シュメを動かしたもの、それは彼女の身体に巣喰う病魔であった。彼女の命はもう長くは無かった。ならばせめて息子だけには生きて欲しい。その思いが、シュメを狂わせたのである。シュメの行為を重く見た高僧達は、オウカの息子リュウオウを伝承者と決定。しかし、それに異を唱えたのはオウカであった。シュメの我が子への愛の深さに、オウカは心打たれたのである。伝承者はシュメの息子シュケンに。そう言い残し、オウカは崖に身を投げたのだった。命を賭したそのオウカの願いを受け、高僧達は確信した。オウカとシュメ、二人の母の愛を背負いしシュケンこそが、真の伝承者となるであろう事を。| [漫画版との違い] ・原作で硫摩黄煙のことを話すのは北斗逆死葬を語った後だが、アニメでは落下してすぐ ・原作ではサモトがヌメリに殺され、そのヌメリがリンに目覚めの破孔を突こうとするが、アニメではヌメリは登場せず、そのままサモトが破孔を突こうとする。(サモトの容姿は原作のヌメリ) ・リンが死環白を突かれた女である事を、サモトが部下から伝えられるシーン追加 ・サモトの部下を殺すのが、ヌメリからヒョウに変更 ・ケンが右手の指で髪の毛を飛ばすシーン追加 ・シュケンを継承者にしても、リュウオウを殺さないで欲しいとオウカが頼むシーン追加 ・飛び降りる直前、オウカが自らの髪止めをはずすシーン追加 ・アニメでは高僧達が涙を流さない ・リュウオウが野に下り、北斗琉拳を作ったというエピソード追加 |
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