
破孔死環白。カイオウが突いたその破孔は、リンの愛を弄ぶ非道の拳であった。何処までも卑怯なカイオウに向かい、渾身の拳を放つケンシロウ。だがそれを難なく受け止めたカイオウは、そのままケンを背後へと放り投げ、体の上に跨った。灼熱の沼の中へと落とされそうになったケンは、逆にカイオウを沼へ蹴り飛ばし、脱出に成功。瘴気の中に、カイオウの体が消える。だが、自らの聖地ともいうべきこの場所で、カイオウが簡単に死ぬはずはなかった。沼に浮かぶ小さな一本岩の上で逆立ちになりながら、カイオウは沼への転落を逃れていたのだ。愛の為に闘う男と、悪に染まった男。二人の死闘は、まだ始まったばかりであった。
明朝、カイオウとヒョウの試合は始まった。だがその闘技場となったのは、落ちれば確実に死ぬ高さの吊橋の上という、あまりにも過酷な場所であった。そしてその高さは、既にヒョウの足を竦ませていた。もし攻撃を受ければ、ヒョウの落下は確実。しかしそれでも、カイオウには勝利は許されなかった。母を奪った北斗の惑星としての宿命に殉じるつもりはない。しかし弟達を見捨てることもできない。葛藤の末にカイオウが選んだ道。それは、自らが踏み抜いた吊り板へと身をはまらせ、情けなく負けを宣言するというものであった。まるで別人のように、助けを求め、死を怖がるカイオウの姿。それを見た子供達は、一斉に汗止めを谷底へと投げ捨てたのであった。全ては宿命のため・・・。この時カイオウが受けた屈辱は、北斗宗家に対する彼の恨みを更に増す結果となったのであった。
その時、何者かが放った斧が、ヒョウの頭上を掠めた。弧を描き戻ってきたそれをヒョウが破壊した瞬間、今度は鉄鎖がヒョウの首を絡め取る。襲ってきたのは、ゼブラ。彼は、ヒョウを殺すために放たれたカイオウからの刺客であった。
カイオウの放った拳を、ケンは避けずにその身に受けた。戦う度に相手の心を刻んできたケンは、その一撃で受けた傷をカイオウの心として刻もうと考えたのである。俺にはもはや心は存在しない。そう言い切るカイオウであったが、それでもケンはその心を拾わねばならなかった。それは、かつてラオウと交わした約束でもあった。ケンが北斗神拳伝承者となった日、ラオウはケンに告げた。自分は誰よりも兄を尊敬していた。兄は自分の中でいつまでも英雄でなくてはならない。故にその拳が歪んでいたならば、カイオウの名が魔王として汚れる前に、英雄として倒して欲しいのだ、と。今その契りを果たさんがため、ラオウの想いをその拳にのせ、ケンは魔神へと挑む・・・| [漫画版との違い] ・馬乗りになったカイオウを蹴飛ばしたのは、原作ではケンの頭のほうだが、アニメではケンの足側に飛ぶ。 ・原作ではシャチが呼んだ人員が数人ヒョウについているが、アニメではなし。代わりにタオがいる。 ・ヒョウがカイオウに屈辱を与えたときの事を思い出すのはゼブラ戦の最中だが、アニメではその前。 ・原作でカイオウに人気がある事をジュウケイに伝えたのは黒夜叉だが、アニメでは別の男 ・原作のサモトの容姿が、ヌメリに。かわりにヌメリは登場せず(次話) ・二人が熱泥で組み合うところから、カイオウの魔闘気で墓標が崩れるシーンまで削除 ・二人が互いの身体の傷を見せ合うシーン削除(ケンがわざと突かせた後に自分だけ見せる) ・海を渡ってきたラオウとカイオウが対面するエピソード削除 ・ラオウから打倒カイオウを頼まれた事を話すのは原作では地下空洞だが、アニメでは兄を尊敬していたとの伝言に続いて。 ・奥義魔流苛烈破でケンがふきとぶシーン追加 |
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