
女人像から放たれる声は、泰聖殿へと向かうケンシロウにも届いていた。そしてそれは、泰聖殿に近づくほどに強く、ケンの血を沸き立たせていた。俺を引き寄せる何かがそこにある。確信を強めながら、ケンはシャチ達の救出へと急ぐ。
なんとかシャチの締めから脱し、強烈な頭突きで反撃するカイオウ。だがシャチが崩れ落ちた瞬間、カイオウの前に新たな脅威が現れた。先ほどまでシャチに力を貸していた北斗宗家の亡霊達が、カイオウの周りに佇んでいたのである。恐怖し、当たらぬ攻撃を繰り出すカイオウの姿に、もはや魔神としての威厳はなかった。シャチは言った。カイオウを苦しめていた音は、女人像がケンシロウを呼び寄せる声なのだと。北斗宗家が組するのは、あくまでケンシロウであり、自分ではない。その事を再確認したカイオウは、決意を固めた。北斗神拳の奥義が愛ならば、北斗琉拳の奥義は悪。悪は愛をも支配するという事を宗家の亡霊たちに知らしめるため、カイオウは秘拳を得たケンシロウを倒そうと考えたのである。リンを連れ、カイオウは泰聖殿を後にした。ケンとの最後の戦いへと向けて・・・
辿り着いたケンが見たものは、傷つき果てたシャチの姿であった。しかし、シャチの顔には笑みがこぼれていた。女人像の力のお陰でレイアを守ることが出来た。それだけでシャチは満足だったのである。その女人像は、ケンの到着に呼応するかのように崩れ落ちた。中から現れたのは、文字の刻まれた石柱であった。秘孔 詞宝林を突け。突如頭の中に響いた声に従い、自らに秘孔を突くケン。かざした手から流れ込んできたのは、北斗神拳創始者の凄絶なる生涯、そして刻まれていた大いなる遺産であった。男の生きた世の人々の哀しみ、そして天を突く怒りを体験し、ケンは今、秘拳をその手にしたのであった。
レイアへの愛に生きた己の生涯に悔いはない。あとはケンの手によって、レイアが陽の下で愛を説ける時代が来る。シャチはそう確信していた。英雄の最後を見届けるかのように、北斗宗家の石柱が、今一度眩い光を放つ。ゆっくりと瞳を閉じたシャチの最期を、レイアは涙で見送ったのであった。最期の戦に向け、ケンは今、シャチの愛をその身体に背負ったのであった。| [漫画版との違い] ・カイオウと戦えるのかとタオに聞かれたヒョウが、それに答えるシーン追加 ・現れた宗家の亡霊にカイオウが怯え、拳をふりまわすシーン追加 ・原作ではケンが到着する前にシャチが死ぬが、アニメではケンが秘拳を会得した後に死ぬ。 ・詞宝林の事は原作ではヒョウより伝えられるが、アニメでは石柱がケンの頭の中に話しかけて教える ・女人像の腕がカイオウの居場所を示すシーンは削除 |
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