
北斗宗家の血に目覚め、闘神のオーラを出現させたヒョウ。しかしその闘神の表情は、哀しみに泣いていた。同時にヒョウの頭の中には、幼き頃の記憶の断片が呼び起こされていた。
自らの子を宿さんがため、リンへと迫るカイオウ。しかしその時、後ずさるリンの手は、枕の下にある短剣を探り当てた。それ以上近づけば死ぬ。そう言って自らの喉元に刃先をあてがうリン。だがカイオウはそれを止めようとはしなかった。もし自分の中に愛や情が残っていたなら、リンの死に心が痛むはず。死に行くリンを見届ける事で、自分の中には悪しかないのだという事を示そうと考えたのである。カイオウにとって、リンの死もまた一興に過ぎない出来事なのであった。
同時に、ケンの瞳には哀しみの光が宿っていた。凄まじい数の拳を繰り出しながら、ケンシロウへと襲い掛かるヒョウ。刹那、ヒョウの眼から零れ落ちた涙に、一瞬ケンの拳が止まる。気を取り直し、再び拳を握るケンシロウであったが、結局その拳が放たれることは無かった。同時に、ヒョウの拳もまたケンシロウには届かなかった。勝負を決したもの。それは、背後からヒョウの背を貫いたシャチの拳であった。
サヤカという女の事は知らない。自らの問いに対するそのケンの言葉に、ヒョウは力なく笑った。それは、カイオウの操り人形と化していた自分に対しての呆れ笑いであった。ヒョウが踊らされていたのは、これが初めてではなかった。カイオウの手で記憶が奪われたその日から、既にヒョウはカイオウの手の中にあったのであった。しかし今、カイオウの忌み嫌う愛の力によって、シャチはケンシロウを救い、そしてヒョウは記憶を取り戻した。そして宿命を乗り越えた二人の兄弟は、やっと真の再会を果たしたのであった。ヒョウの前に立つケンシロウは、己の腕に抱かれていた頃の赤子ではなかった。そこにあったのは、強くたくましく成長した拳士としての弟の姿であった。| [漫画版との違い] ・ケンシロウが海へ送り出されたときの事をヒョウが思い出すシーン追加 ・擾摩光掌の後、ケンが自ら服を破るシーン追加 ・原作ではカイオウがリンに短剣を渡すが、アニメでは枕の下からリンが探り当てる ・リンが自分のノドに短剣をあてがうシーン追加 ・擾摩光掌〜万手魔音拳間に、バトルシーンやそれぞれの心情を語るシーン追加 ・アニメでは万手魔音拳の奥義名を言わず。 ・万手魔音拳中にヒョウの目からこぼれた涙を見て、ケンが一瞬拳を止めるというシーン追加。 |
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