
魔闘気が生む無重力の中で、自ら回転する事により、遠心力によって位置を確保する。カイオウとの戦いの中で会得したこの暗琉天破破りによって、ヒョウのアドバンテージは失われた。そして二人が同じ土俵に立った今、遂に北斗の頂点を決める兄弟対決が幕を開けたのだった。互いに手の甲を合わせた状態から、高速の突きを放つ二人。共に間一髪で避けたかのように思われたが、次の瞬間、ヒョウの右肩は異様にうねり始めた。ケンの突きは、ヒョウも気付かぬうちにその秘孔を捉えていたのである。暗琉天破だけでなく、既にケンはカイオウとの戦いで北斗琉拳の戦いそのものを見破っていたのだ。秘孔を抉り取るという方法でなんとか破裂を免れたヒョウは、かまわず次の攻撃に移るが・・・
憎悪の象徴である魔闘気。北斗宗家が滅びようとしている今、カイオウのそれは徐々にその噴出を収め始めていた。もはや用を成さなくなったその仮面を、ゆっくりと外すカイオウ。その下から現れた顔に、リンは驚愕した。カイオウの顔は、あのラオウと瓜二つだったのである。ラオウの実兄。それが、北斗琉拳最強伝承者カイオウの正体であった。情や愛は愚か者の証。それに取り憑かれたラオウは負けて当然の愚者。そう言って弟ラオウを罵るカイオウに対し、リンは言った。最後に勝利するのは必ず愛であるという事を。しかし、カイオウはそれを一笑に伏した。今や目前に迫った己の勝利は、全て悪の力がもたらしたもの。そしてヒョウを魔道に落とす切欠となった記憶の喪失。それがジュウケイではなく、己の手によって行われた事を、カイオウは明かし始めた。
ジュウケイのもとで修行に明け暮れるカイオウとヒョウ。その組手の中で、カイオウは考えていた。本当にヒョウの記憶は失われたのか。北斗宗家の秘拳が己にとって最大の災いとなることを知るカイオウには、永遠にその在り処を封じておく必要があったのである。乱捕り中の事故を装い、ヒョウに殺気を込めた拳を放つカイオウ。しかし、その拳はジュウケイによってとめられた。激しく撃ち据えられながら、カイオウは更に野心を募らせていた。いつか必ず、ジュウケイもヒョウも己の足元に這い蹲らせてやると・・・
激しい攻防の中、一瞬の隙をついて秘孔を突き入れるケンシロウ。しかしその指先は、狙った部位から大きく逸れた場所に突き刺さった。ヒョウの魔闘気により、周囲の空間が歪められていたのである。必殺の秘孔を封じたことで、勝利を確信するヒョウ。しかし、ケンの強さは秘孔術だけではなかった。ケンシロウの拳力は、全てにおいてヒョウを圧倒していた。放たれるケンの攻撃を受けきれず、吹っ飛ばされるヒョウ。彼には理解できなかった。これほどの強さを持つ男が、何故にサヤカを殺すという行為に及んだのか。激しい葛藤が、ヒョウの頭にこだまする。次の瞬間、ヒョウは唸り声を上げて身悶え始めた。その背後に浮かび上がった幻影、それは用水路でケンが見せたものと同じ、闘神のオーラであった。| [漫画版との違い] ・原作でヒョウが破孔を抉り取るのは刃でだが、アニメでは自分の指でに変更。 ・ケンとヒョウの戦いに、オリジナルの戦闘シーンが若干追加。 ・カイオウがラオウ伝説を作ったのが自分である事を語るシーンが削除 ・カイオウがヒョウが記憶を奪った時の事を語るのが、原作では寝室だが、アニメでは玉座の前。 ・ジュウケイに打たれるカイオウを、ヒョウがかばうシーン追加 ・原作でリンがベッドへ放り投げられたときに服を着替えさせられているが、アニメではそのまま。カイオウもアニメでは服を着たまま。 |
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