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[第143話]
骨肉の兄弟対決!
もうヒョウの瞳に涙は帰らない!!


 ケンが連れて来られたのは、かつて赤子の自分が送り出されたという浜であった。実の兄である羅将ヒョウとの戦い。その宿命への覚悟を今一度確かめるため、シャチはこの全ての始まりとなった地へケンを連れて来たのである。しかし、ケンの答えは変わらなかった。北斗神拳伝承者に課せられた十字架を背負い、ケンは再びヒョウの居城へと向けて歩き出したのであった。

 2人のもとへバギーで駆けつけたのは、タオであった。レイアと子供達が作ったというプロテクターを受け取り、再度羅将達との戦いに覚悟を決めるシャチ。そしてタオの口からは、その標的の一人である羅将ヒョウに不穏な動きがあることが伝えられた。村人を使い、沼の中から羅聖殿なるものを蘇らせようとしているというのである。北斗琉拳発祥の聖地と呼ばれるその地に眠る物とは・・・

 修羅達の指揮の下、羅聖殿復活のための作業は進められていた。羅聖殿の眠る沼への水を塞き止めるため、岩を運び続ける村人達。その人質として選ばれた二人の前に用意されたのは、巨大なギロチンであった。片方の老人を断頭台へ、もう一人にギロチンを繋ぐ鎖を咥えさせる。そうすることで時間制限を作り、作業ペースをあげさせよう考えたのだ。非道なやり方に逆らうこともできず、村人達は必死に作業を続けるが・・・

 流れ出された沼水の中から、遂に羅聖殿はその姿を現した。中へ入ったヒョウが見たもの、それは北斗琉拳の先人達の墓碑であった。北斗神拳の影に隠れ、世に出ることもなくこの地に果てていった男達。彼らの怨念渦巻くこの羅聖殿を、ヒョウはケンシロウを葬る場所として選んだのであった。

 男が鎖が離してしまったにもかかわらず、老人の首は飛ばなかった。何者かが投げた岩が、落下するギロチンの刃を止めたのである。状況を理解できず、あたりを見渡す修羅達であったが、彼らはさらに驚くべき光景を目にした。数百トンはあろうかという巨大な岩が、彼らのほうへと向け、ゆっくりと近づいてきたのだ。その岩をたった一人で運んでいた男に、感嘆の声を上げる修羅達。だが彼らは知らなかった。その男がケンシロウである事を。ここからはお前が運べ。そういって手渡された大岩は、修羅達を押しつぶすと共に、その沼の口を一瞬にして塞いだのであった。

 背後に感じた気配に向かい、魔闘気を放つヒョウ。だがその男は、自らの闘気でそれを無に帰した。目の前の男が互いのターゲットである事を、二人は直ぐに理解した。ケンシロウとヒョウ。互いの拳を賭けた骨肉の兄弟対決が幕を上げようとしていた。しかし、対峙するヒョウの脳裏には、ある想いが浮かんでいた。ケンが、以前棺桶の中に見た男である事は分かっていた。しかしそれよりも遥か昔、自分はケンシロウに会っている。そんな気がしてならなかったのだ。幼き自分の中が抱える赤子に、再びケンシロウの姿が重なる。しかしその記憶の糸は、死に行くサヤカの姿によって断ち切られた。ケンシロウは、ハンとサヤカを殺した憎き仇。今のヒョウにとってそれ以外の情報など必要はなかった。

 その時、ヒョウの背後に一人の男が現れた。ヒョウの放った刃を難なくかわしながら、ゆっくりとケンシロウの側へ浮遊移動したその男。彼は以前シャチを救った、あの黒夜叉なる男であった。ケンシロウ永久の従者として使わされたという黒夜叉は、ケンシロウがこの国に帰ってくる日をずっと待ち続けていたのである。北斗宗家には代々最強の拳士が使えるという。この黒夜叉もまた、ジュウケイをも凌ぐといわれる程の拳の持ち主であった。そして、魔界に入った北斗宗家の血、すなわちヒョウの命を絶つ事こそが、彼に与えられた使命なのであった。

 一気に黒夜叉を葬ろうとするヒョウであったが、放たれた魔闘気は全く通用しなかった。暗琉天破の及ぶ範囲が狭いことを熟知している黒夜叉は、空間を乱れ飛んで実体を消す事で、その効果を無力化したのである。奥義遊昇凄舞にて完全にヒョウを幻惑し、一気に止めを刺そうとする黒夜叉。だがその一撃が放たれた瞬間、黒夜叉の右手は体から切り離されていた。黒夜叉が飛び掛る直前、宙にマントをなげたその時に、ヒョウは自分の周りに自壊羅糸を張り巡らせていたのである。傷を負い動揺する黒夜叉に、次の魔闘気を交わすことは出来なかった。暗琉天破で身動きの取れなくなった身体に、ヒョウの無数の拳が飛ぶ。しかし、その腕を掴んで止めたのはケンシロウであった。自らの位置を掴めなくなるという暗琉天破の中で、ケンが動きを取り戻す事ができたその理由とは・・・

 ケンシロウとヒョウの戦いが始まった事は、カイオウの耳にも入れられた。二人を相討たせ、北斗宗家の男を同時に葬る。己の野望がもう直ぐ果たされようとしている事に、カイオウは笑わずにはいられなかった。一方リンも北斗七星の輝きから、二人の戦いが始まった事を察していた。カイオウの思惑通りに実行された、哀しき兄弟対決。それを阻止せんと、必死に心の叫びを送るリンであったが・・・

 再び放たれたヒョウの暗琉天破が、ケンシロウの身体を覆う。しかし次の瞬間、ケンは両手の動きで反動をつけ、その場で高速回転をはじめた。暗琉天破は圧倒的な魔闘気の流れが生む一瞬の無重力により、位置を見失わせる技。ケンはその無重力の中で自ら回転する事で、遠心力によって自らの位置を確保したのである。カイオウとの戦いの中で、既にケンは暗琉天破を見切っていたのだ。二人が同じ土俵に立った今、魔神と化した兄を葬るための戦いの火蓋は切って落とされたのであった。
放映日:87年12月10日


[漫画版との違い]
・タオが、レイア手作りのプロテクターをシャチに渡すシーン追加
・原作では羅聖殿の近くまでタオが案内するが、アニメでは無し
・断頭台にかけられるのは原作では奴隷達の親族だが、アニメでは仲間に変更。
・一度わら人形でギロチンの威力を見せ付けるシーン追加
・原作では断頭台は何台もあり、幾人か殺されるが、アニメでは一人も死なない。
・原作では羅聖殿にケンが現れる前に一度黒夜叉がヒョウに襲い掛かるが、アニメでは削除。
・ケンを見たヒョウが、あの棺の中にいた男だと思い出すシーンが追加
・ヒョウが現れた黒夜叉に向かい、刃を投げて攻撃するシーン追加
・黒夜叉に暗琉天破を喰らわせる直前に、一度魔闘気で吹っ飛ばすシーン追加
・ヒョウとケンの戦いが始まった事が、カイオウに伝えられる&リンが直感するシーン追加
・暗琉天破破りをしつつ、放たれた魔闘気を四散させるというシーン追加


・プロテクター
原作ではヒョウ戦後にいつのまにかケンがつけていた、露出度抜群のプロテクター。アニメではレイアからシャチへのプレゼントとなったわけだが、シャチは服の上から装備していた。というか、これが本来の正しい付け方だと思うんですよな。まああの時ケンは服が無かったから仕方ないとは思うんですが、どうにもあの着け方は・・・なんというか・・・アブノーマルな感じがするです。シャチもわざわざ服を脱いであれを装備してたらと想像すると・・・というか、それがレイアの狙いだったとしたら・・・!
・岩の重さ
ケンが運んできた岩の重さはどれくらいなのだろう。石の重さは体積×2.75で求められるらしいのだが、なにぶん形状が楕円球なので、その体積を求めるには超難解な計算式が必要となる。まあもともとその幅や高さもおおよそでしか判断できないので、円柱として求め、若干その高さを縮めたような感じでよかろう。
 高さはおよそ10m、底辺はおよそ直径5mくらいの円であると思われる。この高さを8mに縮めて計算すると、2.5×2.5×3.14×8=157 となる。これに比重の2.75をかけると、157×2.75=431.75
およそ430トン
すげえ・・・・


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