
ケンが連れて来られたのは、かつて赤子の自分が送り出されたという浜であった。実の兄である羅将ヒョウとの戦い。その宿命への覚悟を今一度確かめるため、シャチはこの全ての始まりとなった地へケンを連れて来たのである。しかし、ケンの答えは変わらなかった。北斗神拳伝承者に課せられた十字架を背負い、ケンは再びヒョウの居城へと向けて歩き出したのであった。
男が鎖が離してしまったにもかかわらず、老人の首は飛ばなかった。何者かが投げた岩が、落下するギロチンの刃を止めたのである。状況を理解できず、あたりを見渡す修羅達であったが、彼らはさらに驚くべき光景を目にした。数百トンはあろうかという巨大な岩が、彼らのほうへと向け、ゆっくりと近づいてきたのだ。その岩をたった一人で運んでいた男に、感嘆の声を上げる修羅達。だが彼らは知らなかった。その男がケンシロウである事を。ここからはお前が運べ。そういって手渡された大岩は、修羅達を押しつぶすと共に、その沼の口を一瞬にして塞いだのであった。
その時、ヒョウの背後に一人の男が現れた。ヒョウの放った刃を難なくかわしながら、ゆっくりとケンシロウの側へ浮遊移動したその男。彼は以前シャチを救った、あの黒夜叉なる男であった。ケンシロウ永久の従者として使わされたという黒夜叉は、ケンシロウがこの国に帰ってくる日をずっと待ち続けていたのである。北斗宗家には代々最強の拳士が使えるという。この黒夜叉もまた、ジュウケイをも凌ぐといわれる程の拳の持ち主であった。そして、魔界に入った北斗宗家の血、すなわちヒョウの命を絶つ事こそが、彼に与えられた使命なのであった。
再び放たれたヒョウの暗琉天破が、ケンシロウの身体を覆う。しかし次の瞬間、ケンは両手の動きで反動をつけ、その場で高速回転をはじめた。暗琉天破は圧倒的な魔闘気の流れが生む一瞬の無重力により、位置を見失わせる技。ケンはその無重力の中で自ら回転する事で、遠心力によって自らの位置を確保したのである。カイオウとの戦いの中で、既にケンは暗琉天破を見切っていたのだ。二人が同じ土俵に立った今、魔神と化した兄を葬るための戦いの火蓋は切って落とされたのであった。| [漫画版との違い] ・タオが、レイア手作りのプロテクターをシャチに渡すシーン追加 ・原作では羅聖殿の近くまでタオが案内するが、アニメでは無し ・断頭台にかけられるのは原作では奴隷達の親族だが、アニメでは仲間に変更。 ・一度わら人形でギロチンの威力を見せ付けるシーン追加 ・原作では断頭台は何台もあり、幾人か殺されるが、アニメでは一人も死なない。 ・原作では羅聖殿にケンが現れる前に一度黒夜叉がヒョウに襲い掛かるが、アニメでは削除。 ・ケンを見たヒョウが、あの棺の中にいた男だと思い出すシーンが追加 ・ヒョウが現れた黒夜叉に向かい、刃を投げて攻撃するシーン追加 ・黒夜叉に暗琉天破を喰らわせる直前に、一度魔闘気で吹っ飛ばすシーン追加 ・ヒョウとケンの戦いが始まった事が、カイオウに伝えられる&リンが直感するシーン追加 ・暗琉天破破りをしつつ、放たれた魔闘気を四散させるというシーン追加 |
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