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[第141話]
ケンシロウの挑戦状!
オレには2度の敗北はない!!


 城に着いたヒョウの目に飛び込んできたのは、カイオウの腕の中で横たわるサヤカの姿であった。変わり果てた恋人の姿に、声をあげて泣き崩れるヒョウ。彼は知らなかった。それが、カイオウの血塗られた謀略の始まりだということを。牢獄の中に閉じ込められたリンに、それを伝える術は無かった・・・

 犯人は北斗神拳伝承者ケンシロウ。カイオウは眉一つ動かす事無くそう答えた。その師兄であるカイオウの言葉を、ヒョウが疑うはずは無かった。カイオウの意のままにコントロールされたヒョウの心は、もはや北斗神拳への恨みで満たされていた。サヤカの仇は恋人であるこの俺がとる。そうヒョウが宣言した瞬間、カイオウは兜の中で笑みを浮かべた。全ては彼の思い通りであった。北斗神拳への怒りでヒョウを魔界に引きずり込ませ、ケンシロウと戦わせる。二人を喰らい合わせ、北斗宗家の人間を相打たせる事こそが、カイオウの狙いなのであった。

 遂に完全復活を果たしたケンシロウ。しかしコヨテは未だ不安を抱いていた。カイオウに挑めば今度こそ殺されてしまうのではないかと。だがシャチは、その心配は無用だと言い放った。死の淵から蘇ったケンは、必ず地獄で何かを掴んできたはず。ケンが二度もむざむざやられるような男ではない事を、シャチは知っていた。コヨテに別れを告げ、ケンとシャチは再び戦いの荒野へと戻っていったのだった。

 黒煙を撒き散らしながら荒野を走る列車。ハヤブサ号と名付けられたその機関車に乗っていたのは、修羅ギョウコの一味であった。運ばれてくる食事を次々と腹へと放り込むそのギョウコの肉体は、醜いまでに膨れ上がっていた。昨日より痩せているとのウソで機嫌をよくしたギョウコは、ベルトの穴をひとつ分締める事を宣言。だが勿論、部下がいくら頑張ってもベルトが締まることはなかった。そんな部下に対し、ギョウコは言った。俺の事を豚だと思ったろうと。刃を突きつけられ、仕方なく少しだけそれを肯定した瞬間、その部下の身体は車外へと吹っ飛ばされていた。

 ギョウコが目指していたのは、今夜行われるサヤカの葬儀ではなかった。それよりもケンシロウを倒したほうがカイオウ様は喜ぶ。そう考えたギョウコは、既に進路をケンシロウがいるとされる場所へと向けていたのだ。だがその時、列車の進行方向に小さな村が姿を現した。しかしギョウコにそんなことは関係なかった。一気に村へ突撃し、民家を次々と破壊していくハヤブサ号。逃げ遅れた老婆と少年に暴走機関車が迫る。しかしその時、一人の男がゆっくりと列車の前に立ちはだかった。見覚えあるその男の登場にも動じず、一気にひき殺すよう命じるギョウコ。だが列車は、突如男の目の前でその暴走を終えた。止めたのは、男の腕から放たれた闘気であった。大きく揺れる車内でギョウコが目にしたもの、それは立ちはだかった男と同じ顔が描かれた、ケンシロウの手配書であった。

 獲物を前にして、勇ましく車外へ飛び出すギョウコ。しかしその重すぎる体は、彼の下半身を地面の中へ埋没させてしまった。かわりにけしかけた部下達はアッサリと全滅。なんとか地面から脱出したギョウコも、その身体を片腕で持ち上げられてしまう。もがくギョウコをよそに、ケンは語った。俺は今まで貴様等をふりかかる火の粉だと思って払ってきた。だがこれからは、カイオウに組するものは自ら戦い葬ってやると。それは、修羅の国に対するケンからの挑戦状であった。連撃を浴び、再び車内へと戻されたギョウコの腹は、激痛に波うっていた。俺に二度の負けは無い。そうカイオウに伝えるよう告げ、ケンは苦しむギョウコ再び荒野へと送り返したのであった。

 夜。カイオウの城では、盛大なるサヤカの葬儀が行われていた。参列するボロ達の顔は、悲しみに満ちていた。彼等にとってサヤカは、この国唯一の光だったのである。式を取り仕切るカイオウは、ヒョウに言った。この国全ての民にサヤカを送らせる。それが、サヤカを救えなかった己の、ヒョウに対する侘びの気持ちなのだと。カイオウの義侠心に、ヒョウは完全に心打たれていた。義兄カイオウへの永遠の忠誠の証として、ヒョウはその首のペンダントをカイオウに捧げるのであった。その義が、全て嘘で固められたものであるとも知らずに・・・

 その時、会場に轟音と悲鳴が轟いた。一台の列車が、この告別の儀の中に突入してきたのである。カイオウの魔闘気によって止められたその列車は、あのハヤブサ号であった。激痛に顔をゆがませながら、ケンシロウからの言伝を伝えるギョウコ。だがその言葉に怒ったのは、ヒョウのほうであった。次の瞬間、ギョウコの身体は禍々しき闘気に吹き飛ばされていた。ヒョウの体から放たれたそれは、あのカイオウが持つものと同じ魔闘気であった。今此処に、第二の魔神が誕生したのである。その姿をカイオウは満足げに眺めていた。そしてその足の下には、ヒョウより渡された忠誠のペンダントが踏みにじられていた。ケンシロウとヒョウ。二人の北斗宗家を同時に葬るカイオウのシナリオは、もはや避けられない状況となっていた。
放映日:87年11月26日


[漫画版との違い]
・ヒョウがサヤカの遺体と対面している間、リンが牢獄に閉じ込められるシーン追加
・原作ではサヤカの遺体と対面してそのままケン抹殺を決意するが、アニメでは一旦安置場所に移動してから。
・ヒョウが死んだサヤカの指に指輪をはめるシーン追加
・シャチ達が逃げた先にいたのは原作ではレイアだが、アニメではコヨテ(前話)
・ギョウコの食事シーン、体重をはかるシーン、ケンの手配書にナイフを突き立てるシーン追加
・ベルト締める係の修羅の容姿、台詞が若干変更
・原作ではケン達の潜伏先までハヤブサ号がいくが、アニメでは進路上にある村に突っ込んだときにケンと出会う。
・アニメではハヤブサ号が村につっこみ、その突進をケンが止め、その後バトルになる。。
・ギョウコ配下の修羅とケンとの戦い追加。
・ギョウコ対ケンシロウの内容が大幅に変更。腕も切断されず、殺されもしない。
・原作ではギョウコの部下たちにカイオウへの伝言を伝えさせるが、アニメではギョウコ本人に。
・葬儀の参列者が、サヤカの死を悼むシーン追加。
・ギョウコのハヤブサ号がサヤカの葬儀につっこんでくるというシーン追加。ギョウコをぶっとばし、ヒョウ魔界に入る。




・ギョウコ様なに食ってんすか?

ワカメ・・・っすか?
カロリー意外と気にしてらっしゃるんですかねぇ・・・
・最新版



前話、前々話で白黒だった手配書が


カラーになりました。

・答え言ってるよ
ケンに言われたとおり「俺に二度の敗北は無い」と、しっかり伝言したギョウコ様
しかし、ヒョウはサヤカが殺されたのを「カイオウの留守にケンシロウとう男に」という風に聞かされていた。つまり
カイオウはケンと出会ってないと言ってるのに、ギョウコは一度ケンがカイオウに破れたと伝えているのだ。
何故気付かないんだヒョウよ。馬鹿すぎるだろヒョウよ。
でもどうやらカイオウは、ギョウコの報告がもたらした矛盾に気付いていたようだ。報告を受けた後のあのノーリアクションは、おそらく「やっべー。これで俺のウソばれちゃうじゃん」という動揺を押し隠していたものなのだろう。ヒョウがアホの子でよかったっすねカイオウ様。


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