
シャチが辿り着いた、山中にある一軒の小屋。そこは、かつて己が北斗琉拳の修行中に利用していた場所であった。その小屋に住む老人コヨテは、久しぶりに逢ったそのシャチの姿に驚いた。右目につけられた眼帯。背中に抱えられ傷だらけの男。それらは、シャチの身に只ならぬ事が起こっていることを知らせるに十分な材料であった。
だがその時、修羅達によって小屋の扉が蹴破られた。ケイン一味は、既にこの小屋がケン達の隠れ場所だと突き止めていたのである。寝ている男がケンシロウだと見抜いた修羅達は、ケンを渡すようコヨテに要求。しかしコヨテは、ケンの前で両手を広げた。ケンシロウを命を賭けて守らねばならないという思いは、もはやコヨテも一緒だったのである。しかし、修羅の刃は容赦なくコヨテの体を切り裂いた。崩れ落ちるコヨテの血がケンの包帯を赤く染める。そしてそれは、ゆっくりとケンの体の中に染込んでいった。ケイン様を呼ぶまでも無い。そう言って、一斉に刀を振り上げる修羅たち。しかし次の瞬間、突如響いた奇怪な音に、彼等は刃を止めた。それは、眠れる男に鼓動を蘇った音であった。青白い闘気と共に、ゆっくりと体を起こしたケンシロウの目には、怒りの炎が宿っていた。
シャチが帰ってきた時、既に小屋はケインの軍に取り囲まれていた。しかし、ケイン達もまた目の前の異常事態に緊張を走らせていた。次の瞬間、眩い光と共に小屋は爆発。そこにあったのは、遂に蘇ったケンシロウの姿であった。相手は死にかけとタカをくくり、一斉に飛び掛かる修羅達。しかし、彼等の肉体は次々と宙に消し飛ばされていった。蘇ったケンの闘気は、修羅の身体をもってしても耐えられぬほど強くなっていたのである。唯一生き残ったケインは渾身の闘気波を放つが、今のケンにそんなものが通じる筈も無かった。傷一つ無いケンの姿に慄き、剣を手にヤケクソで襲い掛かるケイン。それに対し放たれたケンの闘気は、先程のそれを遥かに凌駕していた。滝を逆流させる程のその威力は、ケインの身体を完全にこの世から消滅させたのであった。
サヤカの部屋に踏み込んできたのは、カイオウであった。リンをかばい、なんとかカイオウを説得しようとするサヤカ。しかし、彼の狙いはリンではなかった。破孔
無感補。サヤカに突かれたそれは、痛みを感じなくなる破孔であった。カイオウは、実の妹であるサヤカを殺すためにやってきたのである。この世に生きる全てがカイオウのために在る。新世紀創造のためには妹ですら殺す。それがカイオウの信じる覇道であった。放たれた魔闘気にその身体を貫かれるサヤカ。薄れゆくサヤカの意識の中には、やさしく笑う恋人の笑顔が浮かんでいた・・| [漫画版との違い] ケンが復活して滝を逆流させるのと、サヤカが殺されるシーン以外はほぼアニメオリジナル。ただケン復活のシーンは、ケイン一味らの襲撃等もあり、原作とは大きく変わっている。 ・シャチがケンをかくまったのは、原作では山に張ったテントだが、アニメではかつてシャチが修行中に使用した小屋 ・ケンをかくまった先に居るのが、原作ではレイアだが、アニメでは小屋の持ち主であるコヨテに変更。 ・原作ではいつの間にかケンは復活していたが、アニメでは自らを守ろうとするコヨテの危機をうけて復活。 ・原作ではただ闘気を放出させて滝を逆流させたが、アニメではケインを倒すための闘気で逆流する。 ・ヒョウが城に向かっていると聞いて、カイオウが魔闘気を激しく噴出させるシーン追加。 ・部屋に来たカイオウに対し、原作のサヤカは、ヒョウが来る事を喜々して告げたが、アニメではリンを連れ戻しに来たと思ってリンを庇った。同時に原作ではその場にいないはずのリンが、アニメでは居合わせる。 ・カイオウのサヤカへの最初の一撃に、痛みを感じなくなる破孔という設定が追加。 |
|
||||||||||||||
| 第139話へ≪ | ≫第141話へ |