
カイオウの暗流霏破を喰らい吹き飛ぶケンシロウ。更に追い討ちの飛び蹴りは、ガードを無視するほどの威力でケンの骨を軋ませた。その脆さに呆れるカイオウは、渾身の一撃で決着をつけようとする。しかし、ケンシロウがこのまま黙ってやられるはずは無かった。ケンを捉えたはずの拳を、地面へと突き刺すカイオウ。逆に攻撃を受けたはずのケンは、見えない反撃の拳でカイオウの仮面を破損させた。北斗神拳究極奥義、無想転生。かつてラオウをも追い詰めたこの秘奥義で、ケンは状況の打破を図ったのである。誰にも俺の実体は捉えられない。そう豪語するケンシロウであったが、カイオウは既にその究極奥義を破る術を持っていた。放出された莫大な魔闘気が、周囲を覆い尽くす。それはカイオウが最初に使ったあの奥義。北斗琉拳、暗流天破であった。再び位置を見失い、動揺するケンシロウ。その心は、もはや無を保てなくなっていた。闘気を抑えられぬケンに実体を捉える事は、もはやカイオウにとって造作も無い事であった・・・
ヒョウが記憶を奪われる以前のこと。ジュウケイは、北斗の秘拳の在り処を聞きだすため、幼きヒョウを呼び出していた。滅び行くこの国の未来のため、ジュウケイにはどうしても秘拳が必要だったのである。しかし、ヒョウは決してその在り処を喋ろうとはしなかった。その意思が固いをみたジュウケイには、もはや実力行使という方法しか残されていなかった。唱えられるジュウケイの呪文が、ヒョウの全身を襲う。体内を駆け巡るジュウケイの術は、ヒョウの身体に耐え難い激痛を走らせた。しかし、それでもヒョウは口を割らなかった。そしてその術から逃れるためにヒョウが選んだ方法。それは、自らを死に至らしめる破孔 悶堪孔を突くというものであった。北斗の秘拳は、ケンシロウのための拳。ケンが帰ってくるその時まで、秘密を守り続ける。それが、ヒョウが弟のために出来る唯一の役目だったのである。ヒョウの思いを見抜けなかった己の愚かさ、そしてヒョウの深い弟への愛に、ジュウケイは涙するのだった。
眩い光と共に、ヒョウの顔からは邪気がなくなっていた。流れ込んでくる過去の己の姿に、ヒョウはその涙を止めることは出来なかった。封じ込められていた記憶が、遂にヒョウの中に蘇ったのである。ヒョウを苦しめた己の罪を侘びながら、その体を抱きしめるジュウケイ。だがその時、ジュウケイはヒョウの異様な鼓動音を耳にした。そして次の瞬間、ヒョウの背に浮かび上がったのは、北斗七星を描いた破孔の跡であった。既にヒョウの破孔には、記憶を復元できないよう細工を施されていたのである。そんなことが出来る男はたった一人、カイオウを置いて他にはなかった。立ち上がってきたヒョウの顔に、先程までのやさしさは微塵も残ってはいなかった。
広場に立てられた、北斗七星を型どったモニュメント。それは北斗宗家の墓を意味する、ケンシロウのための処刑台であった。張付けにされたケンシロウには、もはやリンの叫びも届かなかった。天に北斗七星輝く今夜、ケンシロウは処刑される。その瞬間、北斗神拳の歴史は途絶え、北斗琉拳が史上最強となる。そして始まる新たな歴史の礎として、カイオウはリンを指名した。リンがカイオウの子を産み落としたその時、新世紀創造主伝説が幕を開ける。それが、カイオウの描く北斗宗家の終焉のシナリオであった。| [漫画版との違い] ・原作でレイア達が駆けつけたのは、ジュウケイが秘拳の在り処を聞き出そうとしたエピソードの前だが、アニメでは決着後 ・カイオウに効かなかったケンのパンチが、左手から右手に変更。 ・ケンに勝利した後、カイオウが北斗琉拳暗魔摩訶極破でケンをいたぶるシーン追加 ・ジュウケイを殺したヒョウが正気に戻り、それを自分がやったことを記憶していないというエピソード追加。 ・ヒョウがレイアにジュウケイの弔いを依頼するシーン追加 ・原作ではケンを貼り付けにした後直ぐに処刑を開始するが、アニメでは日没まで待つ。その間部下を煽るというシーン追加 ・カイオウがリンに仔を生むよう告げるのは、原作ではケンを倒した後直ぐだが、アニメでは貼り付けにした後。 |
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