
ジュウケイが唱える呪文の前に、ヒョウは身動きひとつとれなかった。ヒョウの体内に埋められた呪醒文が完全に呼び起こされたとき、ヒョウの記憶は蘇り、北斗の封印は説かれる。それは、北斗琉拳の終焉の時を意味していた。自らに北斗琉拳を教えたジュウケイが、今その北斗琉拳を消滅させようとしているという矛盾。北斗琉拳への裏切りともいえるその師の行為を、ヒョウはとても納得できなかった。だがジュウケイには、その拳を伝承した者としての責任があった。伝えてはならぬ魔拳、北斗琉拳。その拳がもつ業深さを、ジュウケイはかつてその身をもって体験していた。
周囲のあらゆる物を破壊するほどの魔闘気。そして、禍々しいジュウケイの形相。それらは、帰還したリュウケンに一瞬で状況を把握させた。ジュウケイを倒すには、まだ完全に魔闘気を使いこなせずにいる今しかない。一瞬でカタをつける。それが、リュウケンに残された唯一の選択肢であった。北斗仙気雷弾にて蹴り上げられたジュウケイは、その首に深々と秘孔を突かれ、長い悪夢から目覚めたのだった。
ケンに遅れること数刻。シャチもまたカイオウの城へとやってきていた。ケンシロウとカイオウ。いずれが勝つにせよ、この国は激動に揺れる。その時こそ己が修羅の国を手にする時であると、シャチは確信していた。そしてその宿命の瞬間を、赤鯱もまた感じていた。100人の部下を弔う蝋燭の炎。その激しい揺らめきは、訪れようとしている何かを赤鯱に伝えようとしていた。
カイオウの力を封じるという北斗宗家の秘拳。ケンは、まだその存在すら知りえてはいなかった。そしてそれは、戦う前から既にこの勝負が決している事を意味していた。先制攻撃として放たれた魔闘気が、ケンの身体を包み込む。生みだされた空間の歪みは、ケンに己の位置を見失わせた。そして、動転するケンに次の攻撃をかわす術は無かった。北斗琉拳奥義、暗流霏破。凝縮された魔闘気が、無防備となったケンに体に炸裂する。北斗神拳と北斗琉拳。二拳をめぐる歴史が、いまこの戦いで覆されようとしていた。| [漫画版との違い] ・原作では直ぐにヒョウの服が無くなるが、アニメではリュウケンを襲ったエピソードの後無くなる。 ・仙気雷弾の奥義内容が原作と異なる。リュウケン額に傷負わず。 ・ジュウケイの家族が魔闘気に巻き込まれて死亡するシーン追加 ・カイオウの城でケンに立ちはだかったのが、カイオウ滅殺隊からカイオウ守王隊に変更。 ・シャチがカイオウの城に入るシーン追加 ・赤鯱が100人の部下の魂である蝋燭の揺らめきをみて、修羅に国に何かが起こっていることを感じるシーン追加 |
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