
羅将ハンを倒した男として、ケンシロウの名は既に修羅達の間に広まっていた。郡将ギャモンもまた、空白となった羅将の地位を狙い、ケンシロウ抹殺を企む修羅の一人であった。苦労しないで勝つ。その信念に従い、ギャモンが目をつけたのは、あのロックであった。部下に近くの村を襲うよう命じた、ギャモンの真意とは・・・
とある峡谷にケンの姿はあった。人質救出に燃えるロック達の攻撃に、容赦は無かった。爆撃や罠で崖際へと追い込んだケンに、とどめのナイフ攻撃で襲い掛かるロック。しかし、彼にはケンの動きを捉えることは出来なかった。だが、ケンにロックを殺すつもりは無かった。ロックの目にあるのが殺気ではなく、哀しみである事を、ケンは見抜いていたのである。しかし、ロックは引くわけにはいかなかった。ケンが崖を下り降りた瞬間、峡谷にロックの指笛が響かせた。それは、谷底のケンに向かい大岩を落とさせるための合図であった。無数に積み重なった岩を見て、勝利を確信するロック達。その模様を、ギャモン達もまた見つめていた。約束どおり村人達を返す。そう語るギャモンは、ロック達連れて秘密の砦へと向けて進み始めた。その場に残されたのは、ケンの死体確認に残された修羅二人と、ロックのあとをつけてきたヨハンの三人であった。
数年前、まだ若さの残るロックのもとを訪れたのは、修練場から逃げ出してきた少年であった。修羅の道に耐え切れず、村へと逃げてきたのである。だがその時、追っ手である巨漢の修羅が、二人の前へと姿を現した。修羅の前に立ちはだかり、ロックは言い放った。自分達は戦わないことに誇りを持っている。戦わないほうが立派なのだと。だがその言葉は仇となった。ロックをかばうように現れた母親を、修羅は突如槍で貫いた。母を殺して怒らせる事で、戦いを否定したロックに剣を握らせようとしたのである。しかし、それでもロックは動かなかった。己を腰抜け呼ばわりし、悠々と少年を連れ帰っていく修羅の背を、ロックは悔しさを堪え見つめていた。だがその時、ロックは誓った。いつかこの手で修羅の国を覆す。伝説のラオウが訪れたその時、己の剣をこの国のために振るうことを。
ギャモンの砦に着いたロック達は、その周囲を円状の鉄柵に覆われていた。まず逃げ道を奪い、中で全員を取り囲んで抹殺する。それがギャモンの用意した罠だったのである。しかし、ロックとてギャモンの言葉を信用していたわけではなかった。いつの間にかその鉄柵の向こう側は、弓を構えた村人達によって取り囲まれていた。ロックには、常に彼を支持する民衆の力がついていたのだ。だがギャモンにとって、彼等は戦いを拒んできた無力な存在でしかなかった。彼の尾から放たれた無数の毒針は、援軍達を一瞬にして葬り去ったのであった。一気に勝負をつけんとするギャモンは、部下達による奥義・呪龍羅斬陣を発動。連続する肩車により、巨大なムカデと化した修羅達の刃が、村人達を襲う。もはやロックは、これ以上村人達に血させるわけにはいかなかった。俺ひとりの命で許してくれ。そう言って頭を下げたロックであったが、ギャモンはそのような約束を守るような男ではなかった。捕らえられたロックに修羅の刃が迫る。だが次の瞬間、その修羅は横っ面を蹴り飛ばされていた。巨大ムカデを一撃で地に伏させたその男は、ロック達が殺したはずのケンシロウであった。四方を取り囲む呪龍羅斬陣を旋風脚で一掃したケンは、残されたギャモンと対峙。全身に生やした毒針を一斉に飛ばす奥義、剛牙鉄条刺を繰り出すギャモンであったが、ケンの闘気をそれを全て止め、そして跳ね返した。自らの毒針に全身を突き刺した後、ギャモンはその身を崩壊させたのであった。| [漫画版との違い] ・呪龍羅斬陣が登場する以外は全てアニメオリジナル ・呪龍羅斬陣を使うのが、カイオウ滅殺隊から、ギャモン配下に変更。旋風脚で倒された後に粘りを見せるソーンは削除。 |
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