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[第129話]
暴かれたケンシロウの秘密! 
修羅の国は母の国!!


 修羅の国にラオウ伝説走る。赤き水を見て、修羅達は恐れ慄き、村人達は歓喜した。そんな中、聖地の沼で隠遁生活を送っていたジュウケイもまた、その赤き流れを目にしていた。訪れたレイアとタオに、ジュウケイは語った。伝えてはならぬ北斗琉拳。その禁を破り、三人の男に伝承したが故に、今のこの修羅の国が誕生したという事。そして、この修羅の国を故国とするラオウが、この国を救ってくれる救世主である事を。

 蹴り飛ばした岩を目くらましにしての跳び蹴り。瞬時に背後を取ってのバックドロップ。様々な攻撃でケンシロウを攻め立てるハンであったが、いずれも効果的なダメージを与えるには至らなかった。しかし、ハンは知っていた。いくら強かろうとも、目の前のこの男がラオウではないことを。そして、名を問われたケンは躊躇することなく答えた。俺の名はケンシロウ。ラオウは俺が倒した、と。ケンのその言葉に、衝撃を受ける一同。しかし、時既に遅し。放たれた赤き水は、もはや修羅の国全体にラオウ襲来を伝え終えていた。全てシャチの目論見どおりに・・・。

 北斗神拳伝承者が相手と知り、ハンの体は更なる歓喜に満ち溢れていた。抑えられぬ闘気が、ハンの、そしてケンシロウの体から立ち上る。それは巨大な岩塊を宙へと持ち上げ、二人の頭上で衝突させ合う程に、二人の戦いを別次元の域にまで登らせていた。飛び散った破片で怯んだ見逃さず、渾身の一撃を放つケン。寸前で受け止めたハンは、そのケンシロウの凄まじき「成長」を実感していた。ハンが知る、かつてのケンシロウ。それは、ジュウケイの手によりこの国から送り出された三人の子供の一人、幼い赤子の姿であった。

 二十数年前。時代は滅亡への道を突き進んでいた。後に修羅の国と呼ばれるこの国は、強力な軍事国家に侵略され、滅亡寸前にまで追い詰められていた。やがて文明は滅び、全ては無から始まる。そう考えたジュウケイは、三人の子供を北斗神拳伝承者リュウケンのもとに送った。その子供達こそ、ラオウ、トキ、そしてケンシロウの遠き日の姿であった。無となった時代において、三人が世を握る力を持って、再び国へと帰ってくることを祈って。

 しかし、それでもジュウケイの不安は消えなかった。それ故、この地に残る三人の男に北斗琉拳を伝え、そして彼等はその魔拳に魂を狂わせたのである。第三の羅将ハン。第二の羅将ヒョウ。第一の羅将カイオウ。彼等の手によって、この国は修羅の国へと変えられてしまったのであった。だがそれもラオウの登場によって全て解決する。そう思い、安堵するジュウケイであったが、タオの一言はその全てを打ち砕いた。この国に来たのはラオウではない。ケンシロウという男であるという事実を・・・

 この国がお前の故郷。ハンのその言葉に、動揺するケンシロウ。そしてその隙を、ハンが見逃さなかった。強烈な掌打で吹き飛ばされたケンは、塔へと激突し、崩壊した瓦礫の下敷きに。決定打とも思えるその一撃に、勝利の高笑いを挙げるハン。だがその笑いは、直ぐにかき消された。崩れ落ちた床下から伸びてきた腕は、ハンの足首を掴み、そのまま階下の床へと叩きつけたのであった。北斗の流派をかけた戦いは、シャチの想像を超える次元へと突入していた。

 ぶつかり合う闘気は渦を生み、二人の周りを瓦礫が飛び回る。それらが衝突し爆ぜる中、ケンは己の足に走る違和感を感じた。戦いの中で、ハンは徐々にケンの足の自由を奪っていたのである。勝利を確信し、ゆっくりとケンへと近づくハン。放たれた奥義 斬風燕破は、動けないケンの心臓を貫いた・・・はずであった。だが次の瞬間、ハンは己の目を疑った。心臓へと放ったはずの拳は、まったく見当違いの肩下へ突き刺さっていたのだ。ハンがケンの足の自由を奪っていたように、ケンもまたハンの眼の神経を奪っていたのである。秘孔で足の自由を取り戻し、ハンへと歩を詰めるケンシロウ。もはや勝負は決していた。飛び掛ってきたハンの体に、ケンの拳は激闘の終わりを告げる連撃を叩き込んだのであった。戦いの勝者こそ全て。ハンが語ったその修羅の国の非情の掟は、ハン自身がその体で受け止めることとなったのであった。

 ラオウをも倒したという男、ケンシロウ。自らも完敗したその強さを認めた上で、ハンはケンシロウにある忠告を送った。修羅の国の第二の羅将、ヒョウ。例えケンがラオウより強くとも、お前は絶対にその男には勝てない、と。それは、この先ケンシロウに待つ地獄よりも辛い宿命の道。己が運命に狂い果てる前に帰れ。それが、ハンの最後の言葉であった。崩れ落ちる瓦礫と共に、ハンの姿h城下の大河に飲み込まれ、消えたのだった。残されたケンシロウは、己の血の高ぶりを感じていた。この国に感じる、血の宿命。そしてジュウケイが語る、ケンシロウが救世主になれない訳。まだこのとき、ケンはその理由を知る由もなかった。

 リンとシャチが連れて来られたのは、赤鯱の船が見える浜辺であった。シャチは赤鯱のもとへ。リンはバット達の下へ。それぞれがそれぞれの場所に帰るよう告げ、赤鯱への合図の狼煙を上げるケン。しかし、ケン自身は帰るつもりはなかった。己の血が告げる宿命の正体とは何なのか。それを突き止めるまで、ケンはこの国を出るわけにはいかなかったのである。だが、やり残したことがあるのはシャチも同じことであった。ケンが去った後、シャチは狼煙に砂をかけ、退路を断った。この国を掌握するという野望のため、彼もまた修羅の国を離れる気はなかったのだ。そして、リンもまた残留する決意を固めていた。帰って好きな男の子を生むが良い。ケンが別れ際に告げたその言葉が、リンをこの国に留まらせる決意をさせていたのだった。
放映日:87年9月3日


[漫画版との違い]
・修羅達や村人達が赤い流れを目撃するシーン追加
・レイアやタオがイカダから降りるシーン削除
・ハンのとび蹴りを(疾火煌陣?)を、ケンがパンチの連打で防御する場面追加
・残像を見せる歩き方でケンの背後を取り、バックドロップの体勢にはいるまでの場面追加。
・バックドロップの地割れでリンが気絶、修羅が飲み込まれるシーン追加
・原作ではハンがケンの名を当てるが、アニメではケンが名乗る。それを聞き、修羅達がラオウではないと知る場面追加。
・斬風燕破の後に、僅かな攻防が追加
・原作ではハンが死ぬ間際に、20数年前の出来事を話すが、アニメでは削除。ジュウケイがレイア達に語るシーンは有り。
・原作ではハン戦後にシャチとリンに帰るよう言うが、アニメでは二人を赤鯱の船の見える浜まで連れて行って言う。
・ケンが赤鯱へ知らせるために炊いた狼煙を、シャチが砂をかけて消すシーン追加


・狭い修羅の国
アニメ北斗では、今回シャチ達を送るためや、カイオウから逃げて赤鯱を弔うために、2度もこの浜を訪れている。すごい距離を移動するなあ、と思う前に、なんか修羅の国がすごく狭いような印象を受けてしまいます。うろうろしてただけで、実はどっちの城も浜から近かったと考えるべきなのだろうか。まあハンの城にしろ、カイオウの城にしろ、車くらいあるだろうからそれ乗っていったのかも。
・ひげ部

ヒゲおとしてますよハン様。
そういや127話ではヒゲいがんでたしな。


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