
ハンとケンシロウ。二人の間に舞う血飛沫は、目に見えないほどの高速の拳がぶつかり合っている証であった。だが、シャチの目はその両者の拳を徐々に捉えはじめていた。血しぶきが尾を引くことで、二人の拳の軌道が露わになっていたのである。これでもうケンシロウは用済み。そう呟くシャチを、リンはキッと睨み付けた。しかし、誰にどう思われようが、シャチには他人の血を啜ってでも強くならねばならない理由があった。
北斗琉拳。その老人・ジュウケイが使った拳の正体を知ったシャチは、自らにその拳を教えて欲しいと頼み込んだ。この国にある一つの救世主伝説。いつかこの海を渡って来る救世主が、三人の羅将を倒すのだという。しかし、シャチにはもはや救世主を待っている時間はなかった。修羅を殺した自分には、もう後戻りは出来ない。この国を変える強大な力を得るため、シャチはその北斗琉拳を身に付けるより他になかったのだ。強い意思を持ったそのシャチの眼は、ジュウケイの心を動かした。後に着いて来るよう指示されたシャチは、迷うことなくその歩を踏み出した。今までの己を捨て、修羅を喰らう悪鬼となる。それは、シャチのレイアへの別れの言葉であった。
水平線の先を見やるラオウ。その側に居たのは、当時拳王軍の一員であった赤鯱であった。赤鯱が背負った使命、それはラオウを修羅の国へと運ぶことであった。しかし、このときまだラオウには海を渡ることは出来なかった。トキとケンシロウ。二人の弟を倒し、この国を握るまで、動く事ができなかったのだ。とその時、当時まだ少年だったシャチがあわてて戻ってきた。いつの間にか、ラオウを倒そうと企む野盗が周囲を取り囲んでいたのである。彼等のような者達をひれ伏させ、この世を統一する。そのためにもラオウはまず弟達を倒し、天を握らねばならなかったのだった。男なら強くなれ。そう言ってシャチの頭を撫で、黒王と共に野盗の群れへと突撃するラオウ。一撃で野盗数十人を吹き飛ばす、圧倒的なそのラオウの姿は、まさに戦いの鬼神の如くであった。
ハンとケンシロウの戦いは熾烈を極めた。手を組みあい、互いを壁に、床にと叩きつける二人。渾身の力でケンを床へと放り投げたハンは、奥義
白羅滅精でとどめを刺そうとする。しかし倒れた状態から放たれたケンの奥義は、ハンの闘気波を見事に押し返し、ハンを石塔の最上部にまで吹き飛ばした。その奥義はまさしくラオウの拳、天将奔烈であった。| [漫画版との違い] ・シャチがリンにマントをかけるシーンが削除 ・シャチがレイアを殺しに来た修羅に石をぶつけるシーンが追加 ・突き出た鉄板が修羅に刺さるのは、原作では頭だが、アニメでは背中。 ・原作ではジュウケイはシャチを抱えていくが、アニメではシャチが走ってついていくに変更。 ・原作ではシャチが己の狂気が偽りだと話すのは、ジュウケイと出会ったエピソードの後だが、アニメでは赤鯱と再会した後 ・ケンとハンの力比べで弾けた壁の破片で、修羅達が死ぬシーンは削除。 ・獅子の石像の顔が飛んで、修羅達を押しつぶすシーン削除。 ・原作ではボロの独断でケンをラオウだと判断するが、アニメではシャチの嘘を信じてラオウだと確信する ・修羅達や村人達が赤い水を目撃するシーンが追加 |
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