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[第128話]
修羅の国に救世主伝説走る!
その名はラオウ!!


 ハンとケンシロウ。二人の間に舞う血飛沫は、目に見えないほどの高速の拳がぶつかり合っている証であった。だが、シャチの目はその両者の拳を徐々に捉えはじめていた。血しぶきが尾を引くことで、二人の拳の軌道が露わになっていたのである。これでもうケンシロウは用済み。そう呟くシャチを、リンはキッと睨み付けた。しかし、誰にどう思われようが、シャチには他人の血を啜ってでも強くならねばならない理由があった。

 数年前、レイアの私塾に2人の修羅が訪れた。彼等が連れて来た、傷ついた2人の子供。それは、レイアのかつての塾生だったママルとモリであった。彼等は、修羅を目指す修練場において戦おうとはしなかった。故に一方的に相手に攻撃され、ボロボロにされていたのである。修羅達は、彼等にそんな教えを説いたレイアを尋ねてきたのだ。己の教えを貫いた二人の姿に涙するレイア。だが修羅達は、みせしめにその二人を処刑する事に決定。必死で止めようとするレイアであったが、それは単に殺される順番が変わるだけに過ぎなかった。

 修羅の巨大な手に締め上げられるレイア。とその時、修羅の頭に何者かが石を投げつけた。知らせを聞いたシャチが駆けつけたのである。だが、シャチにはまだレイアを守れるほどの強さが備わっていなかった。修羅の懐に入り、修羅を壁にまで押し込むシャチ。しかし、無我夢中のその行動が奇跡を生んだ。偶然壁から飛び出していた鉄板に背中を貫かれ、修羅は死亡していたのである。だが、その行為をもう一人の修羅が許すはずは無かった。既に瀕死のシャチに向かい、拳を振り上げる修羅。しかし次の瞬間、修羅の体は空中に四散した。それが、修羅の背後に立っていた謎の老人の仕業であった事は明らかであった。

 北斗琉拳。その老人・ジュウケイが使った拳の正体を知ったシャチは、自らにその拳を教えて欲しいと頼み込んだ。この国にある一つの救世主伝説。いつかこの海を渡って来る救世主が、三人の羅将を倒すのだという。しかし、シャチにはもはや救世主を待っている時間はなかった。修羅を殺した自分には、もう後戻りは出来ない。この国を変える強大な力を得るため、シャチはその北斗琉拳を身に付けるより他になかったのだ。強い意思を持ったそのシャチの眼は、ジュウケイの心を動かした。後に着いて来るよう指示されたシャチは、迷うことなくその歩を踏み出した。今までの己を捨て、修羅を喰らう悪鬼となる。それは、シャチのレイアへの別れの言葉であった。


 修羅の国に流れる救世主伝説。その内容を聞いたリンは、驚愕した。いつか海を渡ってくるといわれるその救世主の正体とは、世紀末覇者ラオウの事だったのである。だが、次に衝撃を受けたのはシャチのほうであった。ラオウは既にケンシロウの手によって倒されている。そのリンの言葉に、シャチは耳を疑わざるをえなかった。シャチはラオウの事を知っていた。シャチの脳裏には、無敵不敗のラオウの姿がいまだ焼きついていた。

 水平線の先を見やるラオウ。その側に居たのは、当時拳王軍の一員であった赤鯱であった。赤鯱が背負った使命、それはラオウを修羅の国へと運ぶことであった。しかし、このときまだラオウには海を渡ることは出来なかった。トキとケンシロウ。二人の弟を倒し、この国を握るまで、動く事ができなかったのだ。とその時、当時まだ少年だったシャチがあわてて戻ってきた。いつの間にか、ラオウを倒そうと企む野盗が周囲を取り囲んでいたのである。彼等のような者達をひれ伏させ、この世を統一する。そのためにもラオウはまず弟達を倒し、天を握らねばならなかったのだった。男なら強くなれ。そう言ってシャチの頭を撫で、黒王と共に野盗の群れへと突撃するラオウ。一撃で野盗数十人を吹き飛ばす、圧倒的なそのラオウの姿は、まさに戦いの鬼神の如くであった。

 ハンとケンシロウの戦いは熾烈を極めた。手を組みあい、互いを壁に、床にと叩きつける二人。渾身の力でケンを床へと放り投げたハンは、奥義 白羅滅精でとどめを刺そうとする。しかし倒れた状態から放たれたケンの奥義は、ハンの闘気波を見事に押し返し、ハンを石塔の最上部にまで吹き飛ばした。その奥義はまさしくラオウの拳、天将奔烈であった。

 あの男がラオウではないのか。二人の戦いを見ていたボロがそう口した瞬間、シャチはそれを後押しするように言った。奴こそこの国の救世主、ラオウだと。もはやボロにはそれを疑う余地は無かった。城内へと駆け戻ったボロは、震える手でレバーを倒し、ある機械を起動させた。それは、ダムから流れ出た赤い水により河川を赤く染めるための装置。それはまさに、ラオウ来襲を国中に知らせるために用意されていた、伝達の赤水であった。

放映日:87年8月27日


[漫画版との違い]
・シャチがリンにマントをかけるシーンが削除
・シャチがレイアを殺しに来た修羅に石をぶつけるシーンが追加
・突き出た鉄板が修羅に刺さるのは、原作では頭だが、アニメでは背中。
・原作ではジュウケイはシャチを抱えていくが、アニメではシャチが走ってついていくに変更。
・原作ではシャチが己の狂気が偽りだと話すのは、ジュウケイと出会ったエピソードの後だが、アニメでは赤鯱と再会した後
・ケンとハンの力比べで弾けた壁の破片で、修羅達が死ぬシーンは削除。
・獅子の石像の顔が飛んで、修羅達を押しつぶすシーン削除。
・原作ではボロの独断でケンをラオウだと判断するが、アニメではシャチの嘘を信じてラオウだと確信する

・修羅達や村人達が赤い水を目撃するシーンが追加


・奴もまた天才
血しぶきでハンの拳が見えたまでは良いにしても、それでケンは用済みって・・・
あんだけ圧倒的な惨敗喫したのに、
ちょっと拳が見えただけでもう勝てるというのだろうか。うーん、まあ致命の破孔いっこ突ければそれで終わりなんで、とっておきの策でもあれば不可能でもないだろうけど、一回面が割れちゃってるだけに不意もつきにくいだろうしなあ。正面きって勝てるんなら、それはもう天才と言わざるを得ない。まあちょっと前まで並の男に毛が生えた程度だったのが、わずか数年でこれだけ強くなったのだから、天才っちゃ天才なんだろうけど。
・キルザファイの正しい使い方
前の此処でも語ったが、北斗2の醍醐味といえばやはり北斗1では少なかった、挿入歌という要素。しつこくないのがいいね。忘れた頃にまた出してくる辺りが憎い。特に今回のKILL THE FIGHTの使い方は秀逸。ファルコが死ぬところでは涙を誘い、戦闘中に流れては鳥肌を立たせる。なんという万能な曲。醤油のようだ。劇場版北斗(1986)のHeart of Madnessが挿入されるシーンに匹敵する名場面です。
・でもその曲ENDに待っていたのは

カートゥーンネットワークでした。


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