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[第127話]
羅将ハン!
お前は白き雪も紅に染める男!!


 修羅の国の側で停泊する一隻の海賊船。その甲板で、赤鯱は今日もシャチの帰りを待ち続けていた。帰るよう説得にきた船員達の声に耳も貸さず、大陸を眺め涙する赤鯱。己がこの国まで運んだ、強い眼を持ったあの男。シャチが生きてその北斗の男と出会う事を、赤鯱はただ祈り続けていた。

 シャチとリンは、ハンの居城を見渡せる所まで来ていた。ケンは必ず助けに来る。リンがケンにもつその信頼の源が、リン自身にあることにシャチは気付いていた。哀しみを宿した瞳を持つリンを、ケンシロウは見捨てることが出来ないと確信していたのだ。そしてそれは、過去の己の姿そのものでもあった。

 数年前、シャチは浜辺でボロ達に別れを告げていた。海の向こうで待つ父・赤鯱の元へ戻る決心をし、小船で海へ漕ぎ出そうとしていたのだ。負傷してこの国に置き去りにされた自分を救い育ててくれたボロ達に、今までの感謝の言葉を述べるシャチ。しかし、シャチはレイアには別れを告げていなかった。彼女には黙って去ろう。そう心に決めていたのである。しかし、シャチが語らずとも、レイアは全て知っていた。シャチが今まさに漕ぎださんとしているその小船は、レイアが作ったものだったのだ。この国に居てはいつかは命を失う。それならば、鎖国の掟を破ってでも帰ったほうがいい。そう考え、レイアは手に血豆を作ってまでその船を作り上げたのである。送り出すボロ達の手に巻かれた包帯は、彼等もその作業を手伝ったのだという証であった。浜を離れる船の上で、なんとも言えぬ思いがシャチを襲う。そしてそのシャチの眼に、岩礁の上で手を振るレイアの姿が視界に入った。そして、その右手に巻かれた包帯を見た瞬間、シャチの葛藤は頂点に達した。シャチを見届け、涙に暮れるレイア。しかしその耳は、水を蹴る足音を捕らえた。レイアが振り返ったその先にあったのは、己の名を叫びながら駆け寄ってくるシャチの姿であった。俺にはレイアを捨てることが出来ない。父に心の中で詫びながら、シャチはただ強く愛する女を抱きしめるのだった。

 一人でチェスに興じるハンのもとに、一人の侍女が飲み物を運んできた。しかしハンはそれに口を付けず、側にいた犬に試飲。犬の全身を痙攣させ、死亡させたそれは、紛れも無く猛毒であった。しかし、女を殺そうとしたボロ達を、ハンは制した。そしてその猛毒入りの飲み物を、一気に飲み干したのである。誰の差し金かすら興味を示さず、何事も無かったように代わりを持ってくるよう命じるハンに対し、女は震える事しかできなかった。

 その女と入れ違いに、美しい女を謙譲したいというボロがハンの元へ訪れた。マントの下から顕になった、報告にたがわぬ美しきその女に、ため息を漏らすハン。しかし、ハンの興味はもう一つのモノに向いていた。

 荒野を行くケンシロウは、派手にクラクションを鳴らす一台のジープに、制止するよう呼びかけられていた。無視をきめこむケンに怒り心頭の修羅は、そのままジープで轢き殺そうとするも、ケンの姿は寸前で消失。更に車は岩壁へつっこみ大破。激怒する修羅は、己がこの地域を治める修羅だと告げ、ケンを威嚇する。しかし、丁度ハンの居城を知りたいケンとってそれは好都合であった。修羅の高速の二刀流をあっさり破ったケンは、秘孔頭顳を指突。意思とは無関係にハンの居城を指差した後、修羅の肉体は愛車と同じく塵と化したのであった。

 手元にあったチェスの駒を、目にも止まらぬ速さでボロへと放つハン。だがボロは、それを二本の指で受け止めた。ハンは、女を連れてきたそのボロが刺客である事を見抜いていたのだ。北斗琉拳奥義 双背逆葬によってそのチェスの駒を投げ返したその者の正体は、もちろんシャチであった。闘気の弾を放ちつつ、ハンへと襲い掛かるシャチ。二つの北斗琉拳が交錯する。しかし、その実力差は明らかであった。ハンの神速の攻撃を、シャチは全く交わすことが出来なかった。あまりにも他愛ない結果に呆れるハン。しかし、シャチはまだ死んではいなかった。こういう自体を予想していたシャチは、衣服に鉄板を仕込んでおく事で、致命傷を避けていたのだった。

 その頃、ハンの城内はもうひとつの異変が起きていた。城の警護を行う修羅達の間を走り抜ける影。その後に残される死体の山。あの男
もまた、既にこの城へとたどり着いていた。

 シャチはリンの身柄をハンに預け、さっさと退散。いずれその女が死を呼ぶことになろう。シャチが言い残したその言葉を意味を、ハンは直ぐに理解した。先ほどまでハンが座っていた椅子には、いつの間にか一人の男が座っていた。チェックメイトされたキングの駒をハンに例えたそれは、ケンシロウからハンへの死の宣告であった。

 城から脱出しようとするシャチは、城内の異変に気がついた。積み重なる死骸の山。それを前に呆ける一人の修羅。シャチの呼びかけにも全く反応することなく、男は己が見た不審な影の報告をするため、フラフラとハンの元へと歩き出した。この異常事態から導き出されることはたった一つ。己がおびき出した地獄の死者は、既にこの城のたどり着いているという事実であった。

 奇跡の再会に感涙するリン。しかしハンはその再会を制し、ケンとの勝負を申し込んできた。己に気配を悟らせなかったケンが、強い男だと見抜いたからである。そしてその強さの原因は直ぐに明らかになった。怪しい影を見たと報告に来た修羅が、目の前で破裂したその様は、紛れも無く北斗の拳だったからである。相手が北斗神拳の使い手だと知ったハンの顔には、笑みすら浮かんでいた。己を退屈から解放してくれる男を、ハンは待ち続けていたのだった。闘いの場を屋外の闘技場へと移し、二つの北斗の戦いが今はじまらんとしていた。

 リン、そして戻ってきたシャチが見つめる中、対峙する二人の男。血を求めるかのように降りだした雪の中、最初に仕掛けたのはハンであった。北斗琉拳疾火煌陣。あまりにも早いその拳は、ケンの目をもってしても見切ることは出来なかった。攻撃を受けたことにも気付かず、右肩から鮮血を走らせるケン。やはりこの男も俺を退屈から解放してくれないのか。そう思ったハンであったが、ハンの左手もまた血を滴らせていた。ハンもまたケンの拳を見切れていなかったのである。隆起した筋肉が、ケンの服を突き破る。それは、ケンが本気になった証であった。互いに五分。されど引き分けは無し。命のやり取りと言う最高のゲームを前に、ハンはその身が粟立つほどに歓喜するのだった。
放映日:87年8月20日


[漫画版との違い]
・レイアの船で帰ろうとする回想は、原作はハンvsケンの時だが、アニメではハンの城に着く直前。
・船のシーンで、原作でシャチがレイアに気付くのはボロと話している時だが、アニメでは少し浜から離れた後
・ハンが犬に毒見をさせた後に、その飲み物を飲み干すシーン追加
・ハンの城近辺を治める修羅が、クラクション鳴らしてケンに止まるよう言う&ケンを轢こうとするシーン追加。
・同修羅が二刀流でケンに襲い掛かるシーン&捕らえられて頭顳を突かれるシーン追加
・あるのかないのか、のやりとりがカット。容姿も若干変更。
・シャチがつけていたのが、原作では鎧のようなものだったが、アニメではただの鉄板。
・ケンがハンの城の修羅達を暗殺していくシーン追加
・ケンの影をみた修羅が死ぬのが、原作ではシャチに声をかけられた後だが、アニメではハンに報告へ赴いた時。
・同修羅が、顔の異常を指摘されるのも、シャチからハンに変更。


・ナイスミドルがゆえに
原作ではワンコに飲ませただけで終わった毒ワイン。アニメではなんと猛毒だと判明したあとにわざわざ飲み干すというナイスミドルぶり。ナイスミドルっていうか、ちょい悪おやじ?いやそれも違うな・・・。兎に角、そのあとの目ん球キュピーンまで含めて超カッコイイ。ジムキャリーのMASKをちょっと思い出す。
しかしどうせ飲むんなら、犬殺さんでよかったやん・・・。ああ、そうか。そのまま飲んでもみんなわかんないから、あえて飲まして、
これは猛毒だよって皆に知らせてから飲むことに意味があるのか。ナイスミドルも大変だな。
・天帝ってもしかして
たぶんリンが美女だって言われたのって、今回が初めてだと思う。まあそりゃヒロインなんだし、綺麗で当たり前なんだが、シャチの紹介によると超上玉クラスの美女であるようだ。もしリンがすげーブサイクとかだったら、カイオウとかどうしてたんだろうね。それでも呪われた血を清めるために抱いてたのかね。いや、もしかしたら天帝って実は美女の血族なんじゃないのか。2000年前の天帝ってのは、クレオパトラみたいにその美貌で北斗宗家までも虜にして、英雄といわれるまでのし上がったとか・・・いうのはどうだろう。
・あるないじゃないけど
修羅の国生粋のバカ修羅といえば、アルナイ修羅である。アニメではその台詞も無く、しかもちょっと強そうになり、本人にとってはいいのか悪いのか微妙な変更がされた。しかし、それを補って余りあるネタが彼にはある。




初心者マーク






TOYO○A




修羅の国は中国であるのでこれはちょっと変なのだが、まあ戦前に日本で盗難されて中国に贈られたと考えればいい。しかも
中国人だから、初心者マークも何の意味かわからずつけていたと考えればつじつまも合うなぁ。


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