
 数年前、シャチは浜辺でボロ達に別れを告げていた。海の向こうで待つ父・赤鯱の元へ戻る決心をし、小船で海へ漕ぎ出そうとしていたのだ。負傷してこの国に置き去りにされた自分を救い育ててくれたボロ達に、今までの感謝の言葉を述べるシャチ。しかし、シャチはレイアには別れを告げていなかった。彼女には黙って去ろう。そう心に決めていたのである。しかし、シャチが語らずとも、レイアは全て知っていた。シャチが今まさに漕ぎださんとしているその小船は、レイアが作ったものだったのだ。この国に居てはいつかは命を失う。それならば、鎖国の掟を破ってでも帰ったほうがいい。そう考え、レイアは手に血豆を作ってまでその船を作り上げたのである。送り出すボロ達の手に巻かれた包帯は、彼等もその作業を手伝ったのだという証であった。浜を離れる船の上で、なんとも言えぬ思いがシャチを襲う。そしてそのシャチの眼に、岩礁の上で手を振るレイアの姿が視界に入った。そして、その右手に巻かれた包帯を見た瞬間、シャチの葛藤は頂点に達した。シャチを見届け、涙に暮れるレイア。しかしその耳は、水を蹴る足音を捕らえた。レイアが振り返ったその先にあったのは、己の名を叫びながら駆け寄ってくるシャチの姿であった。俺にはレイアを捨てることが出来ない。父に心の中で詫びながら、シャチはただ強く愛する女を抱きしめるのだった。
 一人でチェスに興じるハンのもとに、一人の侍女が飲み物を運んできた。しかしハンはそれに口を付けず、側にいた犬に試飲。犬の全身を痙攣させ、死亡させたそれは、紛れも無く猛毒であった。しかし、女を殺そうとしたボロ達を、ハンは制した。そしてその猛毒入りの飲み物を、一気に飲み干したのである。誰の差し金かすら興味を示さず、何事も無かったように代わりを持ってくるよう命じるハンに対し、女は震える事しかできなかった。
 シャチはリンの身柄をハンに預け、さっさと退散。いずれその女が死を呼ぶことになろう。シャチが言い残したその言葉を意味を、ハンは直ぐに理解した。先ほどまでハンが座っていた椅子には、いつの間にか一人の男が座っていた。チェックメイトされたキングの駒をハンに例えたそれは、ケンシロウからハンへの死の宣告であった。
己を退屈から解放してくれる男を、ハンは待ち続けていたのだった。闘いの場を屋外の闘技場へと移し、二つの北斗の戦いが今はじまらんとしていた。| [漫画版との違い] ・レイアの船で帰ろうとする回想は、原作はハンvsケンの時だが、アニメではハンの城に着く直前。 ・船のシーンで、原作でシャチがレイアに気付くのはボロと話している時だが、アニメでは少し浜から離れた後 ・ハンが犬に毒見をさせた後に、その飲み物を飲み干すシーン追加 ・ハンの城近辺を治める修羅が、クラクション鳴らしてケンに止まるよう言う&ケンを轢こうとするシーン追加。 ・同修羅が二刀流でケンに襲い掛かるシーン&捕らえられて頭顳を突かれるシーン追加 ・あるのかないのか、のやりとりがカット。容姿も若干変更。 ・シャチがつけていたのが、原作では鎧のようなものだったが、アニメではただの鉄板。 ・ケンがハンの城の修羅達を暗殺していくシーン追加 ・ケンの影をみた修羅が死ぬのが、原作ではシャチに声をかけられた後だが、アニメではハンに報告へ赴いた時。 ・同修羅が、顔の異常を指摘されるのも、シャチからハンに変更。  | 
        
       
          
 
 
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