
この修羅の国の男達の目的は、戦いに勝つこと。互いに命を喰らいあう修羅達には、勝利によって己の強さを誇示することが全て。だが、そんな国の中でたった一人、愛を説く者がいた。タオがケンを連れてきたのは、マンホールから地下に入った先の隠れ家であった。そこで子供達を相手に私塾を開くタオの姉。彼女が愛の伝道者であり、かつてシャチを愛した女、レイアであった。好きな人を失う哀しみ。その心は生まれもって知っている消せない心。どんなに苦しいことがあっても最後に安らげる場所・・・それが愛。レイアの話に、子供達は食い入るように聞き入っていた。しかし、どんなに彼女が愛を説こうとも、誰にも届きはしない。それが、この国の現状であった。そして、昔ここで暮らしていたシャチもまた、北斗琉拳を得て狂ってしまったのだという。タオから紹介されたケンは、早速シャチの居場所に心当たりがないか、レイアへと尋ねる。だが、その条件としてレイアが出したのは、シャチの殺害であった。地上最凶の拳、北斗琉拳。その拳が覇権を握ったとき、この国は更なる悲劇に包まれるであろう事をレイアは感じていたのだった。
シャチが指先に闘気を込めると同時に、カイゼルの頭から血飛沫が飛び散った。勝負は決した。しかし羅刹としてのシャチの目的は、まだ先にあった。全ての修羅を食い尽くし、神をも下僕とする。それが、北斗琉拳を手に入れたシャチの野望だったのだ。だが瀕死のカイゼルは、そんなシャチの宣言を嘲笑した。この国に君臨する3人の闘神と呼ばれる羅将。彼等にはシャチ如きの力では到底敵わない事を、カイゼルは見抜いていたのだ。その羅将の強さは、カイゼルは身をもって知っていた。第三の羅将ハンと戦い、胸に傷を受けたとき、カイゼルはそのコブシの姿すら見ることができなかったのである。しかし、シャチもその事は理解していた。シャチがリンを連れ出した真の目的、それはケンシロウを捨て駒としてハンにぶつけること。その戦いの最中にハンの高速の拳を見切る事が、シャチの狙いなのであった。
倒された椅子の上で仰向けになる口髭の男と、その脇に立つカミソリをもつ男。一見するとただヒゲを剃っているだけの光景であったが、カミソリを持つ男の手は恐怖に震えていた。隙あらばいつでも喉を掻き切ってもいい。そう言われた男は、ゆっくりとカミソリの刃をその喉の上へとあてがう。しかし、横になり、目をタオルで覆っているだけのその男には、微塵の隙もありはしなかった。彼こそがこの国の第三の羅将と呼ばれる男、ハンであった。
町を見下ろす崖の上で、レイアはシャチとの思い出を振り返っていた。己の胸にかけられたペンダント。それは、やさしかった頃のシャチが、レイアへと贈ったプレゼントであった。そのペンダントの鎖を引きちぎり、地へ落とすレイア。それは、かつて抱いたシャチへの愛を、今捨てたのだという意思の表れであった。そして、改めてシャチ討伐の依頼を確認してきたケンに、レイアはだまって頷いたのであった。だがタオは知っていた。レイアが本当に望んでいるのは北斗琉拳の滅亡であって、シャチの死ではないことを。そしてケンもまた、そのレイアの気持ちに気がついていた。ペンダントを拾い上げ、ケンはレイアに約束した。レイアが失った愛も、必ずその手で取り戻すことを。| [漫画版との違い] ・レイアの私塾にいくため、タオがマンホールに入るシーン追加 ・原作ではレイアは塾生たちは地上で解散するが、アニメでは地下の塾内。 ・カイゼルの戦歴が、1800勝から8800勝に変更。 ・ボロがシャチの行方を知らせに来るのは、原作では村の中だが、アニメではシャチが噂のバケモノを殺した洞窟。 ・破摩独指が、原作では右目に突き刺さるが、アニメでは額。 ・カイゼルの胸の古傷を狙ったことに関しての台詞削除。ハンにつけられた事は言う。 ・バケモノの洞窟に男が逃げ込むのは、原作では巨大な黒トラから逃げるためだが、アニメでは雨宿り。トラも登場しない。 ・バケモノが男を襲うのは、原作ではナデナデするためだが、アニメでは溜め込んだ宝を奪いに来たと勘違いしたから。 ・原作のバケモノは左右の目の高さがズレているが、アニメでは比較的マシに。 ・ヒゲをそる修羅に、侍女達がサインを送るシーンは削除。 ・「あなたはそうやって何人の〜」から「百人から先はおぼえていない!」までの台詞が削除。 ・原作では玉座に座っているハンに、新しい修羅が生まれたと知らせが入るが、アニメではヒゲ剃り中。 |
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