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[第118話]
元斗の猛将ファルコ! 
そこにはラオウの影が‥‥


 ケンシロウ率いる北斗の軍は、ついに中央帝都目前に捉えるところまでやってきていた。そんな彼等の前にバギーにのって現れたのは、リハクであった。いよいよ中央へと突撃しようとしている彼等に、リハクは彼等に話しておかねばならないことがあった。

 帝都の中では今日も奴隷達を使っての発電作業が行われていた。あまりにも激しいその労働に、1人の老人が心臓発作を起こし、ダウン。
帝都兵は情のカケラも無しにその老人へ鞭を振り上げるが、何者かが放った闘気によって鞭は手元から切断されてしまった。老人を助けたのはファルコであった。自らを抱き起こしてくれたそのファルコの優しさに、老人の目には涙が光る。そしてファルコもまた、彼等のために心の中で涙を流していた。ジャコウに呼び出され、総督の部屋へと階段を登るそのファルコの右足は、まるで泣いているかのような軋みをあげるのだった。

 謎に包まれた存在、天帝。その正体はリハクといえども知り得る術はなかった。すべてを統括する総督ジャコウ。そして元斗最強の男ファルコ。リハクは、部下達が己の心を震わす光と称し、命を賭して守ろうとするファルコという存在を語り始めた。

 かつての世紀末覇者・拳王ことラオウの覇権は、元斗の村までも伸びようとしていた。大軍を引き連れて村へとたどり着いた拳王。その前に村の代表として立ったのがファルコであった。拳王はファルコに自らと戦うか、大人しく支配下に置かれるかを選択させる。だが村を、元斗を守らねばならないファルコには、このまま拳王に村を素通りして貰うしか他に選択肢はあり得なかった。命を賭して戦えば、拳王を倒すことは不可能ではない。しかしその場合は自らも死ぬ。拳王が倒れ、恐怖のタガが外れた拳王軍は、暴徒と化して村人達を襲うだろうということをファルコは見抜いていたのである。村人達を守りたい、そう願うファルコが取った選択肢とは、元斗皇拳最強を自負する自らの右足を切断し、拳王に差し出すことであった・・・

 自らの足を切り落とし、義足として生きることになってでも、多くの人々の命を守った優しき男・ファルコ。しかし今そのファルコは、狂気の圧政を続ける天帝を守ろうとしている。己に課せられた天帝守護という使命が、ファルコに哀しき拳を振るわせていたのだった。


 ジャコウの部屋へと向かうファルコの前に現れたのは、友であり、元斗の赤光将軍としての同門であるショウキであった。ケンシロウを見逃したという理由で呼びだされたショウキは、たった今までジャコウの鞭を受けていたのである。ジャコウの下などへ行くことはない、と、ファルコを止めるショウキ。だがジャコウの言葉が天帝の言葉である以上、ファルコはその命令を無視することは出はなかった。

 部屋の中で待っていたのは、ジャコウ、緑光のタイガ、青光のボルツ、そしてジャコウの隣に座る女、ミュウであった。北斗の軍を全滅させなかったファルコに対し、その理由を問うジャコウ。思わぬ敵が入ったというファルコの返答に対し、ジャコウは臆病風に吹かれたのだろうと卑下した。それは質疑応答などではなく、ただ理由を付けてファルコをいたぶるための憂さ晴らしであった。義足を蹴って無理矢理ファルコを平伏させたジャコウは、その顔に向かい執拗に鞭を打ちつける。ファルコが怒りの視線を向けると、ジャコウは背後の2人の将軍に自らの地位を唱和させ、再びファルコを無抵抗な犬へと変えてゆくのだった。

 その時、部屋の壁を突き破ってショウキが突撃してきた。部屋の外で2人やりとりをすべて聞いていたショウキは、ジャコウのその所業に我慢できなくなったのである。しかし、ショウキがジャコウに振り下ろした大岩は、ファルコの闘気によって砕かれてしまった。どんなに嬲られようとも、ファルコはジャコウに従い、そして天帝と同格に守り続けるという道しかなかったのである。北斗を恐れるジャコウは、天帝の名を語り、偽の命令を出し続けているだけ。ショウキが告げたその真実をファルコも勿論知っていた。しかしそれでも、ファルコは己の使命を裏切ることが出来なかったのだった。

 ファルコの片足を一国に値すると評した拳王は、約束通り村をの侵攻を中止した。だがその時、拳王は建物の陰に隠れる邪な気配を察知した。拳王の闘気によって破壊された壁の向こうにいたのは、1人身を隠していたジャコウであった。黒王号を駆り、ジャコウの首を捕らえた拳王は、即刻ファルコにジャコウを抹殺するよう勧告する。邪な目をしたこの男はいずれファルコ自信に災いとなって降りかかるだろう。そう言い残し、拳王は村を後にしたのだった。

 ショウキはファルコという人間に惹かれ、今まで戦ってきた。だが自分勝手な理由で悪政を続けるジャコウへの怒りは、もはや止められなかった。しかし、ジャコウへ振り下ろされるショウキの手刀を止めたのは、再びファルコの闘気であった。金色の弾を全身に受けたショウキは、ジャコウに覆い被さるようにして絶命。同胞の死を自らの手で弔いたい。そう言い残し、ショウキを抱えて去りゆくファルコの目には、耐え難き怒りが宿っていた。自らの犬と化したその金色の狼の姿を嘲笑うジャコウ。かつてのファルコの恋人・ミュウは、そのファルコの背を哀しみの瞳で見つめていた。

 ショウキが目を覚ましたのは、力つきた奴隷達を送り出す運河のほとりであった。ファルコはあの時ショウキを仮死状態にし、ここへと運んだのである。天帝は既にジャコウの手に落ちている。ジャコウが死ねば天帝も殺される。天帝を守り続けてきた元斗皇拳の伝承者として、ファルコはどんなに惨めな思いをしても天帝を守り続けなければならなかったのである。だが既に死人となったショウキには、もはやその責はない。ファルコはショウキを自由の身とするため、死体に紛れ込ませてここから帝都の外へと送り出そうと考えたのだ。友の温かい心に触れ、涙を流すショウキの顔を、ファルコは静かに浮き袋の中へと閉じたのだった。しかし、そのファルコの目論見は、ジャコウに読まれていた。運河を流れるショウキの袋に、蒼く光る槍が突き刺さる。ジャコウ、ボルツ、タイガの3人が、既に運河の下流で待ち構えていたのだ。己への反逆ととれるこのファルコの行動に怒れるジャコウは、北斗を全滅させた後、ファルコをも処刑してしまうことを決定。そして引き続き、腹心であるタイガ、ボルツに、ファルコの行動を監視するよう命じるのであった。

 ケン達は、その死体が流れ行く運河の側へと来ていた。連れ去られた奴隷が出るのは、この運河のみ。あまりにも無惨なその光景に、再びジャコウへの怒りを募らせる一同。その時、槍の突き刺さった一つの袋がケン達の元へと流れ着いた。アインが開いたその中から現れたのは、致命傷を負ったケンの恩人、ショウキであった。ケンとショウキ2度目の再会は、皮肉にも今生の別れとなったのである。すべての元凶であるジャコウ討伐をケンに託し、力尽きるショウキ。彼を死に至らしめたその青の槍の持ち主は、青光の将軍、ボルツのものであった。

 見張り塔に陣を構えるボルツは、いよいよ中央帝都へ行軍を開始した北斗の軍の姿を捉えた。部下に北斗の軍の旗を掲げさせたボルツは、その旗に目がけ闘気を発射。その旗の様に燃え散ることが貴様等の運命であると、挑発する。だがボルツは、既にショウキの死によってケンの激しい怒りを買っていたのだった。右手の筋肉を激しく隆起させ、全力で槍を投擲するケン。数百メートルはあるであろう距離を一直線に飛行した槍は、槍の持ち主であるボルツのマントを噛んだまま後ろの壁へと突き刺さった。人間技とは思えないケンシロウのパワーに驚くボルツであったが、ケンの復讐劇はまだ幕をあげたばかりであった。

放映日:87年5月28日


[漫画版との違い]
・中央帝都を前に意気込む北斗の軍の元へ、リハクがジープにのって駆けつけるシーン追加。
・原作におけるシーノがボルツに、ジャスクがタイガに変更。以後も概ねジャスク、シーノの行動はこの二人が担当。
・ファルコが呼び出される直前に、ショウキも呼び出され、ケンシロウを見逃した罪としてジャコウに折檻をうけたというエピソードが追加。
・ファルコがジャコウに呼び出された際、ジャコウの横にミュウがいる。
・ファルコと拳王が対峙した村が、天帝の村から元斗の村に名前が変更。
・この村の財産を全てやるから俺は助けてくれ、とジャコウがラオウに懇願する台詞が追加
・ショウキを殺すとき、原作ではシーノ一人来て水中から貫いたが、アニメではジャコウ、タイガ、ボルツの三人で訪れ、水路の脇道から、ボルツが槍を投げた。
・息のあるショウキを発見したのが、北斗の軍の一員から、アインに変更。
・原作のショウキは、皮肉な運命だと言い残して死ぬが、アニメでは悪の元凶ジャコウを倒すよう依頼するに変更。
・槍の持ち主を特定したのがバットからリハクに変更。
・原作では燃やした旗をシーノがその手に持っていたが、アニメでは柱に旗を掲げ、ボルツの放った闘気で燃やすに変更。
・原作ではケンの投げた槍でシーノが死亡したが、アニメではボルツの襟をかんで背後に貼り付けにしただけで、死なず。



・殿中でござる
ショウキがジャコウに謀反起こす場面・・・
ジャスク、シーノなら仕方ないけど、タイガ&ボルツよ・・・
お前ら働けよ!
全部ファルコがやってんじゃないか。
・原作じゃ貫かれて炊けど
アニメはこの程度。
これくらいの刺さり具合なら耐えて欲しいなあ・・・ショウキさん。


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