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[第116話]
南斗の魂燃ゆ!
壮絶ハーン兄弟!!

 ジャコウの北斗に対する異常なまでの恐怖は、夢の中でまで侵食するほどに大きくなっていた。しかし、その夢の中に現れた北斗の幻影はケンシロウではなく、己に北斗への恐怖心を植え付けた「あの」男であった。悪夢から目覚めたジャコウは、青光のボルツ、緑光のタイガを呼び寄せ、現状を報告させる。しかし、ケン討伐に行ったショウキ、北斗軍討伐を任されたファルコ共に、連絡は未だ届いてはいなかった。苛立つジャコウは更なる光を求め、それは地下の奴隷達にまた更に鞭を打ちつける事となるのだった。

 ハーン兄弟と、その見張りを任された北斗軍の男は、崖の上からリンの危機を見つめていた。リンを助けたいがどうすることも出来ずにいるその見張りの男に対し、ハズとギルは、ある条件を持ちかけた。己たちを自由の身にすれば、リンを助けてやるというのである。もはや他に手段もないと踏んだ男は、条件を承諾。言われるがままに、男は武器として用意していたダイナマイトを、ハーン兄弟を覆うコンクリートの側へと置いた。

 雷鳴轟く空の下、リハクは禅を組んでいた。その時、一つの雷と共にリハクの額に一筋の傷が走る。全身を襲う、例えようのない不安・・・。リハクが予感したもの、それは北斗南斗に関わる者が1人、朱に染まって倒れるというものであった。

 リンに向かって振り下ろされたファルコの拳は、崖の上で起こった爆発音によって止められた。それは、ダイナマイトによりハーン兄弟の封印が解かれた音であった。自由の身となった2人は、自分達の持っていた不発弾を使い、状況を打破することを提案。しかし信管を叩く役を決めるためのジャンケンに負けたのは、皮肉にもあの頼りない見張りの男であった。仕方なく覚悟を決めた男であったが、ハズは突如男を殴り飛ばし、KOさせた。帰り道のないこの役目は、彼には荷が重過ぎることを、二人は理解していた。そして、彼等にはファルコを倒さねばならないある理由があった。

 自らの頭上に降ってきた大岩を、事も無げに砕くファルコ。その破片と共に姿を現したのは、かつてファルコが捕らえた二人、ハーン兄弟であった。作戦通り、爆弾を使っての脅しでリンを開放させた二人は、北斗、帝都両軍を下がらせ、ファルコに勝負を申し込んできた。理解しがたいその申し出に首を傾げるファルコであったが、2人の取り出した大旗に記された十字の印が、しっかりと彼等の間にある宿命を物語っていた。ハズとギルは、南斗108派の一つ、南斗双鷹拳の伝承者であった。天帝を唯一倒し得うる北斗と南斗。北斗が動いた今、彼等南斗の者も天帝に反逆の狼煙を上げたのである。

 ファルコの手を煩わせまいと飛びかかってきた帝都兵達を、その容姿からは想像もつかない華麗な技で切り裂いていくハーン兄弟。すでに南斗108派はほとんどファルコによって葬られてしまった。残された南斗の継承者として、彼等にはファルコを倒さなければならない宿命を持っていたのである。奥義・双羽落爪破にてファルコをも仕留めようと、跳躍する二人。だが、数々の南斗の男達を倒してきたファルコにとってはその技も児戯に等しいものであった。放たれた散弾状の闘気の弾によって、二羽の鷹はあっさりと叩き落とされたのであった。そのファルコの強さに愕然とする空気が漂う中、最後の力を振り絞って起きあがったハズは、不発弾にハンマーを振りかざすが・・・

 崖をブルドーザーで飛び越えたりと、無茶な行為を繰り替えし、アインは遂にケンシロウへと追ぬくことに成功。地から槍が飛び出すという罠を仕掛けたり、無数の槍を発射したりなどしてケンシロウの行く手を阻もうとする。ファルコにケンがやられてしまえば、ケンにかけられている報奨金はパーになる。そう考えたアインは今この時にケンを仕留めねばならなかったのである。元斗皇拳最強と呼ばれるそのファルコという男に多少興味を持ったケンだったが、バット達の身を案ずるケンにはこれ以上アインにかまっている暇は無かった。

 爆弾でファルコと共に心中する覚悟を決めた2人は、バット達を岩陰へと避難するよう勧告。しかし兄のハズは、既に覚悟を決めていた弟ギルにも避難するよう告げた。先程のファルコの攻撃によって致命の傷を負ってしまったハズは、死ぬのは自分だけで良いと考えたのである。兵達の投げた槍を全身に受けながらも、執念でハンマーを振り下ろすハズ。だがファルコが放った闘気がハンマーの柄を折った瞬間、その最後の抵抗も打ち砕かれてしまった。残るありったけの槍を突き立てられ、無念のままハズは絶命。その兄の無残な死を目にし、もはやギルがおとなしくしていられるはずはなかった。投げられる槍を打ち払い、立ちはだかる兵達を吹き飛ばし、一直線に兄の下へと駆け寄るギル。

 「南斗の!南斗の魂は消えず――――――っ!!」

 跳躍から放たれたギルの頭突きは、見事に爆弾の信管を捕らえた。眩い光、轟く轟音、そして凄まじい爆風が辺りを包む。黒煙の中から現れたのは、全滅した天帝軍の死体の山であった。

 ケンが現場へと到着したその時、北斗軍のメンバーは異形なものを発見した。それは、自達の体で壁を作り、ファルコの盾となった帝都兵達の死骸の山であった。彼等は己たちの命を投げ出してまで将軍ファルコを守ったのである。しかし、命を捨てて自分を守った部下達に対し、ファルコの目に涙はなかった。しかしファルコは、すでに部下達のために涙を使い果たし、すでにその涙はかれていたのである。部下達に心を震わせる光とまで言われるそのファルコの正体を、ケン達はまだ見抜くことが出来なかった。
放映日:87年5月7日


[漫画版との違い]
・原作におけるジャスクとシーノが、タイガとボルツに変更。以降のそのポジションも継承。
・ファルコ達からの報告が入らないことにジャコウが苛立つシーン追加。
・アインがケンシロウを仕留める為に罠で攻撃するシーン追加。
・原作ではアインとハーン兄弟でジャンケンをするが、アニメでは見張り番の北斗の軍の男と行う。また未だハーン兄弟がコンクリ詰めにされたままなので、男がダイナマイトでコンクリを破壊し、二人を自由の身にするシーンがある。
・リンの処刑を止めたのは、原作ではハーン兄弟の乗った岩だが、、アニメでは兄弟ののコンクリを爆破させる音に変更。
・原作では柄の部分で爆弾を叩いてハンマーが折れるが、アニメではファルコの放った闘気で折られるに変更。
・原作ではギルは生き残るが、アニメでは爆破失敗したハズにかわり、ギルが爆破させて死亡するに変更。



・どこから?
原作ではどこからか調達してきたと思われる不発弾。しかしアニメでは、ずっとコンクリ拘束されていたにもかかわらず、ちゃーんと不発弾が彼らの手にあった。うーむ、一体何処から・・・。無理くり考えるなら、二人と一緒にコンクリで固められていたと考えるしかない。とすると、彼らを固めた帝都兵の意思で入れられたものだと言うことだ。不発弾の処理を任された兵が、めんどいからここに入れとけってことで一緒にコンクリ詰めにしてしまったという事なのだろうか。
 あと、これまた原作では何処からかもってきたと思われる南斗の旗も、アニメではハズの体に巻かれたままコンクリ詰めされていた。もし帝都兵がコンクリ詰めする前にこれを見ていたら、二人が南斗の者である事を知り、監禁ではなく処刑となっていただろう。ということは、ちゃんと身体検査もしていなかったということになる。なんかもう、いいかげんだなあ・・・
・ストーカー
アニメのアインはハーン兄弟との絡みがないため、ここ数話はケンシロウを付けねらっているのだが、どうもその様子が気持ち悪い。ケンを倒せる可能性があるなら判るのだが、ハッキリ言って見てる側にとっては「おまえじゃ逆立ちしても無理だろ・・・」としか思えないため、彼は一体なにをやってるんだという認識しかない。更に未だ明らかになっていないアスカの正体を視聴者に気にさせたいのか、事あるごとにオレの女が〜オレの女が〜とのたまう姿もなんかキモい。だいたいあんなセコい罠でケンシロウを倒したところでアスカは喜ぶのか?喜ばないだろう。これでは単に、アスカに貢ぐのに必死になって、相手の実力も計れないバカ野郎だ。カッコよくないぜ、アイン。
・死ねた
原作では無意味に生き延びたギルだったが、アニメではキッチリ死ぬことが出来た。しかもいい加減な殺され方ではなく、至極格好いい、原作の兄をも超えるような素晴らしい死に様だった。下手に生き延びるより、彼にとってはこっちのほうが幸せだろう。一応南斗聖拳の使い手であると言うのに、用もなく生かされ、特に活躍の場もなくフェイドアウトしていくというのは、北斗の拳という作品においては生き地獄に等しい。容姿的にも今後大活躍するような可能性もなさそうだったのに、なんで原作の彼は生かされたのだろうか。謎である。


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