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[第113話]
謎の賞金稼ぎアイン! 
俺がケンシロウの首をとる!!

 夜。キャンプを張る北斗の軍の男たちの話題は、伝説の男・ケンシロウの事一色になっていた。志気あがる北斗の軍の進撃が始まろうとしていた。

 ケンは、ユリアが安らかに他界したことをリンとバットに告げ、そしてユリアから頼まれたネックレスをリンへと渡した。自分には出来なかったこと・・・ユリアはそれをリンに託したのだ。とその時、第2砦と呼ばれる場所の近くを、天帝軍の護送車が接近中との知らせが入った。現場へと赴こうとするケンは、リンとバットに自分についてくるよう指示。かつて一度も発せられなかったその言葉は、ケンが2人を立派な戦士として認めた瞬間であった。

 ケンシロウが現れたとの知らせは、遂に中央帝都の元までも届けられた。ケンシロウを、そして北斗神拳の威力を存分に熟知しているジャコウは、なんとしてでも北斗を抹殺するよう指令を出す。その手始めとしてジャコウが命じた策は、全国の賞金稼ぎを総動員させるというものであった。

 バスクの郡都に続きゾングの郡都までもが落とされたとの知らせは、ゲイラの治める郡都の者達に恐怖を与えた。次は間違いなくここへ来る。そう感じた兵達は急いで大門を閉め、北斗軍の来襲に備える。しかしやっとの思いで締め切ったその扉は、突如訪れたブルドーザーによって強引に破壊されてしまった。やってきたのは北斗の軍ではなく、アインという名の賞金稼ぎであった。とてもいち賞金稼ぎとは思えないその風体と態度に、目を丸くする帝都兵達。そんな彼らを尻目に、アインは運転席に座る男を足蹴にして命令し、郡都内へ。その車の後部には、鎖に繋がれたまま引きずられる二人の賞金首の姿があった。

 城の中へと案内されたアインは、女達に囲まれて戯れるゲイラの前へと赴き、引きずってきた男2人を突き出した。2人合わせて8000ジュドルの賞金首を捕らえたその報酬を受け取るために、アインはこの郡都に訪れたのである。しかしアインはゲイラが用意した金を受け取ろうとはぜず、代わりにゲイラの周の女達が身につけている物を要求。訳が解らずに首を傾げるゲイラであったが、その報酬は突如訪れたチャンスによってアインから忘れられる事になった。

 ゲイラの部屋へと呼ばれたのは、特別獄舎に幽閉されていた囚人4名であった。彼等に与えられた使命は、ケンシロウの抹殺。成功した暁には自由の身になれるだけでなく、郡都をひとつ与えるという報酬をぶら下げることによって彼等をケンシロウへぶつけようと考えたのだ。だがその桁違いの報酬は、側で話を聞いていたアインの興味をも引いてしまった。自らの女にその郡都を手に入れることを決めたアインは、その囚人達に失せろと命令。更にアインは、お前等に女はいるのかとの問いを彼らに投げかけた。チャンスを奪おうとするどころか、ケンカまで売ってきたその男に対して、囚人達は激怒。自慢の拳や武器を使ってアインを潰そうとする。だが、賞金稼ぎとして鍛えられたアインの喧嘩術の前に、4人は為す統べなくぶちのめされていった。この男ならケンシロウに勝てるかもしれない。ゲイラにそう思わせるほどのアインの強さであったが、すぐにそれを確かめる機会はおとずれた。あわてて駆けて来た帝都兵がもたらしたのは、ケン率いる北斗の軍が攻めてきたとの報告であった。

 たった1人でケンシロウの前へと立ちはだかったアインは、自らの女のためケンシロウを倒すことを宣言。先程の者達と同じく女の有無を問い、ケンシロウも気兼ねなくぶちのめすことが出来る存在であることを確認したアインは、得意のケンカ拳法で早速攻撃を開始する。だが表情一つ変えるずにその拳をいなしたケンは、そのままアインに強烈なビンタを炸裂。自らの拳に絶対の自信を持つアインは次々と拳を繰り出すが、結果は全て同じであった。ダウンしたアインに止めをささんと、渾身の拳を振り下ろすケン。だがケンの拳は、アインの顔の数センチ前で止められた。女のいる男がやられれば、その女は悲しむ、女を持つ男としてそれを熟知しているからこそ、アインは戦う前にその男に女がいるかどうか尋ねていたのである。そして、女を哀しませる事をしたくないという気持ちは、ケンシロウにとっても同じであった。

 自らの敗北を信じられずにポカンとするアイン。そんな無様な姿に呆れるかのように現れたのは、同じ賞金稼ぎのブゾリであった。ケンシロウという大物の存在を知らずに雑魚を追い回していた事を後悔するブゾリは、早速ケンシロウに勝負を申し込む。しかしその激しい意気込みは、背後から呼び止められたアインの拳によって地へと沈められた。アインは巨漢のブゾリを一撃で殴り倒すことにより、己の強さを確認したのである。自らの強さ、そしてそれ以上のケンシロウの超人的な強さを認識したアインは、自らの女のため、再びケンシロウの首を狙う事を約束するのだった。

 城内に入ってきたケンシロウを前に、帝都兵は完全に戦意を喪失。司令官ゲイラを残し、全員逃亡してしまった。しかし、たった一人ケンシロウの前へと残されたゲイラであったが、その顔に敗色の様子はなかった。息をするのも面倒だとのたまりながらそのぶくぶくに太った体を起こしたゲイラは、突如ヒモのついた蒼い玉を取り出し、高速回転させはじめた。更に悪臭漂う口臭を吐き出し、ケンの嗅覚を攻撃するゲイラ。これらは視覚、嗅覚を利用したゲイラの催眠術攻撃だったのである。ケンシロウの動きが止まったことで術が成功したと考えたゲイラは、早速自らの靴を舐めるようケンシロウに指示。ゆっくりとゲイラに近づいたケンシロウは、その靴に目がけて唇・・・ではなく、己の足を踏みおろした。こけおどしのようなそんな術など、ケンには全く通じてはいたかったのである。郡都内に響き渡るゲイラの悲鳴。それを聞いたアインは、この郡都が墜ちるのはもはや時間の問題である事を確信した。再びブルドーザーの運転手を足蹴に命令し、豪快に退散するアイン。あまりにも派手な振る舞いに、バットとリンはただ彼を見送ることしかできなかった。

 再び催眠術を開始した諦めの悪いゲイラに強烈な手刀をお見舞いしたケンは、続けざまに秘孔喘破を突くと、そのままゲイラに背を向けて帰り始めた。訳が解らずケンの後を追おうとしたゲイラであったが、既にその肉体には異変が起き始めていた。息を吐くのも面倒。そのゲイラの言葉を受けたケンは、ゲイラの口を息は吐けても吸う事は出来ない状態へと変えていたのだ。自らの肺に酸素を送れぬゲイラは、呼吸困難で意識を失った後、爆死。また一つ郡都を落としたことで、ケンシロウの手配金がさらに上がるであろう事に、アインは素直に喜ぶのだった。
放映日:87年4月2日


[漫画版との違い]
・キャンプする北斗の軍がケンの復活を喜ぶ場面追加
・ユリアが死んだ事をケンが語るとき、ショウキの村につく直前の雨のシーンのワンカット追加
・バット等について来いという前、原作では何も無いが、アニメっでは「第二砦の近くを天帝軍の護送車が接近中」との知らせが入る。
・ケンシロウが復活したことを知り、ジャコウが抹殺命令を出すシーン追加。
・ケンにやられた郡都のボスの名がザクからゾングに変更。
・アインが手袋をしていない。今後もずっとしない。
・ゲイラに髪の毛が追加。体型、容姿も原作より若干人間っぽく変化。
・催眠術時、原作では葉巻を吸っているが、アニメでは吸わない。
・アインがゲイラ郡都を去った後、賞金首がアスカをねらってくるというシーン削除。
・アインがバット達に挨拶して帰るシーン追加。


・ワルノリ
原御大のワルノリここに極まれり、という感じの回。帝都編はとにかく見たことあるようなキャラてんこ盛りですが、全話のバスク=ホーガン、バロナ=ミスターTをも上回るワルノリっぷり。アイン=ロッキーに、ゲイラ=ジャバ・ザ・ハットに、囚人4人組=KISS。ゲイラなんかそのまんますぎて髪の毛生やされちゃったし。この調子ならブゾリもなんか元ネタあるんかね。
・ゲームバランス
途中であまりにも強すぎる武器や技が出てきてしまうと、とたんにそのゲームはつまらなくなってしまう。そのためにゲームというものはバランスを考えて作られているわけだが、ケンシロウというのはまさにそのバランスを崩してしまう存在である。今回、単身ゲイラの郡都に乗り込んでいったケンを、北斗の軍の面々はただ外で待ち続けていた。おそらく他の兵士達も闘うことなく降伏したか逃げ出したかしたので、何もする事が無かったのだろう。無論ケンのおかげで打倒帝都はより現実味を帯びたものの、それをつまらなく感じていたものも少なくないと思う。その結果があのケン抜きでの夜襲などに繋がったのだろう。バットは、ある程度暴れさせなければ兵の指揮が下がると感じ、わざわざケン抜きで夜襲を行ったのだいや、もしかしてリハクの指示か・・・?


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