
北斗の墓標に巣くう地獄の墓守、ゾルバとザルジ。その夜もまた一人の男が墓の前へと現れた。男をまたその鎌の餌食にせんと、一斉に飛び掛る二人。しかし彼等の振り下ろした大鎌は空を切り、逆に自らの手でその墓を破壊。更に男に頭を鷲掴みにされた二人は、男の正体を暴かんとフードをまくり上げる。二人が死ぬ前に見たその男の顔は、目の前の墓に眠っているべきはずの男であった。
リンとバットは、西の中枢郡都へとやって来ていた。ここの郡都を壊滅させれば戦闘が有利になると踏んだ2人は、わざわざ敵地の中へと潜入して下見に来ていたのである。とその時、この郡都に莫大な数の難民が押し寄せてきているとの報が入れられた。街の外では、郡都を守る治安正規兵が必死に難民達を追い返そうとしていた。自らの足にすがりついてきた難民を斬り捨てようと刀を振り上げる正規兵達。しかし、あるものを発見した瞬間、正規兵の顔色が変わった。難民の襟首に記されたそのマークは、彼らが自らと同じ聖帝正規軍であることを表していたのだ。「郡都が・・・俺達の郡都が・・・たった1人の男に・・・」まるで地獄を見たかのような怯えた口調で、その元正規兵は答えた。その異様な光景を目の当たりにしたリンとバットにも、今起こっている異変の正体をまだ理解出来ずにいた。
バロナが斧を振り上げたその時、観客席からどよめきが起こった。彼等の視線は、その闘技場内へと続くトンネルからフラフラと現れた1人の兵にそそがれていた。皆の見つめる中、その男は突如頭を破裂させて死亡。只事ならぬ事態を感じた正規兵達は、集ってそのトンネルの中へと特攻する。しかし、恐怖に慄く叫び声を響かせただけで、彼等が再び闘技場内へと戻ってくることはなかった。代わりに闘技場内へと入ってきた男・・・。象のように大きな馬に跨ったその男は、北より訪れた伝説の男、ケンシロウであった。
バスクの死によって興奮した観客達の勢いは、頂点に達した。後に続けとばかりに闘技場に入ってきた観客達は、自らの街を取り戻すため、次々と帝都兵達を襲いはじめたのだ。天帝軍の力を知らしめるために行われたはずの処刑は、結果的に民衆の心に勇気を与えてしまったのである。そして、大騒ぎと化したその闘技場の中で、ついにバットとリンは、ケンシロウとの再会を果たした。リンに先に行くよう促すバットであったが、リンはその言葉をそのまま返した。バットの体には、リンのために戦って受けた傷跡が無数に刻まれていた。ケンを目指し、強くやさしい男となったバットの方が先に行くべきだとリンは思ったのだ。男の顔になったな。そのケンの言葉に、バットは堪えきれなくなった大粒の涙を流した。ケンの胸に抱かれ、再会の喜びに身を震わせるリンとバット。そして再び世紀末の世に光をもたらすであろうこの奇跡の再会に、リハクもまた涙するのだった。| [漫画版との違い] ・ゾルバとザルジが、墓を見に来たケンに襲い掛かって敗れるシーン追加 ・ケンが郡都Gを壊滅させる&その報告をジャコウが受けるシーン追加 ・西の砂漠に大きな馬の蹄の跡があったと、リハクが報告を受けるシーン追加 ・司刑隊隊長が、バット等の賞金があがったのを見た後にケンに葬られる場面が削除 ・バスクが受ける郡都陥落の報が、西の郡都から郡都J5に変更 ・バロナの投げた鉄球の刃が、原作では背中と顔に刺さるが、アニメでは顔には刺さらない ・帝都兵の一人がトンネルから出てきて爆死した後、数人の帝都兵がトンネルへと特攻するシーン追加 ・ケンが突きたてられた槍を握りつぶすのが「北より・・・」の台詞の前から後に変更 |
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