
その時、右頬に傷のある男が、帝都兵をひき連れてバーの中へと入ってきた。男は店内を見回すと、帽子を被ったひとりの男に目をつけ、言葉もなくその男の前へと着席。そのまま取り出した手配書を一枚一枚めくり始めた。男の名はゲルド。新たにこの街の司刑官として配属されてきた男であった。手配書をめくるゲルドの手が止まる。目の前に座る男が、手配書に記されている10000ジュドルの賞金首、ヘルゲと一致したのである。彼は、天帝に反逆したレジスタンス・赤龍党の残党として手配されていた男だったのだ。もはや隠し通すことは出来ないとふんだヘルゲは、テーブルに飾ってあった花瓶を持ち上げ、ゲルドの頭を殴打。しかし強靭なゲルドの頭には傷一つ負わせることは出来ず、逆にパンチ一発でのされ、ゲルドの配下によって捕まえられてしまうのだった。
家に帰ったハルは、早速父親のムハリに事のあらましを伝えた。ムハリはレジスタンス部隊・赤龍党の参謀として活躍した男であった。そして、あのゲルドの右頬に傷を付けた張本人でもあったのだ。天帝軍との最後の決戦でつけたその傷を恨むゲルドは、己を殺すためにこの村へとやって来たのだ、と語るムハリ。とその時、ムハリは突如咳き込み、吐血した。ムハリの体はもはや病によって長く生きることが出来なくなっていたのだ。自らの息子に迷惑ばかりかけてていることを気遣うムハリであったが、村の者達は皆ムハリを自分達のために戦ってくれた英雄として見ていた。ハルにとってムハリはかけがえのない自慢の父親だったのだ。2人は日が暮れたら村を出ようと約束。ハルは早速足となる車を探しに出掛けたが、もはやムハリの体は長旅に耐えられる状態ではなかった・・・
車を手に入れて家に戻ってきたハルであったが、そこに父の姿はなかった。父ムハリは今まさに宿命の戦いの最中にいた。ゲルドの振り回す長大刀の前に防戦一方のムハリ。自分が勝つチャンスは一瞬、そう思ったムハリは、遂に意を決してゲルドへと突進。ゲルドの振り回した大刀を跳躍でかわし、その剣を突き立てんと飛びかかる。しかしすぐにゲルドは大刀の矛先を切り返し、空中で無防備になったムハリの体に強烈な斬撃を喰らわせた。現場へと駆けつけたハルが目にしたのは、鮮血を吹きながら落下する父の姿であった。
ゲルドの元へとやって来たハルは、父の仇・ゲルドと共にダイナマイトで自爆しようとする。まだ若いお前が死ぬことはないと仲間に制止されるハルであったが、父を失ったハルにもはや未練などなかった。火を付ける前に貴様の手を切り落とす、とゲルドが脅しても、父の勇気を背負うハルに怯えはない。その瞳にムハリと同じ苛立ちを感じたゲルドは、ハルを一刀のもとに斬り捨てようと大刀を振りかざす。だがその時、どこからともなく飛んできたマントがゲルドの顔を覆った。それは、あの旅人が今までその体に纏っていたものであった。突如現れた謎の男に飛びかかって行く帝都兵達。しかしその攻撃が男に到達する前に彼等の頭は次々と弾けていく。そして、男が破り裂いた服の下からは、鮮やかな七つの傷が描かれた胸が現れた。北斗神拳、そして七つの傷。ゲルドの目の前に立っていたその男はまさしく、手配書の最後のページに記されてる伝説の男、ケンシロウであった。| [漫画版との違い] ・アニメオリジナルストーリー |
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