
かつて男達は戦い、この世に一時の平安を残し、天に地に散っていった。やがてその男達の戦いの歴史は砂に埋もれ、伝説が残った。
総督・ジャコウ。天帝より全権を預かる、実質上の中央帝都の主である彼の下へ、各郡都からの定時報告が入れられた。反逆者を捕らえたり鎮圧したりと問題のない報告が続く中、ただひとつ、郡都RZの護送車がレジスタンス部隊に襲われたという報がジャコウの眉を動かした。部隊の名は北斗の軍。リーダーは若い男と女だという。しかし今やほぼすべての郡都を手中にしたジャコウにとっては、滅びた北斗の拳の事など小さな問題に過ぎなかった。とその時、部屋の明かりが消えた。ただヒューズが飛んだけだったのだが、突如ジャコウはその狡猾な表情を大きく歪め、怯え始めた。何かに取り憑かれたかのように闇に震え、光を求めて暴れるジャコウ。しかし兵が機械を直して部屋に明かりを戻すと、ジャコウは再び高笑いをあげ、自らの野望を果たさんとする独裁者へと戻った。
新たに囚人達を捕まえ、護送車を引いて荒野を疾走する司刑隊。その模様を崖の上から見つめていたのは、若い男女をリーダーとする軍団であった。男の名はバット。女の名はリン。あの幼かった子供達は、いまや北斗の名を背負って世のために戦う立派な戦士へと成長していた。バットのかけ声と共に崖を駆け下りた北斗の軍は、あっと言う間に司刑隊を取り囲み、囚人達を解放せんと攻撃を開始。人数で優る北斗の軍の一方的な攻撃に、帝都兵をはどんどんなぎ倒されていった。残るは護送車を引くバイクのみ。しかし、最早勝算はないと踏んだ隊長は、最悪の行動を選択した。囚人達の入る檻をバイクから切り離したかと思うと、彼等にガソリンをまきかけ、火を放ったのである。驚愕するバット達を嘲笑うかのように、隊長を乗せたバイクは逃走。燃え盛る炎の中に飛び込もうとするリンを制し、バットは己の無力さを只々呪うのであった。
アジトへと帰ってきたバット達は、かつての南斗五車星、そして今は北斗の軍の軍師となった海のリハクに結果を報告。あまりにも悲惨な結末に、一同はただ頭を垂れてうなだれる事しか出来なかった。その時、柱の影から1人の幼い少女が現れた。彼女の名はマム。彼女の父は、あの火に巻かれた護送車の中にいた。幼いが故に事情を理解できず、父の行方をリンへと問うマム。リンは涙を流し、マムを抱きしめ、ただ謝ることしかできなかった。ケンさえいれば・・・その言葉を飲み込んで戦い続ける2人の姿は、未だケンシロウの元へ届いてはいなかった。| [漫画版との違い] ・泥水をかけられる夫婦の座り位置が、原作と逆 ・発電用の囚人が中央帝都に連れてこられるのは原作ではソリア死後だが、アニメでは物語冒頭 ・ジャコウが各郡都からの報告を受けた後、電気がおちてうろたえるというシーン追加 ・ジイ、アイ、ジョウの三人が北斗の墓を見に訪れ、ゾルバとザルジに襲われるシーン追加。 ・司刑隊隊長がジョウを絞め殺した際、原作では横にいたのは小太りの兵だが、アニメでは普通の体格の男 ・マントの男(ケン)が、とある村に現れて気絶するというシーン追加 |
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