
フドウの村へと向けて急ぐケンシロウ。だが峡谷に差し掛かったその時、鉄杖の音と共に仮面をかぶった9人の僧が現れた。彼らが悪党でないことを見抜き、道を開けるよう頼むケン。だが、彼らはケンシロウと戦わねばならない理由があった。彼らは、長年にわたり山奥に籠って修行を続けている宗派の修行僧達であった。しかしある日を境に、彼らの生活は奪われてしまった。彼らの自由を奪った鎖、それはやはり拳王と言う名の巨大勢力であった。自分達が勝てばそれでよし。もし負けても、一族が途絶え全てが終わるだけ。もはや覚悟を決めた彼らに迷いはなかった。
ラオウとフドウ。両手を組んだ巨人二人による真っ向からの力比べが始まった。ともに常軌を逸したパワーを持つ二人の押しあいは、互いの足を地にめり込ませるほどであった。もはや長時間戦うことの出来ないフドウは、左回し蹴りで膠着を打破しようと試みる。しかし、拳王とまで呼ばれた男に、それを交わすことなど造作もなかった。宙に逃げ、そのままフドウの背に肘を叩き込むラオウ。グラつくフドウに更に追い討ちをかけるように、その肩がはじけ飛ぶ。肘を叩き込まれた際、秘孔を突かれていたのだ。鮮血にまみれ、轟音と共に倒れこむフドウ。その姿は、長かった戦いにやっと終止符が打たれたことをラオウに確信させた。やはり俺に後退はありえなかった。そう言って、無用となった境界線を見ながら、安堵の表情を浮かべるラオウ。しかし次の瞬間、再び信じられぬ奇跡が起こった。今度こそ朽ちたと思われたフドウの体が、またもや拳王の目前に立ち上がったのだ。勝てぬと判っていながら何度も立ち上がってくる無駄とも思える執念。理解できぬその精神を、ラオウは愚かと称した。しかし、ラオウは判っていなかった。今のフドウを突き動かしているもの。それは子供達の瞳に宿る力、哀しみの力であるということを。子供達の瞳、そしてフドウの瞳がケンシロウと重なる。一瞬の戦慄。放たれるフドウの拳。反応の遅れたラオウも無我夢中で拳を繰り出す。しかし、それよりも先にフドウの体へを貫いたのは、あの拳王軍団たちが構えていた巨大ボウガンの矢であった。その時、ラオウは気付いた。自らの足があの線を踏み越えていることに。哀しみの瞳の前に恐怖を感じたラオウの体は、
意思とは無関係にその体を後退させていたのである。恐怖に硬直した瞬間、ラオウの体は完全に無防備となっていた。もしあの時後退しなければ、その体はフドウの拳に砕かれていたのである。勝者は俺とケンシロウだ!フドウが高らかにそう叫んだ瞬間、今度は無数の矢がフドウの体へと突き刺さった。無傷のまま立ち尽くすラオウ。しかし、勝者は鮮血の中で遂に力尽きたフドウのほうであった。その体に哀しみが刻まれている限り、二度とケンシロウには勝てない。ラオウがフドウと戦ってが得たのは、その覆しようのない現実であった。駆け寄った子供達に笑顔を見せ、そのまま崩れ落ちるフドウ。子供達の瞳に突き動かされたその不死身に肉体は、遂にその体を地へと横たわらせたのであった。
父の最期を見届けんと、涙しながらその大きな体の周りに集まる子供達。これからは力をあわせて生きていくのだ。フドウのその言葉に、子供達は力強く頷いた。父から大きな強さと勇気を貰った子供達には、もはやフドウの心配は無用であった。その時、霞むフドウに瞳がある人物の姿を捉えた。それは、また一人死に行こうとしている友の姿に、更なる哀しみを背負ったケンシロウの姿であった。父さんは勝ったんだよ!子供達のその言葉に、笑顔で頷くケン。自らの頭を抱えるケンの腕を握りながら、フドウは言った。これからはその手でこの時代の全ての子供達を抱き包んでくだされ。それが山のフドウの本望だ、と。そしてそれが、フドウの最後の言葉となった。時代を切り開ける救世主に最後の願いを託すことの出来た男の死に顔は、あまりにも安らかであった。哀しみが、再びケンシロウの中に宿る。そして、その哀しみが流させた涙は、閉ざされていたケンシロウの瞳に光を取り戻させたのであった。| [漫画版との違い] ・ゲンショウ達とケンとの闘い追加 ・ケンが視力をとり戻すのは、原作ではジャドウ倒した後だが、アニメではフドウの死を見届けた後。 |
|
| 第103話へ≪ | ≫第105話へ |