
ケンシロウとの戦いで感じた恐怖。それが気の迷いに過ぎないことを確かめるためにラオウが訪れたのは、フドウの所であった。かつてラオウにただ一度恐怖を与えた鬼の血を持つ男、フドウ。その血を飲み込むことで、恐怖を拭い去ることが、ラオウの目的であった。鬼神となって我と戦え!そのラオウの申し出を断れば、拳王軍団達による子供達の殺戮が待っている。もはやフドウに選択権はなかった。覚悟を決めたフドウは、ラオウについてくるよう命じ、ある所へと向けて歩き出した。そこは、鬼としての自分の過去を封印した場所。そして、そのフドウを鬼の血から解き放ったユリアに対しての忠誠を誓った場所でもあった。
フドウの暴虐は続いた。南斗の者達が住む村に現れたフドウは、宝を求めて暴走。その巨体で従者たちをなぎ倒し、宝のありそうな建物へ侵入を図る。だが扉に戸を伸ばそうとしたその時、一人の少女が行く手を遮った。それは、幼き頃のユリアであった。フドウの脅しにも負けず、強い意志を持った目で扉の前から動こうとしないユリア。中には相当なものがあるに違いない。そう確信したフドウは、ユリアを押しのけて扉を開け放った。しかし、そこでフドウが見たものは、生まれたての子供に乳を与える母犬の姿であった。ユリアが命がけで守ろうとしていたもの、それは出産を目前に控えた一匹の犬と、生まれてくる新しい命だったのだ。フドウにはその行動が理解できなかった。しかし、ユリアに生まれたての子犬をそっと手渡された瞬間、フドウはただそのか弱さにたじろぐ事しかできなかった。これが命よ。そう言って無垢に微笑むユリアの言葉が、フドウの心に響いた。それは、命はウジ虫がごとく湧き出るものといったフドウの価値観が崩れ去った瞬間であった。その光景を見ていたリハクは、フドウの中の鬼が消えていく様を感じていた。
リンとバット、そして子供達が現場へと駆けつけたとき、すでにそこには蘇った鬼の姿があった。そして、その鬼の戦いを見届けんと、リハクもまた姿を現した。リハクは、ラオウが恐怖を拭い去ろうとした時に向かう先はフドウの所しかない事を読んでいたのである。かつての鬼の闘気の復活に心躍らせるラオウは、その拳が錆付いていないかを確認するため、一人の手下を差し向けることにした。巨大な斧を手に、フドウへと切りかかる刺客。だがフドウが軽くその手を跳ね上げると、男の腕は簡単に粉砕されてしまった。更に男の首を捉え、巨大なその腕で締め上げていくフドウ。先程までとはまるで違うその鬼の姿を子供達に見せまいとするリンとバットであったが、既に走り始めた鬼の血はもう止まらなかった。男の顔を凄まじい肉厚で締め潰したその瞬間、フドウはかつて鬼神と呼ばれたその姿を完全に取り戻したのであった。
ラオウとフドウ。二人の戦力差は最初から明らかであった。パンチを放てばカウンターを取られ、体当たりを放っては逆に吹っ飛ばされ、戦況はラオウの圧倒的ペースで進んでいく。その間、ラオウは微塵の恐怖も感じてはいなかった。目の前に転がる鬼の姿が、あのときの恐怖が気の迷いであったと事をラオウに確信させていた。再度突っ込んできたフドウの胸に双拳を突き入れ、決着を図るラオウ。目的を果たした今、もはやフドウに用は無い。ラオウはそう考えていた。しかし次の瞬間、その考えは尚早であったことを思い知らされることとなった。引き抜こうとしたその腕は、フドウの筋肉に飲み込まれて抜けなくなっていた。絶命したかに思えたフドウの体は、倒れるどころか更なる強い力を得て蘇ってきたのである。そのままラオウの体を捕らえ、両腕で締め上げるフドウ。底なしで溢れてくるその力・・・、フドウの顔を見たラオウは、その源を直ぐに理解した。フドウの瞳に映っていたのは哀しみ。あの時、南斗の城でラオウを恐怖させたケンシロウの瞳と同じ、哀しみを宿した瞳であった。だがそれは、ラオウにとっても望むところであった。今こそ恐怖を飲み込むとき。哀しみを力で吹き飛ばさんとするラオウの渾身の手刀が、フドウへと振り下ろされる・・・| [漫画版との違い] ・北斗の修練場へ来た際、フドウの、ラオウのとリュウケンとのやりとりの順序が逆。 ・原作ではリュウケンはラオウの横だが、アニメでは二階の壇上からフドウと話す。 ・ユリアを脅したフドウの手が原作では逆手だがアニメでは正拳。 ・フドウが子供ユリアと対面する前に、市場を襲うシーンが追加。 ・鬼が負けた瞬間を目撃したのがリュウケンからリハク(?)に変更 ・アニメではリハクがフドウの村に駆けつける ・原作では既にフドウが血まみれのシーンが、アニメでは始まったばっかりでまだ流血なし。 ・ケンがラオウの城に現れ、雑魚なぎ倒すシーン追加 ・フドウの危機察知してケンの肩当が割れるシーン追加。 ・フドウの締めでラオウが吐血するシーン追加 |
|
| 第102話へ≪ | ≫第104話へ |