
仮面を取り、眼下に広がる南斗の都を眺めるユリア。彼女が思い出していたのは、ジュウザが立ち上がってくれた、あの時のことであった。幼馴染であり、兄妹である二人の数年ぶりの再会は、将と五車星という繋がりで実現した。私のためにお前の命が欲しい。その、自らが吐いた暖かさの欠片もない将としての台詞に、ユリアは心を痛めていた。自分のために死地へ赴こうとするそのジュウザに、将ではなく、女として、幼馴染としての言葉をかけようとするユリア。しかし、ジュウザはその言葉を遮った。ユリアに会った瞬間から死を覚悟していたジュウザにとって、そのユリアの言葉は未練を残すことになりかねなかった。ただ無言でユリアの肩をそっと抱いたジュウザは、そのまま背を向け、光の中へと消えていった。そして今、その男の運命を示す星は、最後の瞬きを見せようとしていた。
自らのために再びシンが略奪を続けようとすることに絶望し、ユリアはその身を投げた。しかし、シンが階段を駆け下りた先にあったのは、傷一つ無く横たわるユリアの体であった。海のリハク、トウ、そして山のフドウ。南斗正等血統としてユリアを最後まで守り抜くことを宿命とする彼等五車星が、ユリアを助けたのだ。だが、彼等がサザンクロスへと訪れた本当の目的は別にあった。突如シンに反乱を起こした部下達。その背後には、世紀末覇者拳王の影があった。ケンシロウとシンのどちらが勝利しようと、その後に拳王に勝利することは不可能。もしユリアがケンオウの手に渡り、ユリアが心を開かねば、拳王はユリアを一撃のもとに殺してしまう・・・。それを防ぐため、彼等はこのサザンクロスからユリアを連れ出す目的で現れたのである。そして、偵察へと赴いていたヒューイとシュレンより告げられたのは、その某凶星はもうすぐそこにまで迫っているという現実であった。気を失うユリアの顔を見ながら、暫く思案に暮れるシン。しかし、ユリアの口が、かつての恋人の名を呟いた瞬間、シンは心を決めた。己とケンシロウ。その勝者が再びユリアの前に立つ。その時まで、必ずユリアを守り抜くよう五車の男達に託し、シンは城の中へと帰っていった。愛する女のために、シンが最後にしてやれたこと。それは、ユリア殺しの悪名を自ら被る事であった・・・
ものであった。
び立ち上がってきたのだ。強烈な頭突き。太陽を背にした跳躍からの攻撃。ここにきて、ジュウザの攻撃は更にキレを増していた。しかしその時、ラオウはある事に気付いた。ゆっくりと自らに歩み寄ってきたジュウザに、その拳を放つラオウ。しかし、ジュウザはその攻撃を全くかわそうとはしなかった。いや、既にジュウザにはその攻撃は見えていなかったのだ。先ほどのラオウの奥技を受けた時、既にジュウザは事切れていたのであった。ジュウザの将を想う心は、死しても尚その体を立ち向かわせたのであった。| [漫画版との違い] ・ユリアと、旅立ち前のジュウザとのやりとりのシーン追加 ・南斗の都へ向かうケンが、待ち伏せしていた拳王部隊と鉢合わせるシーン追加(戦うシーンは原作にもある) ・南斗の都で、リハクが海の兵団に檄を飛ばしたりするシーン追加 ・原作では解亜門天聴解放後直ぐに死ぬが、アニメではその後も暫く戦う。 |
|
| 第96話へ≪ | ≫第98話へ |