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[第96話]
ジュウザ倒る!
俺は命を捨てても愛する女を守ろう!!


 大勢の人々が行き交い、平和と活気に満ち溢れた街、南斗の都。村人達は、南斗最後の将が齎す自由と平等に、皆笑顔を与えられていた。しかし、その明るい町の空気とは対照的に、城の中には重い空気が流れていた。数奇な運命に身を委ねられる自分の立場と、再び拳王の元へと向かったジュウザを案じる将の顔には、笑顔など微塵も無かった。

 拳王の待つ峡谷へ出発しようとしていたジュウザのもとへ、いつもの仲間たちが集まってきた。しかし、ジュウザは彼等に此処に留まるよう告げた。ここからは俺と拳王の戦い。はっきり言って足手まといだ。そう冷たく言い放ったジュウザであったが、無論それは本心ではなかった。今度の戦いでは必ず生きて帰ることはできない事を、ジュウザは知っていた。そしてジュウザ自身も生きて帰るつもりも無かった。生きろよ。自分の命を掴むんだ。それが、ジュウザが仲間達に残した言葉であった。

 フドウの部下である若草色の軍団の車に乗せられ、ケン達はフドウの住む村へとやって来た。まだヒルカ部隊の残党がいるかもしれないと一応警戒をするフドウであったが、その心配は無用であった。ハナ、テム、ミツ・・・フドウの愛する子供達は、全員無事に元気な姿で父の帰りを待っていたのだ。しかし、子供達がフドウへと駆け寄ろうとしたそのとき、フドウの体はゆっくりとその場へと倒れこんだ。原因は、背に突き刺さった無数の矢であった。タンジとジロを助けようと流砂の外へ投げたあの時、フドウ自身にも無数の矢が打ち込まれていたのであった。

 岩に腰掛け、沈黙を続けていた拳王の目が遂に開いた。待ち望んでいた男、ジュウザが遂に拳王の前へと帰ってきたのだ。黒王が自らの所へと戻されたのを確認した拳王は、早速先日の続きを始めんと、マントを脱ぎ捨てる。だがその一方で、ジュウザはなんと自らの鎧を破壊し、全てを剥ぎ取ってしまった。防具があればそこに油断、甘えが生じる。生か死かどちらかしかない背水の拳の威力こそが、ジュウザの隠していた秘拳の正体だったのだ。文字通り無防備となったジュウザは、ラオウの攻撃に全く臆することなく、真っ直ぐに間合いの中へ。そして、間合いの中に入ってもジュウザの直進は止まらなかった。あらかじめ体に油を塗ることで、その直進を止められぬよう策を施していたのだ。見事ラオウの懐の中へと飛び込んだジュウザは、掌に集中させたエネルギーを爆発させる奥義、撃壁背水掌を炸裂させる。身を擦りあわすほどの接近戦こそが、ジュウザの得意とする戦い方であったのだ。しかし、凄まじい撃掌も、ラオウに致命のダメージを与えるには至らなかった。原因は、ラオウのジュウザをも上回る格闘センスであった。一瞬にしてジュウザの秘拳の正体を見破ったラオウは、最初の攻防の時に秘孔 鏡明を突き、ジュウザの腕の力を奪っていたのである。もはやここまでだ。そのラオウの言葉どおり、ジュウザの両手は音を立てて崩れ去ったのであった。

 傷の手当てを受けるフドウを心配そうに見上げる子供達。こんな傷なんでもない。そう言って元気なところを見せたフドウは、再びケンを南斗の都へ連れていこうと立ち上がるが、やはりまだ状態は動けるまでに至ってはいなかった。それでもなんとか宿命のために立ち上がろうとするフドウであったが、それを制したのはケンシロウであった。身寄りの無いこの子供達には、フドウしかいない。どんなことがあっても、フドウは子供達のために生きなければならない人間であるとケンは判断したのだ。面目ない・・・。そう言ってフドウは己の不甲斐無さとケンの優しさに、涙するのであった。

 間近に控えた南斗の都へ向け、その歩を踏み出すケン。だがフドウは、意を決してそのケンの背を呼び止めた。フドウが最後にケンに伝えようと決めたもの、それはいままでひた隠してきた最後の将の正体であった。

 さあ打って来いラオウ!そう言ってジュウザがとった構えは、無防備を通り越したただの案山子のポーズであった。当然裏があると考えるラオウであったが、もはや戦える体ではない相手に細疑心を持つことなど、拳王としてのプライドが許さなかった。言われるがままに、渾身の一撃をジュウザの体へと炸裂させるラオウ。常軌を逸したその衝撃に、絶叫をあげるジュウザであったが、彼の最後の秘策はこの後に待っていた。吹き飛ばされる勢いを利用し、ラオウの腕を足でキャッチしたジュウザは、そのままラオウを引き倒すことに成功。そしてすかさず両手両足でラオウの右手を捕らえ、間接を捻り始めた。自らの命と、腕一本。割に合わないこの命がけの取引が、ジュウザに残された最後の秘策だったのだ。一度魂を捨てたはずのこの男に、凄まじい執念をもたらした南斗最後の将。正体を問われたジュウザは当然答えはしなかったが、その後に吐いた台詞が、ラオウの将への興味を更に深める結果となってしまった。天を握ったラオウが最後に望むものが将。つまりそれは、将とはラオウが知る人間であることを意味していた。

 あと一捻りでこの腕は折れる!自らに残された最後の力でその四股に力を込めるジュウザであったが、ラオウが拳王として培った力はジュウザの想像を超えていた。ラオウは、なんと右腕だけの力でジュウザの体を持ち上げ、更に腕の捻りをも元へと戻してしまったのである。それでも諦めずに力を込め続けたジュウザであったが、もはやその肉体は気迫についていく事は出来ないまでに崩壊していた。右肩が弾け飛ぶと同時に力を失い、ゆっくりと落下を始めるジュウザ。しかし、ラオウにはまだジュウザにやり残した事があった。秘孔解亜門天聴。ジュウサの首の後ろに深々とつきたてられたその秘孔は、自らの意思とは関係なく、口を割らせてしまう秘孔であった。喋らねば毛根に至るまで血を噴出して死ぬ。悲鳴をあげる体の痛みに精神力だけで耐え続け、死しても将の正体を語るまいとするジュウザであったが・・・

 フドウが今まで将の正体を語らなかった理由、それは万が一にも拳王の耳に入るのを防ぐためであった。我が将は女性に御座います!その衝撃の告白に、驚きを隠せないケンやバット達であったが、その直後に語られた将の正体は、ケンに全身を貫くほどの衝撃を走らせた。ケンの宿命の旅の終わりを告げる女。拳王が最後に求める女。そしてジュウザの失われていた魂を蘇られることの出来た女。そこから導かれる答えは一つしかなかった。南斗最後の将の正体、それはかつてケンシロウが愛した女、ユリアであった。
放映日:86年11月27日


[漫画版との違い]
・南斗の都で人々が将に感謝するシーン追加
・ジュウザが仲間達に、着いて来るなと告げるシーン追加
・自分の村についたフドウが、一応周囲を警戒するシーン追加

・原作ではフドウの傷は拳王部隊と戦ったときのものだったが、アニメではタンジとジロを投げたときに受けた傷に変更
・原作ではケンが将の正体を問うたが、アニメではフドウから話し始める


・ブサい
今回は北斗の拳という作品において非常に重要・・・・というか、ケンシロウにとっては一番「ビックリしたー!」てな回なわけですよ。視聴者的にはバレバレでもケンシロウさんとかにしてみたらキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!! な回なわけですよ。
ならさ・・・ならもうちょっと
ユリア美人に描いてあげて。おねがい。ラストのカットのユリア、不細工すぎます。
・ジュウザが戻った理由
ジュウザが拳王様のところに戻った理由はなんなんでしょうか。ユリアを哀しませないというのが真の目的だったとすれば、ちょっとおかしいですわな。このままシカトしてりゃ完全にケンシロウのほうが早く着いてたわけだし。
個人的には、最初から拳王様の腕一本、もしくはそれ以上のダメージを与えるのが目的だったのではないかと思う。つまり、
怪我を負った拳王様とケンシロウをわざと同時に南斗の城で鉢合わせるよう計算したのではないだろうか。例えケンシロウが先に南斗の都についても、拳王様がピンピンしてたら、いずれ殺されてユリアは哀しむ。それを避けるためには、実質上自らとケンシロウの連戦によって拳王様を倒すしかないと考えたのではなかろうか?
流石ジュウザ!と褒めたいところではあるが、結局大ダメージは与えられなかったし、既にケンが可也強くなっていることを見抜けなかった(どっかのジジイと一緒)ことを考えると、ダメかも・・・


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