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[第95話]
非情の砂地獄! 
死するフドウに救いの手は届くのか!!


 カンを抱えて荒野を行くケンの前に現れたのは、南斗の都への案内を任されたリハクの部下達であった。このカンや、その兄妹達は皆フドウの子供であること。そしてその子供達をさらったヒルカという男が拳王軍一冷酷非常な男であることを知らされたケンは、フドウの危機を察知し、救助へ向かおうとする。だが、リハクの部下達にはそれを許すことが出来は無かった。南斗の都を目前に控えた今引き返せば、将の目を涙で濡らす事になるかもしれない。五車の一員である彼等が優先すべきは、同じ五車のフドウの命より、この世に平安をもたらす将の微笑みであったのだ。しかし、目の前で自らに助けを求めるカンの涙を、ケンは裏切ることは出来なかった。

 フドウの元へと駆けるケン達の前に突如地面から拳王部隊が飛び出してきた。彼らはヒルカの部下。タンジ、ジロを拐ったのには、こうやってケンを誘い出して待ち伏せして討つという意味合いもあったのだ。だが、残念なことに彼等にケンを討ち取るだけの力などあるはずも無かった・・・

 なんとかフドウを助けようと、側にあった大木を流砂へと投げ入れるバット達。しかし、フドウを引きずり込もうとする砂の流れはそんな簡単に食い止められるものではなかった。もはやここまでと覚悟を決めたフドウは、せめてバットとリンだけでも救わんと、二人に逃げるよう告げる。しかし、残忍なヒルカが易々と二人を見逃すはずが無かった。二人の行く手には、既にヒルカの部下が周り込んでいたのだ。追い詰められたリンは、心の声で叫んだ。いつも自らの呼びかけに応え、助けにきてくれたあの人の名を。そして、今またその願いは通じた。目の前のヒルカの部下を完膚なきまでに殴りたおし、己達を救いに現れたのその人は、ケンシロウであった。将の未来のために命を捨てようとしていたフドウにとって、ケンの帰還は望ましいものではなかった。しかし、ケンもまた、他人の血と命で自らの未来を掴むことは望んではいなかった。自らと将が会うのが宿命ならば、必ず会える。それがケンの答えであった。

 流砂の中へロープを垂らし、二人がかりでフドウを引き上げようとするリハクの部下達。しかし、既に体半分以上砂へと沈んだ300Kgの巨大は、ビクとも動かなかった。そうこうしている間に、ヒルカの部下達にその身を射抜かれ、二人は死亡。だが、子供達を死なせたくないというフドウの執念は凄まじかった。突如大きく息を吸い込みはじめたフドウは、それを一気に吐き出すことで砂煙を起こした。ヒルカ達の視界を奪うことで、流砂の外へと投げるタンジとジロを矢で射抜かれないようにしたのだ。しかし、ヒルカの残虐性もまた凄まじかった。ゴーグルによって視界を回復させたヒルカは、放り投げられたタンジとジロへの射的を命令。フドウの執念虚しく、矢は二人の体を貫いた・・・かにみえた。だが、二人は生きていた。間一髪二人の体を抱えたケンが、右腕を盾にして二人を守ったのである。更にケンは、残されたフドウも救わんと左手一本でロープを握った。男二人で動かなかったものが左手一本で動くはずがない。そのヒルカの予想は、目の前で一気に放り上げられたフドウの姿を見た瞬間、崩れ去ったのであった。この傷の痛みは一瞬、だがあんたの死の痛みは一生残る。たとえ子供達が助かっても、フドウが死ねばその子らの心に大きな傷が残ることに、ケンは気付いていたのだった。

 用意していた策を台無しにされたヒルカであったが、当初の目的であるケンシロウ抹殺の作戦はこれからであった。得意の泰山妖拳蛇咬帯を早速ケンシロウへと向けて放つヒルカ。その帯の性質を理解していなかったケンは、あっという間にその身を赤い布で縛り上げられてしまう。さらに部下達の蛇咬帯をも巻きつけることで完全にケンの動きを封じたヒルカは、勝利を確信。鎧の仕掛けで体中からナイフを生やしたヒルカは、死の抱擁で勝負を決めようとケンに向かい飛びかかる。しかし、絶対にはずれないというその蛇咬帯の謳い文句も、ケンの超人的パワーの前では規格外であった。あっさりと蛇咬帯を引きちぎり、自由の身となったケンは、側の大岩を掲げて死の抱擁を防ぐことに成功。大岩に抱きついたまま動けなくなったヒルカは、あわてて部下達に矢を射るよう命ずるが、それはあまりに軽率な命令だった。矢を防ぐ盾とされつつ、岩ごと放り投げられたヒルカは、自らの部下達と勢いよく衝突。残された部下達はケンにささやかな抵抗を試みるが、もはや万策尽きた彼等に勝ち目は無かった。部下達に全員逃げられ、ただひとりしぶとく崖にしがみついてヒルカは、耐え切れずに流砂の中へと転落。その穴の中で己の犯した罪のひとつひとつ、思い返すがいい。それが、ヒルカがこの世で聞いた最後の言葉であった。

 遅れた時を取り戻すため、再び南斗の都への旅路を急ぐケンシロウ達。その姿を近くの崖から見つめる一人の男がいた。それは、あの雲のジュウザであった。己が愛した女、ユリア。そのユリアが愛したケンシロウという男を、ジュウザは自らの眼で確認しに来たのだ。そして、今自らが見たケンの強さ、そして優しさは、十分にジュウザのそれを満足させるものであった。全てを見届けたジュウザは、腹の傷の痛みを飲み込み、再び黒王の手綱を握った。将のため、そしてユリアを愛した過去にけじめをつけるため、ジュウザは今再び拳王の元へと走り出した・・・

 ケンの到着を間近に控えた南斗の城では、南斗最後の将がその出迎えのための準備をしていた。レースのカーテンに映る、見事なまでの女としての体をもつ、その将の正体とは・・・
放映日:86年11月20日


[漫画版との違い]
・フドウのところへ向かうケンに、待ち伏せていた拳王部隊が襲い掛かるシーン追加
・バットとリンが流砂に大木を投げ入れるシーン追加
・最後の将にトウが着替えを持ってきたりするシーン追加
・原作では拳王先遣隊を倒して直ぐにリハク部下がきたが、アニメでは暫くカンを抱えて歩いた後
・原作のジュウザはケンがフドウをひっぱりあげたところで帰るが、アニメではヒルカが死んでから
・フドウを引き上げる時、原作はケンの服が破れるが、アニメでは破れない
・ヒルカだけだった蛇咬帯が、アニメでは部下数人も使え、ケンを縛るのに協力
・原作のヒルカは岩を投げられたところで目などを矢に貫かれて死ぬが、原作では目は貫かれず生き延びる。が、その後流砂に落ちて埋もれて死亡


・モグラ部隊
今回、また地面から変な三人が現れる。前にレイがマミヤの村に走っていたときも、変な奴等が数人飛び出してきた。
こいつらは
何故土中に潜んでいるのだ?牙一族の時にレイの手を貫いたようなのならわかるが、普通に目の前に現れるだけなのに潜っている意味がわからない。通り過ぎた後に背後から矢を撃つとかしたほうがまだいいような気がするんですが・・・


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