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[第94話]
フドウ絶体絶命!
急げケン、男は友を見すてない!!


 夜。黒王号を奪われた拳王は、あの峡谷から一歩も動くことなく、ただ無言で腰掛けていた。そこへ現れたのは、拳王の側近であるザクであった。新しく出来上がった甲冑を拳王へと装着したザクは、一台だけ車が助かっていることを報告。それに乗り、南斗の都への旅路を再開するよう勧めるザクであったが、拳王はそれを拒否した。自らが身体を預けるのは黒王号のみ。そう心に決めている拳王は、ただじっと黒王号の帰還を待ち続けていたのだ。ジュウザは必ず戻ってくる。拳王は、自らにそう確信させる何かを感じていた。その一方でケンシロウの動向を気にする拳王は、ザクが直々に指揮をとらせ、ケンシロウを止めるよう命令。ケンシロウの前に再び送られる刺客とは・・・

 翌朝、何気なく望遠鏡を覗いていたバットの目に、迫り来る大軍団の姿が飛び込んできた。ザクが選んだのは、数に任せてケンの足を止めるという方法であった。奴等の狙いをいち早く察知したフドウは、この場は自分に任せ、ケンには先に南斗の都へ向かうよう指示。そこまでしてまで自らと最後の将を合わせたがる理由が、ケンにはわからなかった。しかし、フドウから返ってきた答えは不変であった。将の前にケンが立てば、その哀しみに沈んだ顔に暖かい微笑みが戻る。そのためになら五車星は、最後の血の一滴まで流れ落ちても本望。そして、フドウは最後にこう付け加えた。もし将に会えば、貴方の宿命の旅もそこで終わるかもしれない、と。フドウの熱い心を感じたリンにも促され、意を決して走り出すケン。そんなリンの顔を見て、フドウは言った。あなたの目は我が将の目によく似ている。それが、どういう事を意味するのか、リンには解らなかった。いよいよ迫ってきた拳王部隊相手に、まずフドウは大岩をぶんなげて先制攻撃。その後も抱え挙げた大岩を振り回す常識外れの戦い方の前に、拳王部隊は次々と薙ぎ倒されてゆく・・・

 圧倒的な大勝利と、もう二度とジュウザが戦闘服を着ることの無い事を祈り、乾杯をするアウトロー仲間達。だが、相変わらずジュウザの顔に笑みは無かった。ラオウを想って暴れる黒王をなだめたジュウザは、そのまま黒王に跨り、輪の外へ。ジュウザが一人になった理由、それは拳王に受けた腹の傷を悟られぬためであった。新しく腰布を巻きつけても、すぐに血が染み出てくるその傷は、想像以上に深かったのである。とその時、リハクの部下より、ケンシロウが一人で南斗の都に向かっているとの報が入れられた。このままなら拳王より一歩先に。それを聞いたジュウザは、そのリハクの部下にケンを南斗の都へと案内する役目を与えた。全ては上手くいった。皆がそう思う中、ジュウザだけは全く違うことを思い描いていた。ラオウの読みどおり、再びジュウザは拳王の前に立つ意志を固めていたのだった。しかし、ジュウザにはその前に見届けねばならないものが残されていた。

 総指揮を任されたザクの耳に入れられたのは、どうしようもない惨敗の報告であった。言い訳の仕様もないその敗戦をいかに拳王に伝えれば良いのかもわからず、頭を悩ませるザク。とその時、自らの出番を待っていたかのように、一人の男が姿を現した。男の名はヒルカ。残忍で知られる彼が思いついた作戦とは、フドウが養っている身寄りの無い子供達を使うことであった・・・

 フドウと子供達の住む小屋の周りを巡回する見張りたち。退屈なその作業に気の抜け切っていた彼等を襲ったのは、謎の赤い帯であった。泰山妖拳蛇咬帯。ヒルカのその必殺の帯に身を巻かれた見張り達は、無残に身を切り刻まれたのであった。小屋へと押し入ったヒルカは、あっという間に子供たちを蛇咬帯に巻きつけ、拉致に成功。しかし、ヒルカは気づかなかった。たまたまベットの下から抜け出せなくなっていたカンが、その光景を目撃していたことに。

 拳王部隊を片付け、再び南斗の都へと歩き出したフドウ達。しかし、突如響いてきた謎の声は、フドウに衝撃の事実をもたらした。おまえが養っている子供達を拐った。助けたければ流砂地まで来い。フドウの元へと舞い落ちてきたタンジとジロの服が、それが単なる脅しではないことを示していた。これが拳王軍の用意した罠であることを100も承知するフドウであったが、優しきフドウには選択権は無かった・・・

 兄弟達が拐われたことをフドウに知らせるため、荒野を行くカン。だが、その背後には拳王先遣隊の乗る車が迫っていた。何度鞭打たれても立ち上がるカンを面白がり、更にその鞭を振るう先遣隊。幼いその身体がもはや限界を迎えようとしたその時、何者かがその鞭を腕に絡ませ、カンを救った。外道達の前に姿を現したその怒りに震える男は、ケンシロウであった。鞭打っていた男を絡ませた腕の力で一気に引き寄せたケンは、全力の拳でその顔面を貫通。残る3人を、車ごと放り投げて撃退したケンは、しぶとく生き残っていた男の横っ面を足で踏んづけた。もう悪いことはしません!そう言って許しを乞う男であったが、時既に遅かった。既にケンは、その足を離せば爆死する秘孔をついていたのだ。現実を受け入れることの出来ないまま、男は無残にその体を四散したのだった。大怪我を負うカンを介抱したケンは、そのカンの兄弟が拳王部隊に連れ去られたことを告げられる。南斗の都へ向かうという目的を抱えるケンであったが・・・

 流砂地へと辿り付いたフドウの前に、崖の上で高笑いを挙げるヒルカの軍団が現れた。そしてその手には、フドウが愛する子供、タンジとジロが抱えられていた。ヒルカの残忍さ、そしてこの場所を指定してきたことを考えれば、ヒルカの目的は明らかであった。なんとしてでも止めねばならないフドウは、そのタンジとジロがヒルカと同じ一族のものであることを告げ、説得を試みる。しかし、ヒルカには一辺の心変わりも無かった。この時代に血の繋がりなど何の意味もない!それが、悪魔に魂を売った男が出した結論であった。容赦なく放り投げられたタンジとジロを、底なしの流砂が襲う。もがけばもがくほど沈み行く流砂の中では、二人はただ父の名を泣きながら叫ぶことしか出来なかった。いかにフドウといえども、その流砂の中へと飛び込めば助かる見込みは皆無。しかし、目の前で自らに助けを求める子供達を見捨てることなど、フドウには出来なかった。二人を助けたいその一心で流砂の中へと飛び込んだフドウは、子供達をその胸の中へと抱え、そして五車の星としての宿命を果たせなかったことを将に詫びるのであった。
放映日:86年11月13日


[漫画版との違い]
・リンとバットがフドウの腰巻の中で闘いを観戦するシーン追加
・フドウが右肩の星でジュウザが動いたことを察知するシーンが削除
・ヒルカがザクに、フドウの子供達を利用する作戦を話すシーン追加
・タンジ、ジロ達がヒルカに拐われるシーン追加
・ジュウザの仲間達が勝利の乾杯をするシーン追加
・原作では偶然流砂地を通りがかったが、アニメではヒルカが子供達を人質におびき出す。
・先遣隊の顔面を貫いたのが、右手から左手に変更
・原作ではヒルカはタンジ、ジロの実父だったが、アニメでは同じ一族という設定に変更


・ヒルカと悪だくむザク様
こんなのザク様じゃない!!
ていうか

デカい!!





・フドウ家
一応見張りは三人いるわけだが、まるでコンビニバイトなくらいのやる気の無さを見せる奴等揃えても意味がないと思うんだが。せめて自分とこの若草色の軍団でも使ったらどうなんだ?ていうかそれより全員南斗の都に住まわせてもらえば話は早くないか?あそこならそう簡単にヒルカに拐われることも無かったと思うのだが・・・


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