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[第90話]
俺は雲のジュウザ! 
時の流れに身を任す!!


 自らの築き上げた拳王軍団の力を使い、遂に南斗の都の位置を突き止めた拳王。そして、そこの総指揮を海のリハクがとっていること、更にはそのリハクの部下が雲のジュウザという男の元へ訪れたことも、同時に拳王へと伝えられた。ジュウザという名に一瞬反応した拳王であったが、それが杞憂であることを拳王は自覚していた。その男が自らの思い浮かべるジュウザであるならば、その男は決して動かないことを拳王は知っていた。

 その頃、当のジュウザは、自らの城につれてきた女たちと共に水遊びをしていた。拳王の読みどおり、ジュウザはリハクからの願いなど完全に無視して遊び呆けていたのだ。だが、リハクの部下たちもこのまま帰るわけにはいかなかった。水浴び場にまで飛び込み、必死の説得を続ける二人。しかし、相変わらずジュウザの考えは変わろうとはしなかった。俺は自由気ままに生きる。そう言って再び女たちと戯れはじめるジュウザ。だが、一見愉しんでいるようなその姿が、"ある事"を忘れる為の偽りの姿である事を、リハクの部下たちは知っていた。だが、彼等がそれを語ろうとした瞬間、ジュウザの顔は鬼の形相へと変わった。その事を忘れねばうぬらをこの場で叩き殺す!!ジュウザの触れてはいけない過去とは・・・

 ラオウが南斗の都へ向かっていると言う事実は、フドウの耳にも入れられた。このままでは自分たちより一歩早く、ラオウが将の元へ辿り着いてしまう。その事を知ったフドウは、食事中であったケン達に事情を話し、旅路を急ぐことにしたが・・・

 見張りをしていた拳王部隊の一人が、大慌てで仲間達の下へと戻ってきた。ケンシロウ一行が己達が屯する峡谷へと向かっているというのだ。その事実を知った隊長ヤコブは、突如そのケンシロウ一味の首に商品をかけ始めた。ガキ二人ならバイクの部品。フドウならガソリン一年分。そしてケンシロウなら新型の大型バイク。隊長の粋な計らいに、部下たちの士気は最高潮にまで高まっていた。我が先にとばかりにケンシロウの首を狙わん粋がる彼等は、拳王長槍騎兵隊と呼ばれる者達であった。

 峡谷へと差し掛かったケン達に、崖の上からの大岩で先制をかける長槍騎兵隊。その攻撃はフドウの巨体によって防がれてしまったが、彼等の真の攻撃はその後に待っていた。死の特攻と呼ばれる崖の上からの集団攻撃で、一気にケンシロウを倒そうとする騎兵隊。しかしケンは、その場に落ちていた棒一本で、彼等の槍攻撃をいとも簡単に振り払っていった。その一方で、バット達に対して槍を向ける二人がいた。多くを望まない彼等は、子供たちを狙ってセコくバイクの部品を手に入れようと考えたのだ。しかし、そんな勝手なマネを、フドが許すはずはなかった。側にあった大岩を軽々と抱えあげたフドウは、容赦なくそれを二人の頭上へと落としたのであった。

 ケンの圧倒的強さに慄き、戦意を失う騎兵隊。そんな部下の情けない姿を見て立ち上がったのは、隊長ヤコブであった。ケンにタイマンを申し込んだヤコブは、バイクに跨り崖の上から特攻。しかし、自らが乗り捨てたバイクをうまく踏み台として利用されたヤコブは、そのまま飛び蹴りを食らい、地面へと叩き落されてしまった。思ったほどのダメージがなかったヤコブは、諦めずにケンに向かって突撃。しかし、既に勝負はついていた。ケンのもとへとたどり着く前に、ヤコブはその腹を大きく膨らませ、破裂したのであった。

 空を見上げながら草笛を吹くジュウザ。だがその頭の中は、忘れることの出来ない一人の女のことで一杯であった。幼少の頃からジュウザが妹のように可愛がり、育てた女。やがて女は美しく成長し、ジュウザの想いも恋心へと変わっていった。しかし、ジュウザの叔父は、二人の結婚を認めようとはしなかった。そして、その叔父から告げられた真実にジュウザは耳を疑った。ジュウザにとって、その女は母違いの妹にあたる関係だったのである。哀しみの底へと落とされたジュウザは、全てを捨て、無頼へと走った。その原因となった女の名は、ユリアと言った・・・

 しつこくつきまとうリハクの部下達にさっさと帰るよう促すジュウザ。とその時、ジュウザの仲間の一人が、大慌てで駆け寄ってきた。ジュウザが拐ってきた、あの水浴び場の女達を取り戻さんと、盗賊の親玉・ゲルガが攻めてきたのである。その頃、城内ではそのゲルガとジュウザの仲間達の戦闘が行われていた。石柱を片手で破壊したり、弓矢や剣をも跳ね返すその筋肉の前に、為す術の無いジュウザ一味。だがその時、ゆっくりとジュウザが場内へと入ってきた。自らを無視し、仲間達の怪我の心配をするジュウザに、挑発をかけるゲルガ。しかし、ユリアの件でイラついていたこの男には、今は何人たりとも触れてもいけなかった。強烈な腕の力から繰り出す泰山破奪剛にて、ジュウザに攻撃を仕掛けるゲルガ。しかしその豪力も、ジュウザの天賦の才の前では無意味に等しかった。ジュウザの高速の手の動きで無残に右腕をねじり潰されたゲルガは、そのまま顔面と足を掴まれ、背中から真っ二つに折られて死亡したのであった。凄まじいジュウザの力を見たリハクの部下達はねやはりこの強さなくして拳王はとめられないと確信するが・・・

 南斗の都へ向けて着々と進軍する拳王に、焦りを募らせるリハク。頼みの綱のジュウザにも全く動く気配が見受けられず、もはや状況は絶体絶命を迎えていた。だがその時、雲を動かす任務に名乗り出た者がいた。それは、リハクの一人娘、トウであった。
放映日:86年10月16日


[漫画版との違い]
・フドウが、自らの部下から、拳王が南斗の都の位置などを知ったとの報告を受けるシーン追加。
・原作ではジュウザはゲルガの城へ侵入したが、アニメではゲルガに捕らわれていた女達を拐ってきたに変更。
・それに伴い、原作のゲルガは城に侵入したジュウザを排除しようとするが、アニメでは女を取り戻すたもにジュウザの城に乗り込む、に変更。また、アニメでは部下を引き連れていない。
・原作では女と遊んでいる時にゲルガが登場するが、アニメでは一旦外に出たあとにゲルガが来たと報告を受ける
・攻めてきたゲルガと、ジュウザの仲間達との戦闘シーン追加
・ジュウザに腰を折られたゲルガが、その後北斗神拳のように爆死するシーン追加
・原作では長槍騎兵隊はザクの命令で出撃したが、アニメでは屯っていた場所にケン達が通りかかったので襲った。
・原作でフドウに潰された長槍騎兵は、フドウに襲い掛かっただけだが、アニメではバット達を殺そうとしたところをやられた。
・長槍騎兵隊の、ケンの戦う前のやりとり追加
・ケン対ヤコブ戦追加
・原作でジュウザとユリアの過去が描かれるのは拳王と対峙した時だが、アニメではゲルガが城に攻めてくる直前


・祭り
今回はアニメ北斗の中でもナンバーワンに生乳が拝める回です。とりあえず拝んどけ。
・てんさい
アニメでジュウザにやられたゲルガは、腰をボキリと折られた後、まるで秘孔を突かれたかのようにバシューとその身を四散させる。まさかジュウザは北斗神拳まで使えてしまう天才なのか?もしや幼少時代に拳王様たちをからかいに来ていたのは、北斗神拳の極意を盗みに来ていたのではないのか?流石や。アンタ流石やで。
・あなたを失ってから
長槍騎兵見習「ヤコブ様〜! とんっっでもねぇ奴が・・・」
ヤコブ「とんでもねぇ奴? 今時とんでもねぇ奴ってのは拳王様に逆らってるケンシロウ一味くらいのもんだぜ」
長槍騎兵見習「そ、そのケンシロウでありやす!」
ヤコブ「なんだとぉ?」
長槍騎兵見習「お、おれが昔アミバ様の部下だった時に、一度だけケンシロウを見た事があるんでさぁ。履歴書に書いといた筈ですが・・・」
ヤコブ「アミバ? 誰だそりゃあ?」


アニメ北斗ファンの中では既に伝説的になっているこの台詞。噂では、一部のアニメ誌での異常なアミバ熱が飛び火したとも言われている。時代がアミバを忘れさせたのか、それとも拳王軍にはちゃんとした組織図がなかったのか、いろいろ考えさせてくれる台詞である。


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