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[第89話]
風雲急を告ぐ!ケン、宿命が
南斗の都で待っている!!


 フドウら南斗五車星の目的。それは、自らの主である南斗最後の将とケンシロウを会わせる事であった。表裏一体である北斗南斗をひとつにし、この世に真の平和をもたらすこと。その為になら我が身が砕け散ってもかまわないとまでの信念を持っていたのだ。しかし、ケンは動こうとはしなかった。ケンには北斗の歴史を守らねばならないという宿命があったからだ。だが、そんなケンに対しフドウは言った。我が将に会う事こそが、貴方の宿命だ、と。そして、フドウの目に宿る強い光は、遂にケンシロウを動かしたのであった。遥か南にあると言う南斗の都へ向け、ケン達の新たな旅が始まる・・・


 リハクのもとへ、フドウがケンを連れて南斗の都に向かっているとの吉報が入れられた。しかし、もう一つの問題である拳王の進軍を止める術のほうは一向に進展を見せてはいなかった。その作戦の中核を担う雲のジュウザは・・・

 盗賊集団に捕えられ脅える女達。彼女たちは、盗賊のリーダー・ダルカの命令によって彼等のアジトへと拐われてきた者達だった。これでしばらくは女に不自由しない、と汚く笑うダルカ。だが、そんなダルカの頭に、突如空から洗濯水が降りそそいだ。犯人は、あの五車星の一人、雲のジュウザであった。ジュウザは、悪党達からも恐れられる根っからの女好きの悪党として有名な存在だったのだ。ダルカの顔面へと飛び降り、華麗に自己紹介を始めるジュウザ。怒り狂うダルカはジュウザを地面へと叩きつけようとするが、逆にその勢いを利用され、自ら地面とキスしてしまう結果となってしまうのだった。諦めないダルカは、崋山角低張手にて再度ジュウザに襲い掛かる。しかし、ジュウザの強さは彼等の想像を大きく越えていた。高速で足でのビンタを食らったダルカは、再度顔面へと着地され、最後はそのまま両足で首の骨を折られて死亡。もはや完全に抵抗する意思をなくした盗賊たちは、女達を連れて退散するジュウザを見送ることしか出来なかった。しかし、ジュウザの真の恐怖はまだ終わってはいなかった。ジュウザがダルカと遊んでいるうちに、ジュウザの仲間たちが彼等の食料庫をやぶっていたのだ。意気揚揚と女と食料を抱えて走り去るジュウザ一味。全て奪われたダルカ一味に残された物は、着火されたダイナマイトのみであった。己たちを大きく超えたその悪行ぶりに、ボロボロになった盗賊たちは、ただただ呆れるばかりであった。

 山道ゆく一台の車を止めたのは、拳王軍団を名乗る者達であった。武器を隠し持っていないかと、車に乗る二人の身体検査を行う拳王部隊。異常無しと判断された2人は早速車を出発させようとするが、拳王部隊はそれを許さなかった。まだ後ろの荷物を調べていないから、それを置いていけと言うのである。しかし、これは隣の村の拳王部隊に届ける食料だと説明した瞬間、彼等の顔色が変わった。そう、彼等はただ拳王軍団を名乗っていただけの野盗だったのである。素性を知られた盗賊たちは、あっと言う間に2人を殺害。二人の絶叫がこだましたその山道には、数分後、宴会を開く盗賊達の笑い声が響いていた。とその時、見張りの望遠鏡が新たなカモの接近を捕らえた。そのレンズの先に映っていたのは、一人の男、二人の子供、そしてとてつもなく大きい男の四人組であった。

 山道にやってきたケンシロウ達に、さっきと同じ手口で持ち物を置いていくよう指示する盗賊達。しかし、幾多もの経験を積んだケン達の目は、彼等が拳王部隊ではないことを一瞬で見抜いていた。拳王様に逆らう七つの傷の男と五車星の男を探している。どこからか得た知識でそう述べる盗賊達であったが、その人物像が自分達の目の前の男にそっくりであることに気付くのに、それほど時間はかからなかった。相手がケンシロウ達と知った盗賊達の中に、動揺が広がる。だが、やはりこれを好機と見る向こう見ずな男たちもいた。群を抜いたガタイを持つ、鉄爪と棒術使いの二人組が、ケンに襲い掛かる。しかし、盗賊内での腕自慢である彼等も、ケンの前では赤子同然であった。交首破顔拳。岩山両斬波。容赦のないケンの北斗神拳を食らい、二人はあっけなくその身を弾き飛ばされたのであった。

 俺は悪党の中の悪党!エース格の二人を倒されても、一歩も引かない構えをみせる盗賊の親分であったが、既にその背後には誰一人残ってはいなかった。ケンシロウの強さに完全に戦意を喪失した部下たちは、全員逃亡してしまっていたのだ。その事実を知った親分は、掌を返したかのように土下座し、二度と悪さはしないとケン達に約束。心優しいフドウは、見逃して先に進もうと促すが、親分の目はまだ光を失ってはいなかった。一瞬の隙を突き、剣をフドウの右手へとつきたてる親分。見事ケンは肉を貫いたが、しかしそれはただフドウの怒りを買っただけでしかなかった。怒りの表情で迫り寄るフドウに、「悪党の中の悪党」としての最後の意地を貫き通そうとする親分。しかし、結局その迫力に押し切られた親分は、自ら足を踏み外し、谷底へと落下したのだった。こんな時代が続けば、このような子悪党が更に肩幅を利かせてゆく。そんな世を少しでも早く変える為、フドウは改めてケンが将に合わねばならないことの重要さを説くのだった。


 連れて来た女たちが全員子持ちと知り、落ち込むジュウザ。どうしても家へと帰らせて欲しい。そう言って頼み込んでくる女たちに対し、ジュウザは大量の食料を持たせ、さっさと退散するように指示した。表しきれない感謝の言葉を延べながら、その足音を遠ざけていく女たち。だが、それとは行き違いにジュウザに近寄る足音があった。それは、南斗の都から派遣された、リハクの部下二人であった。どうしてもリハク様の願いを聞き入れて欲しい。そういって頭を下げる二人であったが、ジュウザは全く首を縦に振ろうとはしなかった。誰にも縛られず、雲のように自由に生きる。それがジュウザの信念だったのだ。ならばせめて将にお目通り願いたい。そう言って、なんとかジュウザを動かそうと説得する二人であったが・・・

 ケンシロウが山のフドウと共に南へ向かっていると言う情報は、拳王の耳にも入れられていた。自らではなく、ケンシロウを引き寄せようとするその南斗最後の将に対する拳王の興味は、更に深まりつつあった。
放映日:86年9月25日


[漫画版との違い]
・ケンがフドウにいまひとず信頼をおかず、去ろうとするシーン追加
・ダルカにかけられたのが、小便から洗濯した水に変更
・原作ではジュウザは最初に顔面に降りた後に首を折るが、アニメでは一旦顔面を地に叩きつけたり何回も蹴ったりした後。
・アニメではジュウザに仲間達がおり、ダルカの所から食糧を奪う役目は彼等になる。
・ヘグらがダイナマイトで真っ黒にされるシーン追加
・ケン達と山道の盗賊とのやりとり追加
・リハク部下がジュウザを説得している時に、側を拳王部隊が通るシーンが削除


・なつい
今回、唐突に交首破顔拳と岩山両斬波が登場する。奥義が出てこねーぞウラーという視聴者からのハガキでも来たのだろうか。しかしどうせ出すならもう少しヒネって欲しかったなあ・・・。炸裂させた二人もなんかクラブとダイヤをパクったような奴等だし。北斗の拳が北斗の拳からパクってどうすんのん。
・鑑定士
山道の盗賊に出合って、バットが一言。「まっさかー。拳王の部隊はあんな格好してねぇーよー。」
・・・・・御免。
どこがどう違うのかサッパリわからん。むしろこれ以上ないくらい拳王部隊だと思うんだが。やっぱ修羅場を潜り抜けてきたプロの眼は違うね。


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