
その頃、ブーガルの城では異変が起きていた。決起した村人の二人が、ブーガルを倒すため城へと乗り込んでいたのである。門番を倒し、城内へと駆け込む二人。しかし、そこにブーガルの姿は無かった。だが、その部屋に漂うただならぬ気配を二人は感じ取っていた。と、次の瞬間、部屋にあった阿修羅像が真っ二つに割れたかと思うと、その中から飛び出した一人の男が飛び掛ってきた。華麗に身を翻し、あっという間に二人の胸を貫いたその男こそ、転界無王拳の使い手ブーガルであった。自らの手に付いた血に、激しく不快感を覚えるブーガル。彼は極度の潔癖症であり、異常なまでの風呂好きだったのである。早速部下に本日8回目の風呂を用意させたブーガルは、喜々としてその水風呂の中へとダイブ。貴重な水を大量に床へと溢れさせてはしゃぎまわるブーガルに、流石の部下達も呆れ顔を隠すことはではなかった。
けしかけた部下達を一瞬で全滅させられたブーガルは、転界殺生拳でケンに攻撃を開始。しかし予想以上のケンの強さの前にあっさりと一撃を貰い、ふっとばされてしまう。だが、ブーガルは奥の手を隠していた。ケンが残党を片付けている間に、ブーガルは完全に姿をくらましてしまったのだ。ブーガルが異常に風呂を好む理由、それは、自らの気配を完全に消し去るため、僅かな匂いも残さないようにするためだったのである。長い沈黙の中、ケンは静かに目を閉じた。そして精神を研ぎ澄ませたケンの耳は、ほんの僅かな気配を感じ取っていた。次の瞬間、ブーガルはケンの真下から地を割って登場。しかし、ブーガルの拳は虚しく空を切った。ケンの集中力が、ブーガルの完全な気配絶ちを上回った瞬間だった。そして、そのままケンがブーガルの顔面に蹴りを炸裂させた瞬間、勝負は決した。
ヤケクソになり、大斧をもってケンに襲い掛かろうとするブーガルであったが、その歩は真っ直ぐ後ろへと進み始めた。既にケンによって秘孔を突かれていたのだ。その歩が向かう先にあったのは、ブーガルが最も愛した風呂であった。身も心も清めてから地獄へ行け。それが、ブーガルが現世で聞いた最後の言葉であった。
ブーガルの村が陥落したことは、直ぐに拳王の耳に入れられた。世紀末覇者と救世主、並び立たず。雌雄を決する時が近付きつつあることを、拳王は悟っていた。| [漫画版との違い] ・アニメオリジナルストーリー |
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