
行進を続ける拳王軍。その先頭を行く拳王は、天空に赤く輝く天狼星を目にした。血に飢えた狼は、その身を赤く染めるために動き出そうとしていた。
足に鉄球を着けられ、再び過酷な労働へと向かわされる村人達。しかし、その列の最後に居たのは、ケンシロウ、そして先ほど村を出たハルであった。砂漠で行き倒れるていたところをケンに救われたハルは、村のことを話し、ケンを連れてきたのである。ケンは解らなかった。自らを襲い、そして今度はこうして侵略へと走ったリュウガの真意が。それを直接本人の口から聞き出さんがため、ケンはこの村へと訪れたのだった。邪魔をするリュウガ部隊を蹴散らし、村の中へと入っていくケン。一方のリュウガ部隊も、相手がケンシロウといえども一歩も引くことはなかった。拳王軍団最強部隊としての誇りが、彼らを前へと進めていたのだ。だが、村を任された副官ガロウは、そんな彼らの剣を制止した。たとえ死を覚悟した剣であろうともケンシロウを倒せぬことは、ケンの強さを目撃したガロウが一番よく解っていたのだ。この俺に勝てばリュウガ様の居所を教えてやろう。主リュウガのため、ガロウはその剣をケンシロウへと振りかざす・・・
ガロウの剣術、泰山流斬人抜刀術の前に防戦一方のケン。壱の太刀、弐の太刀を交し、そして参の太刀を跳躍で交したケンは、そのまま宙から初めて攻撃に転じるが、それも互いにかすり傷をつけるに留まった。しかし、相手の拳に脅威を感じていたのはガロウの方だった。そしてその強さは、いずれ主リュウガまでをも飲み込んでしまうことを、ガロウは予感していた。なんとしてでも此処でケンシロウを葬らねばならない。リュウガの為に命を賭けんとするその男は、斬人抜刀術
奥の太刀で勝負に出た。自らの背に剣と両手を回し、まるで無防備に特攻するガロウ。そこから放たれた左手をケンは瞬時に破壊したが、その手には剣は握られていなかった。フェイントの為だけに左手を犠牲にし、右手に握られた剣で相手を仕留める。それが斬人抜刀術
奥の太刀の正体だったのである。だが、ケンの拳士としての才は、寸前でそれを見切らせていた。腕に剣を刺させて防いだケンは、更に筋肉だけでその剣を弾き飛ばし、戦いの終わりを告げる拳の嵐をガロウへと浴びせたのだった。
深々とその矢を胸に受け、崩れ去るトキ。天狼拳からリンを守るため、再度その身を呈する事は出来たが、もはやトキの体は戦うことは出来なくなっていた。全てはケンシロウとの戦いのため・・・自らが魔狼と化した理由を問われたリュウガは、そう答えた。トキを殺すことでケンシロウの怒りを引き出し、本気のケンシロウとの闘いを実現させることが、リュウガの目的だったのである。リュウガの拳にケンシロウが倒れた時、それはラオウという巨木が世の制覇を成し遂げる運命であることを意味する。ケンシロウとラオウ。時代がどちらの巨木を必要とするのかを見定めるため、リュウガはトキを殺さねばならなかったのだ。しかし、そのリュウガの言葉は、トキの心をも動かした。残り少ない自分の命が次の時代の礎となるならば本望。そう言ってトキは、無防備にリュウガの前へと立った。それは、己が死を覚悟したというトキの合図であった。頭は下げぬぞトキ!!時代の為に悪名をかぶらんとする魔狼の拳が、トキの胸に突き刺ささる。迸る鮮血の中、リンはそのトキの最後を伝えんと、ケンに心の叫び送るが・・・| [漫画版との違い] ・リュウガがとある村を全滅させるイベントが削除。 ・盗賊達の治める村をリュウガ達が奪うシーン追加。原作のリュウガの返り血はその時に浴びる。 ・ハルに連れられてその村にきたケンシロウがガロウと戦うシーン追加 ・原作では死に掛けの老人からリュウガがトキの所へ向かっていることを聞かされるが、アニメではガロウから。 ・リュウガがトキの診療所を崖の上から見下ろすシーン追加 ・足の報告にきた老人は、原作では射抜かれて死ぬが、アニメではトキの体当たりで救われる |
|
| 第75話へ≪ | ≫第77話へ |