
かつてサザンクロスと呼ばれた地。栄華を誇ったその町の残骸へと訪れたのは、白馬に跨った謎の男だった。彼が向かった先、それは、街中に建てられた二つの墓標であった。並んで建てられたその墓標を、静かに見下ろす男。とその時、彼の背後に物音が響いた。そこに居たのは、かつてユリアの世話係として仕えていた少女、サキだった。彼女は時折サザンクロスへと訪れ、墓を掃除を行っていたのだ。男が悪党ではないことを知ったサキは、その二つの墓が、シンとユリアの物であることを説明。すると男は、向かって左側の墓――ユリアの墓の前へと立ち、一本の百合の花を墓前へと添えた。オオカミ・・・自らをそう名乗った男は、いつまでも墓を守り続けてくれるようサキに依頼し、その地を後にしたのだった。
別の村では、拳王軍のアビダが主催する競技が行われていた。それは、鉄鎖をはめた村人をハンマー投げのように振り回し、何処まで飛ばせるかを競うという残虐無比な遊びであった。彼らもまた、拳王不在の今、我を解放させて暴れまくる下衆共であった。新記録を出した部下ゴンズを褒め称えたアビダは、今度は自らの番だとばかりに村人の選別を開始。中止を訴えて飛び出してきた長老をその重りに決め、豪快にその身を振り回すアビダ。しかし、投じるに至るまでに、その鎖はアビダの手からすっぽ抜けてしまった。高々と真上にその身を舞い上がらせる長老。だが、誰もが長老の死を覚悟したその時、近くのビルから伸ばされた一本の腕が、落下する長老の鎖をつかんだ。命を救われた長老は、自らを助けたその男に感謝すると共に、早く逃げるよう勧告する。しかし、その心配は無用のものだった。ゆっくりとそのビルを降り、アビダ達の前へと現れたその男は、北斗神拳正当伝承者、ケンシロウであった。
この村だけではなかった。リュウガは拳王無き後、その拳王支配下にあった村を次々とその手におさめていたのだ。それを拳王様への謀反だと言い詰めるアビダだったが、先ほど拳王と呼び捨てにしていた事実をつかれては、返す言葉すらなかった。武器を拾い、ヤケクソにリュウガへと襲い掛かるアビダ。そんなアビダにリュウガが放った技、それは泰山天狼拳と呼ばれる恐るべき拳であった。えぐられたアビダの喉は、高速の拳が生み出す凍てつくような寒さを感じていた。
| [漫画版との違い] ・リュウガがサザンクロスでユリアの墓を参るシーン追加 ・原作で拳王が帰ってくるのは大男が囲いの中で女を追いまわす遊びをしている村だが、アニメではただ拳王軍が略奪をしていた村。前記の村は次話に登場するが、現れるのは拳王でなくケンシロウ。 ・ハンマー投げされた長老が、原作より若い ・現れたリュウガを、アビダが拳王と勘違いしない ・蹴られたゴンズで新記録の後、その後また蹴られたアビダ配下の男二人が更にその記録を塗り替えるシーン追加 ・アビダがケンにトンファーで襲いかかるが、叩き落とされてしまうというシーン追加 ・残ったアビダ配下を全てリュウガが葬るというシーン追加 ・ガロウがリュウガの副官として登場 |
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