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[第73話]
天狼星の男リュウガ! 
俺は乱世に虹をつかむ!!


 かつてサザンクロスと呼ばれた地。栄華を誇ったその町の残骸へと訪れたのは、白馬に跨った謎の男だった。彼が向かった先、それは、街中に建てられた二つの墓標であった。並んで建てられたその墓標を、静かに見下ろす男。とその時、彼の背後に物音が響いた。そこに居たのは、かつてユリアの世話係として仕えていた少女、サキだった。彼女は時折サザンクロスへと訪れ、墓を掃除を行っていたのだ。男が悪党ではないことを知ったサキは、その二つの墓が、シンとユリアの物であることを説明。すると男は、向かって左側の墓――ユリアの墓の前へと立ち、一本の百合の花を墓前へと添えた。オオカミ・・・自らをそう名乗った男は、いつまでも墓を守り続けてくれるようサキに依頼し、その地を後にしたのだった。

 とある町を支配し、やりたい放題の拳王軍団員。彼らの長である拳王の失踪。それは、忠義薄き彼等下っ端拳王軍団員を増長させるには十分な理由だった。拳王様が居たときのほうがマシだ。そう言って嘆く村人達に、兵士達は言う。なにが拳王だ!いなけりゃただの大男よ!だがその時、彼の言う大男は、その直ぐ背後にいた。傷を癒し、完全復活を果たした世紀末覇者拳王が、遂に自らの領土に戻ってきたのである。愚かな部下に閉口し、ただ無言のままその場を去る拳王。しかしそこには、黒王号に踏み潰された部下達の死骸が散乱していた。

 別の村では、拳王軍のアビダが主催する競技が行われていた。それは、鉄鎖をはめた村人をハンマー投げのように振り回し、何処まで飛ばせるかを競うという残虐無比な遊びであった。彼らもまた、拳王不在の今、我を解放させて暴れまくる下衆共であった。新記録を出した部下ゴンズを褒め称えたアビダは、今度は自らの番だとばかりに村人の選別を開始。中止を訴えて飛び出してきた長老をその重りに決め、豪快にその身を振り回すアビダ。しかし、投じるに至るまでに、その鎖はアビダの手からすっぽ抜けてしまった。高々と真上にその身を舞い上がらせる長老。だが、誰もが長老の死を覚悟したその時、近くのビルから伸ばされた一本の腕が、落下する長老の鎖をつかんだ。命を救われた長老は、自らを助けたその男に感謝すると共に、早く逃げるよう勧告する。しかし、その心配は無用のものだった。ゆっくりとそのビルを降り、アビダ達の前へと現れたその男は、北斗神拳正当伝承者、ケンシロウであった。

 今度は俺が挑戦しよう。そう言って、遠くのビルの壁を指差すケン。不思議そうにその指が示す方を見やるゴンズだったが、その球として選ばれたのが自らの体であることに、ゴンズは気がついていなかった。豪快に蹴り飛ばされ、自らの記録を更新されるゴンズ。続いてケンに襲い掛かった兵士二人の体は、更にその記録を更新させた。怒れるアビダは、千人以上殺したという長尺の刃付きトンファーでケンを襲撃。だがその勝負は、ケンが武器を叩き落とすまでの一瞬で終了した。お前にも飛んでもらう。冗談ではないケンのその言葉に怯えるアビダ。しかし、彼にトドメをさしたのはケンの拳ではなかった。アビダの背後から現れた、白馬に跨った男。先日サザンクロスへと現れたその男は、拳王軍に所属する戦士の一人、リュウガであった。この村は私が貰いうけよう。リュウガのその言葉は、村の頭領としてアビダの解雇を意味していた。この村だけではなかった。リュウガは拳王無き後、その拳王支配下にあった村を次々とその手におさめていたのだ。それを拳王様への謀反だと言い詰めるアビダだったが、先ほど拳王と呼び捨てにしていた事実をつかれては、返す言葉すらなかった。武器を拾い、ヤケクソにリュウガへと襲い掛かるアビダ。そんなアビダにリュウガが放った技、それは泰山天狼拳と呼ばれる恐るべき拳であった。えぐられたアビダの喉は、高速の拳が生み出す凍てつくような寒さを感じていた。

 天狼星。狼の目の如く、天空で最も強く輝く星。何者にも組せぬその孤高の星が、リュウガの持つ宿星であった。これほどの闘気を持つ男に出会ったのは二人目だ。ケンシロウの第一印象をそう述べたリュウガであったが、彼の拳がケンシロウへと向けられることは無かった。腐った枝・・・拳王という名の大木までも腐らさんとする愚かな拳王軍の兵士達を刈ることが、リュウガに課せられた使命だったのだ。事態を飲み込み、あわてて逃げ出そうとする拳王軍兵だったが、もはや彼らに逃げ場は残されていなかった。既にリュウガは、自らの軍団に村を包囲させていたのである。時代の統治を妨げる愚かな兵たちを、リュウガの拳は容赦なく切り裂いていった。そしてリュウガは、再び己とケンシロウが出会い、戦う日が来ることを予言し、その村を後にしたのだった。

 リュウガの居城へと訪れた拳王。城の中でその拳王を待っていたのは、威風堂々と玉座に腰掛けるリュウガの姿であった。その玉座へ向け、ゆっくりと黒王を歩ませる拳王に、恐怖の顔を浮かべる兵士達。彼らは、次々と拳王支配下の領村を奪うリュウガの行動を、拳王への反逆の証だ思っていたのだ。しかし、それは間違っていた。玉座の横で、今にも刀を抜かんとしていた副官・ガロウを制したリュウガは、華麗に跳躍し、その玉座を拳王へと明渡した。リュウガに謀反の意思など一片も無かった。だがリュウガは、あえてその心中は部下に語っていなかったのである。しかし、その天狼の心中を読めずにいたのは拳王とて同じであった。責任を果たしたリュウガが、褒美として望んだもの、それはケンシロウとの戦いであった。リュウガの宿星、天狼の星は、この時代に何を見るのか・・・
放映日:86年5月8日


[漫画版との違い]
・リュウガがサザンクロスでユリアの墓を参るシーン追加
・原作で拳王が帰ってくるのは大男が囲いの中で女を追いまわす遊びをしている村だが、アニメではただ拳王軍が略奪をしていた村。前記の村は次話に登場するが、現れるのは拳王でなくケンシロウ。
・ハンマー投げされた長老が、原作より若い
・現れたリュウガを、アビダが拳王と勘違いしない

・蹴られたゴンズで新記録の後、その後また蹴られたアビダ配下の男二人が更にその記録を塗り替えるシーン追加
・アビダがケンにトンファーで襲いかかるが、叩き落とされてしまうというシーン追加
・残ったアビダ配下を全てリュウガが葬るというシーン追加
・ガロウがリュウガの副官として登場


・サキ再登場
正直、アニメ北斗ファンにとってみたら今回はサキの再登場だけで大満足です。どんなアニメでもアニメオリジナルのキャラって扱いが小さかったり一話で忘れられたりするもんだけど(原作と矛盾したりするから)、いやよく再登場してくれたって感じ。なんか知人が街角でインタビューうけてるのを偶然テレビで見たときのような衝撃ですた。
ところで、ユリアの墓の下に埋まってるのってあの人形?
・変な顔



ラストのシーンでリュウガがモノホンの狼にモーフィングしますねんけど・・・なんか途中ものすごい顔になってます。


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