
岩山へと訪れたケン達は、廃墟の側に立てられた4つの墓を目にした。その右側2つの墓前に手を合わせるトキの姿を見て、リンはそれがトキの両親の墓であることを理解した。この地はトキの故郷。ここで生まれ、ここで育ち、そして死ぬときもまたこの地の中へ。その4つの墓の一番左が、トキの入るべき墓であった。そして残るもう一つの墓・・・トキと両親の墓に挟まれるようにして建つその墓について問われたトキは、それが自らの実の兄が入るべき墓であることを告げた。意味深げなそのトキの台詞に、何かを思慮するケン。しかしその時、運命の時を告げる足音は、もう彼等の直ぐ側にまで来ていた。この先の道でバットがみたもの、それは巨大な馬の足跡であった。
日が高くなっても、ラオウは登って来なかった。獅子の子とはなかなかおらぬものよ。未だ未熟と判断したラオウに見切りをつけ、立ち去ろうとするリュウケン。しかしその時、ついにラオウが崖の終わりへと手を掛けた。残る全ての力を込めて、その身を崖の上へと引き上げるラオウ。その鬼気迫るラオウの姿を見たリュウケンは驚愕した。ラオウの右手には、気絶したトキの体が抱えられていたのだ。その恐るべき子供は、トキを抱えたまま、片手で崖を登りきったのである。弟と一緒でなくては養子にいかぬ!トキの面倒は俺が見る!共に強くなろうと約束した弟を置き去りにすることなど、ラオウには出来なかったのである。だが、もはやその体力は限界を超えていた。気を失い、再びその身を崖下へと転落させるラオウ。しかしそのラオウの気迫は、リュウケンの要求をも覆してしまっていた。二人の手を掴み、落下を防いだリュウケン。この時、既にリュウケンの眼は、想像を越えるであろうラオウの成長を見ていた。
ある日の事、トキが川で洗った洗濯物の一つを、ペットの鳥・ココが咥えて持って行ってしまった。ココを追い、草原へと入ったトキが見たもの、それは、ボウガンの矢に貫かれたココの姿であった。犯人は、近くで狩をしていた大男だった。丁度いい的だったから。自らが撃った理由をそう語り、無慈悲にもココの死骸を足蹴にする狩人。その行為は、トキを生まれて初めて本気で怒らせる事になってしまった。男の足を思い切り殴打したトキは、続け様に強烈な蹴りを横っ面へと叩き込む。男の戦意が無くなっても、トキは止まらなかった。馬乗りになり、渾身の力で男の顔面を殴り続けるトキ。やがてその拳は駆けつけたリュウケンによって止められたが、その事件は、その後のトキの人生をも大きく変える事になった。トキの中にも隠されていた、恐るべき拳才。お前も北斗神拳を身につけたいのか。そのリュウケンの問いかけに、トキは迷うことなく頷いた。一子相伝の宿命・・・いずれ兄弟どちらかが拳を封じられることになってもかまわない。トキにその決断をさせた理由はたった一つ、兄を超えたいという一途な願いだった。憧れから目標へ。そんな、自らと同じ熱き血流れる弟に、ラオウは言った。俺が道を誤ったとき。その時はお前の手で俺の拳を封じてくれと。
宿命の戦いに幕を下ろさんと、渾身の力を込めた手刀を振り下ろすラオウ。しかし、トキはその拳を交わさなかった。突き上げた両手を十字に組み、トキはその剛拳を受け止めたのである。それは正しく、兄ラオウと同じ剛の拳であった。兄の全てを目指したトキ。その体の中に流れるラオウと同じ血が、トキに剛の拳をも会得させていたのだった。| [漫画版との違い] ・原作で岩に刻まれていたのは背比べの跡だが、アニメでは修行の跡(拳痕) ・原作でトキの足にのったのは巨木だが、アニメでは岩に。 ・犬のココが鳥(オウム?)にかわっている ・最初の攻防後、原作ではラオウは左手から出血するが、アニメでは無し ・狩人を殴っているトキは、原作では泣いているが、アニメでは泣かず ・最初にトキが当てた拳は、原作では先に仕掛けてだが、アニメではカウンターで当てる ・崖下に落ちたケンをトキが救うという回想シーンが削除 |
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