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[第70話]
もう一つの北斗神拳! 
ラオウを闇に葬り去れ!!


 ラオウが来る。迫り来る運命の時に備えるコウリュウは、ゼンギョウにトキを連れてくるよう命じた。そして己の息子であるアウス、ゼウスに対しては、自らの身に何かがあったときには山を降りるよう示唆した。お前達まで北斗の宿命に巻き込みたくは無い。北斗の掟をかけたこの戦いの果てに待つのは、死の決着であることを、コウリュウは悟っていた。

 下山するゼンギョウが枯れ木の林に差し掛かったとき、霧の向こうから現れたのは拳王であった。既にラオウはこのコウリュウの居る山にまで来ていたのだ。木の陰に身を隠し、拳王をやり過ごしたゼンギョウは、主であるコウリュウの無事を祈り、先を急ぐが・・・

 薄暗い洞穴の最深部で、無言に木像を削り続けるコウリュウ。その背に強い気配を感じたコウリュウは、手を止め、ゆっくりと背後の男へと目を見やった。世紀末覇者拳王。悠然と姿を現したその男は、開口一番、自分が目の前の老人をを殺しに来た事を告げた。伝承者争いに敗れたこの北斗の男二人の戦いもまた、彼等の宿命であった。自らの傷を癒すため。哀しき男の拳を封ずるため。互いの思いを交錯させた二人の戦いが始まる・・・

 聖帝十字陵の近くに作られたキャンプでは、トキが子供の治療を行っていた。うなされるケイの胸をトキが軽く突くと、一瞬にしてケイの病気は回復。笑顔で遊びに行った息子の姿に、母親達も笑顔を浮かべ、そしてそのお礼にと渡したリンゴは、リン達の顔にも笑顔を運んだ。この子達とずっと旅を続けたい・・・人々の笑顔に心の底からそう思うトキであったが、安息の終わりを告げる日はもうそこまで来ていた。封じねばならないラオウの拳。宿命が、トキを拳士として生きる道へと駆り立てていた。

 リュウケンと龍虎並び称された男、コウリュウ。リュウケンよりも強かったといわれるその拳は、闘気、肉体共に衰えを見せてはいなかった。やはり傷の回復をはかる相手は、コウリュウを置いて他に無し。目の前に立つ男の強さに、喜びすら覚えるラオウ。しかし、コウリュウとて負けるわけにはいかなかった。この洞窟の中に眠る、伝承者争い敗れた男たちの魂。北斗の掟のため、ラオウの魂もまたここに供養することが、コウリュウに課せられた使命であった。ぶつかり合う二つの剛拳。譲らぬ激しい攻防の中、互いの強さを認め合う二人であったが、ラオウの底知れぬ力は、コウリュウに勝負を急がせてしまった。北斗神拳奥義、七星抹殺。その両者必死の相討ちの拳で、一気にカタをつけんとするコウリュウ。だが、そのコウリュウの全力は、逆にラオウの闘争心を加速させる結果となってしまった。放たれる剛拳。吹き飛ぶコウリュウの両手。あとはもう一方的だった。続け様に繰り出された拳の嵐を、コウリュウは為す術無く喰らうことしか出来なかった。鮮血にまみれ、倒れるコウリュウ。その無残に敗れ去ったコウリュウの姿は、拳王の剛拳の完全復活を表意味していた。伝承者として名に恥じぬ力を持つ、ケンシロウ、トキ、そしてラオウ。その三人を同じ時代に産んだ神の悪戯に無念すら覚えつつ、コウリュウは静かにその身を横たえた。転がっていた木像をその遺体の横へ添え立て、その場を後にするラオウ。皮肉にも、伝承者争いに敗れた者達の最後を飾ったのは、彼らを今まで供養し続けてきたコウリュウ自身の魂となったのであった。

 洞窟から出たラオウを襲ったのは、頭上から降り注ぐ大量の岩だった。コウリュウの息子、アウスとゼウスが、洞窟の出口に罠を仕掛けていたのである。見事ラオウを生き埋めにし、喜ぶ二人。だが、それしきの事でラオウが死ぬはずが無かった。覆う岩を吹き飛ばし、悠然と二人の前に立つラオウ。アウス達も、なんとか父の仇をとらんと立ち向かうが、それはあまりにも無謀すぎた。殴りつけた鉄棍棒を、肉体の硬さだけでひん曲げられた二人は、あっという間に首を掴まれてしまう。愚かにも自らに挑んできた二人の首を、ラオウは徐々に締め上げてゆくが・・・

 バギーに乗って再び旅へと出たケン達の前に、ゼンギョウが姿を現した。ラオウの剛拳復活が近いこと、そしてそのラオウが今コウリュウの元に居ることを聞かされたトキは、早速その場所へ赴かんとする。だが、それを阻んだのは病であった。突如襲ってきた身の痛みが、トキに片膝をつかせたのだ。身を起こし、再び歩を進めようとするトキだったが、ケンにはそれを黙って見過ごすことなど出来なかった。病んだ体ではラオウには勝てない。瞳に己が思いを込め、トキの行く手を遮るケン。そんなケンに、トキは自らの拳が蝕まれているかどうか判断してもらうことを決めた。そのためにトキが選んだ方法、それは己が拳を直接ケンシロウに見てもらうことであった。北斗天帰掌。二人がとったその構えは、例え誤って相手の拳に倒れようとも、悔いを残さず天に帰る事の誓いの儀礼であった。それは、今から行われる二人の戦いが、命をかけた真剣勝負であることを意味していた。集約する闘気。ぶつかり合う拳。そして二人の体が激しく交錯する。結果は、相討ちであった。互いの胸に残された同じ拳痕が、二人の拳が互角であることを意味していた。自らに課せられた、ラオウと戦わねばならぬ宿命。それが、未だ病んだトキの体を突き動かしていた。しかしトキは、魂だけはケンシロウに残し、そしてその肉体は、ラオウとの死闘の中に捨てることを決めていた。

 アウス、ゼウス。彼等二人が実の兄弟である事を知ったラオウは、なぜか二人を解放した。兄弟・・・その何気ない言葉が、ラオウの中にある記憶を呼び起こしていた。草原をかける自分と、それを呼ぶ弟の声。兄弟間に生まれた宿命の記憶が、ラオウに理由の無い気まぐれを起こさせたのだった。同じ道に進めば同じ宿命を背負う。兄弟ならば違う道を進むがよい。ラオウがアウス達に投げかれたその言葉は、まるで幼き日の自分への言葉のようであった。

 北斗神拳伝承者として北斗の掟を守る。その自らの宿命を突きつけ、なんとかトキの闘いを止めようとするケン。だが、トキは考えを変えなかった。ラオウとトキ。その二人の間には、北斗の歴史とは関係のない、二人だけが知る宿命があったのだ。二人が同じ日にリュウケンの養子になり、北斗神拳の道に踏み込んだその日から、彼等の宿命は始まっていたのだった。


放映日:86年4月3日


[漫画版との違い]
・コウリュウがジュウケイを使いに出したりアウス達に山を降りるよう言ったりするシーン追加
・ゼンギョウが山でラオウとニアミスするシーン追加
・原作のケイは屋内で治療を受けるが、アニメでは屋外。またアニメでは眠らず、完治後友達と遊びに行く。
・ケイの親からお礼のりんごを受け取るシーン追加
・原作でコウリュウの手刀が破壊したのは地面だが、アニメでは遠くの壁
・原作のアウス達はラオウと戦うのは、洞窟の出口付近だが、アニメではラオウが洞窟外に出てから。
・原作のゼンギョウはリン達に導かれて来るが、アニメでは走るバギーの前に飛び出してきて接触してくる。
・アウス達が罠でラオウを生き埋めにするシーン追加
・アウスとゼウスが兄弟だと知ったラオウが、弟との思い出を少し思い出すシーン追加


・どっちが兄?
ゼウスとアウスはどっちがどっちでどっちが兄なんだよわかんねーよ殺すぞ、という人も多いかとおもわれます。ではお答えしましょう。髪の長いほうがゼウスで、こっちが兄です。以上。
・折角きたのに
コウリュウのいいつけどおりにトキのところまでやってきた忍者なゼンギョウさん(カコイイ!)ですが、結局彼は何しに来たんでしょうか?普通に考えたらトキとかケンをコウリュウの所に案内するために来たんだと思うのだが・・・行ってないしねぇ。実際トキとか一度向かいかけてるのに最終的には行ってないんだよなあ。焚き火の前でポージングしてる暇があるんなら行ってあげろよと思う。
・鉄パイプが曲がったのは
拳王様の肉体が凄いんで無くてアウスとゼウスの力が凄かったからだよね
と一応基本どおりツッこんでみる


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