TOP


[第52話]
南斗六聖拳ユダ!
俺は誰よりも美しい!!


 眼下に広がる街並を優雅に眺めるユダ。そこへ現れたのは、ユダの副官・ダガールであった。拳王がまだ己の居城に戻らぬことを伝え、今が謀反の好機であると促すダガール。しかしユダは安易に決断を下すことはしなかった。拳王の強さを知るユダは、うかつな行動に出ることは死を意味することを知っていたのだ。とその時、ユダはある異変に気がついた。おもむろに傍に立っていたひとりの女の髪を鷲掴みにし、怒りの表情を浮かべるユダ。女が断りもなく変えたその髪型が、ユダの気に障ったのである。完璧に美しいものしか認めぬユダにとって、己の好みに沿わぬその女はもはやこの場に存在してはならぬ者であった。玉座の間から放り出された女は、ユダの部下達に運ばれ、砂漠へと投げ捨てられたのであった。

 過去にユダとマミヤの間に何があったのか。レイに問い詰められたマミヤの村の長老は、覚悟を決め、全てを話すことを決めた。その忌わしき出来事を・・・

 数年前、マミヤは20歳の誕生日を迎えていた。マミヤのはちきれんばかりの美しさに、村人達も皆彼女の明るい未来を信ぜずにはいられなかった。しかしその未来は直ぐに血の色に変えられた。突如武装した一団が、マミヤに向かって突撃してきたのである。村人達を虐殺し、一瞬にしてマミヤを捕らえた一団は、己達の首領を呼び寄せた。首領の名はユダといった。マミヤが己を愛するに十分な美しさがあると判断したユダは、早速マミヤを抱え上げて連れ去ろうとする。マミヤの両親はそれを止めようとユダの前へと立ちはだかったが、それがマミヤが見た父と母の最後の姿であった。ユダの南斗紅鶴拳に切り刻まれ、二人は一瞬にして死亡。これで未練も残るまい。非道な言葉を吐いてマミヤを連れ去ったユダを、村人達はただ呆然と見送ることしか出来なかった。

 そして数日後、マミヤは突如村へと戻ってきた。その傷だらけの姿が、ユダの下で味わった地獄のような日々を表していた。そして、その日以来、マミヤは女としての生き方を捨てたのであった。


 マミヤとリンは地下の水浴び場に降りていた。己の腕が男のように固くなってしまったことを、皮肉に笑うマミヤ。マミヤの心の中に刻まれた傷は、マミヤが女として生きることを許さなかったのだ。だがその時、水浴び場に降りてきたレイはマミヤに言った。お前は女だ。ユダは俺が倒してやる、と。しかし愛されることを放棄したマミヤにとって、レイの愛は重すぎた。それに耐え切れなくなったマミヤには、その場を逃げ出すことしかできなかった。

 マミヤと入れ違いに降りてきたケンに、レイは己の決心を伝えた。打倒ユダ。レイはユダを知っていた。シン、レイのほかに南斗聖拳を極めた6人の男達、南斗六星拳。ユダもその六聖拳の一人だったのだ。マミヤに女としての生き方を取り戻すため。レイの最後の戦いが始まった。

 残された時間を考え、ケンとレイの二人は早速ユダの元へと出発。時折訪れる激痛に膝をついても、マミヤの想うレイの気持ちは、何度でもその身を立ち上がらせる。一方ユダの城の前では、ユダの部下達による暴虐行為が行われていた。村人に、舌を使って靴をなめろと強要するユダの部下。だがその時、男の背後からケンとレイが登場。男の頭を鷲掴みにして持ち上げたケンは、ユダの城の場所を質問。一瞬で自分達との格の違いを悟ったユダの部下達は、ためらうことなく背後の城を指差した。持ち上げた男を激しく壁へと投げ捨て、ケン達は城の中へ。

 襲い掛かってくる警護の者達を倒しながら、城内を進むケンとレイ。ユダの部屋の前にいた二人も簡単に撃退したが、二人の放った鉄パイプ攻撃を受け止めた時、ケンの左腕に巻かれた包帯の下から血がほとばしった。ラオウにやられた傷がまだ完治していなかったのである。そして、遂にユダの待つ部屋の前へと立つケン達。しかしその扉の中から現れたのは、副官ダガールであった。そして、ダガールにエスコートされて入ったその部屋の中はもぬけの殻であった。ユダは既に城を出ていた。レイの命が後二日だということ、そしてそのレイが自分の城に向かってきていることを知っていたユダは、戦わずしてレイに勝利する方法をとったのである。妖星、またの名を裏切りの星と呼ばれる宿星を持つユダの知略であった。立ち上がる気力をも失ったレイを嘲笑うダガール。そのダガールを戒めようと歩を進めるケンであったが、ダガールの顔には余裕の笑みが浮かんでいた。ケンの左腕の傷の事を知っていたのである。しかしケンは、貴様を倒すのは傷ついた左手で十分と逆に相手を挑発。冗談と食って掛かって攻撃を仕掛けるダガールであったが、その予告は見事に実行された。強烈な裏拳を顔面に叩き込まれた後、足を踏まれての往復ビンタ。惨めに倒れたダガールに待っていたのは、地獄の激痛であった。頸中から下扶突の秘孔を突かれたダガールは、レイと同じ全身の痛みをもつ体にされてしまったのだ。秘孔の解除を条件に聞き出したユダの行き先は、ブルダンの町と呼ばれる場所であった。残り二日。わずかな可能性に賭け、二人はブルダンの町へと出発。二人の去った城には、平気で約束を破られたダガールの絶叫がこだましていた・・・

放映日:85年11月21日


[漫画版との違い]
・ユダに追い出された女は、原作では額の傷がバレたのが原因だったが、アニメでは勝手に髪形を変えたから。また原作ではその後ユダの部下達に蹂躙されたようだが、アニメでは砂漠に捨てられただけ
・原作ではマミヤがメディスンシティーで取ってきた薬は即死の薬だけだったが、アニメでは普通の薬も取ってきており、既にレイはそれを飲んでいるらしい。効果はなし。
・バットがペルに飯食わして、たくましくなるよう教えるシーン
・マミヤの誕生日のシーンにコウが映る
・水浴び場に来たレイからマミヤが逃げた時、階段の途中でケンとぶつかるシーン追加
・ケンとレイが、ユダの部屋の前に行くまでにユダの部下達と戦うシーン追加
・靴を磨くよう言われた男が、メガネを親分に踏み潰されるシーン追加

・ユダの部屋の門番の一人がガムを噛んでいない
・この時点でのレイの命は、原作では残り一日だが、アニメでは二日に。
・ブルータウンの町がブルダンの町に変更


・電車で120円
アニメではダガールと戦うシーンで、レイの命が2日残されている。原作では1日だ。正直言ってこの時点で残り二日というのは時間的に厳しい。だってマミヤがメディスンシティーに行った日が既に「残り二日」の日なんだから、ケン達はこの日にメディスンシティーまで往復し、さらにユダのところまで行っているのだ。徒歩で。しかも日が暮れる前に。メディスンもユダさん家も隣町か!?
・ダガール
とにかくアニメの彼は五月蝿い。
ビンタをされている時の
「んなあがががごごどげげげげげばっがっばっごっがっぎょっ」と、
頸中から下扶突を突かれた後の

「あが!ぐぐ!げげ!ごごどでばーぢーぐーっ!」
と、
次話でユダに殺された時の

「ががががががかがぎぎぎぎぎぎぐぐぐぐけげげげ
ごごごごおおっお、おおっっっあああ〜」
は、ギャグ的要素のを除けばアニメ北斗史上最高の断末魔であろう。彼の声を当てている屋良さんは、北斗では一番メジャーなキャラでこいつとかカイゼルとかくらいしかやらせてもらえなかったのだが、なんかこの激しい演技に静かな抵抗の心を感じるのは私だけだろうか。


第51話へ≪ ≫第53話へ