TOP


[第47話]
南斗水鳥拳死の舞! 
愛のためオレの命くれてやろう!!


 ラオウと闘ってはいけない。拳王こと己の兄・ラオウの強さを知るケンは、レイがラオウには敵わぬことを知っていた。自分が着くまでにレイがやられていない事を祈るケンだが・・・

 制止するリンの声を振り切り、拳王に戦いを挑むレイ。そんなレイに対して拳王は、北斗七星の脇に輝く蒼星を見たことがあるかを訪ねてきた。死兆星―――。その星を見たものにはその年の内に死が訪れる。そしてそれは、己に殺される運命にあることを意味する。拳王はそう解釈していたのである。そして今、目の前にいるこの男、南斗水鳥拳の伝承者も、同じ運命を辿ることを拳王は確信した。レイの返答はYESだった。

 愛馬・黒王号に跨ったまま、レイにかかってくるよう促す拳王。おまえでは己を馬から下ろすことすら出来ない。拳王は、レイの実力をそう判断したのだ。舐めきったその態度に怒ったレイは、馬ごと切り裂かんとばかりに拳王へ跳躍。だがレイの体は、拳王の間合いに入ることすら出来ずに吹っ飛ばされてしまった。レイが見たもの、それは己に向かって放たれた拳王の無数の拳であった。だが実際は、拳王は手綱を握ったままピクリとも動いてはいなかった。拳王の纏った闘気・・・レイが見た拳は、その凄まじい拳王の闘気が作り出した幻影だったのである。しかし、その実力差を目にしても、レイの拳王への挑戦は終らなかった。すさまじい構えからレイが繰り出した技、それは、己の命を捨て相手を葬る相打ち狙いの究極奥義、断己相殺拳であった。

 繰り出されるラオウの拳。その剛拳を喰らいながらも攻撃の手を休ませることなく突進するレイ。結果、レイは体から血を吹き出して死んだが、ラオウもまた水鳥拳によって体を切断された・・・。ラオウが一瞬の間に見たビジョンの中には、見事相打ちを果たしたレイの姿があった。しかしそのラオウの一瞬のビジョンは、レイの究極奥義を破る策をも見抜いていた。おもむろにマントを脱ぎ、上空に放り投げるラオウ。巨大なそのマントは、レイの視界を、そして動きをも奪うかのようにレイの体を包み込んだ。マントが作り出した一瞬の隙、それは、ラオウが勝負を決めるには十分すぎる時間であった。マントに指を突き立てるラオウ。その向こうから発せられる悲痛な叫び。天にかざされたラオウの腕の先には、意識を失ったレイの体が力なくぶらさがっていた・・・

 村の入り口にいた見張りを瞬殺して、遂にマミヤの村へと帰ってきたケン。だがそこでケンが見たものは、拳王に秘孔を突かれた強敵・レイの凄絶なる死に様であった。お前のように情に生きる人間は必ずこういう運命をたどる。ケンの未来の姿を暗示するかのように、ラオウはレイの遺体をケンへと放った。ケンに借りを返すために、敵わぬ勝負を挑んだレイ。義に生きる男の死にこたえるには、ラオウを倒すしかない・・・怒りを胸にラオウへと歩を踏み出そうとするケン。しかし、バットとリンはそれを制止した。あのレイが触れることも出来ずに負けた現実を目撃した2人も、流石に今度ばかりはケンの敗北を予感せずにはいられなかったのである。これが死に行く者の顔に見えるか。自信に満ちた笑顔でリンを安心させたケンは、遂に長兄・ラオウと対峙。だがそんなケンに、拳王は再び死兆星が見えるかどうかの質問を投げかけた。しかし、ケンの返答はNOであった。まだケンシロウは己に殺される運命に無い。ラオウはそう判断したのだ。全く興味を無くしてしまったかのように、クルリとケンに背を向け、村を去ろうとするラオウ。もちろんここでラオウを帰すわけにはいかないケンは、己と戦うようラオウを挑発。しかし図に乗るなとばかりにラオウが放った闘気の波動は、ケンを遥か後方にまで押し戻した。ラオウのオーラは、ケンの知る頃のラオウのそれとくらべ、遥かに巨大になっていたのである。しかし、ケンシロウもまたかつてのケンではなかった。ラオウの闘気に臆することなく、自らもオーラを爆発させるケン。その闘気は、普段は冷静な黒王号をかつてないほどに脅えさせた。死をかけた強敵達との戦いは、何時の間にかケンの体にもオーラを纏わせていたのだった。予期せぬケンシロウの成長。それは消えかけていたラオウの戦気をかきたてる結果となった。

 莫大な闘気を放出しながら対峙する二人。その二人の闘気のぶつかりあいは、巨大な気流を巻き起こした。そして次の瞬間、巨大な竜巻と共に2人の姿は消失。闘気の衝突によって起きた気流が、2人の体を遥か上空にまで運んでいたのである。宙にいるとは思えぬ機敏な動きで、ラオウに高速の蹴りを放つケン。難なくそれをすべて払いのけたラオウは、攻守逆転とばかりに激しい連撃を放つ。と、その時、一筋の光がラオウの足元に飛来し、その瞬間ラオウの動きが止まった。その隙をつき、ケンは対騎兵用の奥義、北斗七死騎兵斬を発動。空中で交錯し、着地した二人の勝負の結果は、ラオウの顔に傷をつけたケンシロウの勝利と相成った。馬上では俺には勝てない。そう言って下馬を進めるケンだが、ラオウはそのケンの思い上がりを一笑に伏した。何者かがこの矢を放たなければ・・・そう言ってラオウが見せた右足には、一本の矢が深々と突き刺さっていた。宙でラオウが連撃を放っていたとき、何者かがラオウの足を射抜いていたのである。矢を投げ返し、犯人に姿を現すよう叫ぶラオウ。舞い上がる砂埃の向こうから姿を現した者、それは、先刻秘孔を突かれて死んだと思われていたレイであった。

 レイが生きていたと言う事実を知り、安堵する一同。だがその歓喜も、ラオウの次の言葉で打ち消された。レイの命はあと三日・・・秘孔新血愁を突かれたレイは、三日後に全身から血を噴き流して死ぬというのである。己に逆らった武芸者達。彼等を直ぐ殺さずに数日の命を与えれば、その武芸者は死までの時間を苦しみ、脅え続ける。その恐怖がやがて伝説となり、自分の名を絶大にする・・・。それがラオウの考えた、拳王伝説のプランだったのだ。他人の命を己の野望のために弄ぶラオウに、更に怒りを増幅させるケン。だがレイはその拳を止めた。今のケンでは絶対にラオウには勝てない。レイは、ラオウとの戦いから、ケンとラオウの決定的な違い、そしてその差を見抜いていたのである。レイの言葉の意味を理解しかね困惑するケン。だが次の瞬間、その決定的な差を証明する痛みがケンの体を襲った。先ほどの攻防の際、ケンはラオウの拳を胸に喰らっていたのである。レイが矢を放たねば死んでいた・・・そのラオウの言葉を、ケンの胸に浮き上がった拳痕が証明していた。予定を変更し、今この場でケンシロウを屠ることを決めたラオウの瞳に、殺意の色が浮かぶ。だがうずくまるケンの瞳からも、まだ戦意は失われてはいなかった。

放映日:85年10月17日


[漫画版との違い]
・ラオウが足に刺さった矢を、放った者(レイ)の方へと投げ返すシーン追加
・ケンとラオウの闘気の衝突の後、竜巻が発生するシーン追加

・原作ではケンが到着した後にレイがやられた経緯が判明したが、アニメでは到着するまでに全部公開


・ただおもふ
この回の「レイがやられてるところにケンが到着するシーン」っていうのが一番自分の中で「北斗の拳」ってイメージがあります。全員揃ったーーーーーー!!って感じがして、好き。っていうかこんだけ主要キャラが集うシーンって後はシュウが死ぬとこくらいしかないからねぇ。
・すごいぞレイ
アニメでは断己相殺拳を喰らった場合の未来を拳王様が予想します。それによると、どうやらあのまま拳の打ち合いをしていれば、レイの目論見どおり相打ちになっていた模様です。すごい!すごいぞ!つまりは100%勝ち目が無いケンよりは勝てる可能性があったってことだ!同じ一撃でやられたとはいえ「そんなやわな拳ではこの体に傷一つつけることはできぬ」ヒューイとは違うんだ!!ついでにいうと、ファルコの「拳王を倒すことは可能」というのも、この程度かも。マント一つで防がれてしまう程度の作戦だったんじゃないかと。


第46話へ≪ ≫第48話へ