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[第45話]
死神におびえる者よ! 
リンの熱き心の叫びを聞け!!


 不意を突かれたマミヤの村は、あっという間に拳王侵攻隊に制圧されてしまった。彼等に捕まった村人達は皆広場へと集められたが、その中にリンとアイリの姿はなかった。2人は村の外れの小屋の中に身を隠していたのだ。しかし遂に拳王軍の手は2人のいる小屋にまで伸びてきた。捜索に来た男は力強く小屋の扉を開けるが、中はもぬけの殻。リン達の隠れていた部屋は、男が扉を開けた部屋の隣だったのである。しかし安心したのも束の間、男は今度はリン達の居る部屋へ入ろうと、施錠された扉に体当たりを始めた。男の強烈な体当たりによって鍵はどんどんひん曲がっていく。もう駄目か。そう2人が思ったその時、小屋の裏口の扉が開いた。危機に感付くいた村の老人達が、2人を安全な場所に誘導しに来たのだ。拳王軍は村に火をつけた。ここももう危ない。そういって2人が部屋を連れ出されたのは、拳王軍の男が鍵を壊して入ってくるほんの一瞬前であった。

 なんとか危機を脱し、安全な場所を求めて歩き出すリン達。しかし、その行く手にも既に侵攻隊達の手が回っていた。行く手を阻まれ、さらにアイリは巨大な男の腕の中にとらわれてしまう。だが老人達は臆することなく、果敢に農具を振りかざして悪党の腕を刺し、アイリを救い出した。ここはまかせて今の内に逃げろ!その老人達の言葉にとまどうリン。しかし彼等の命を懸けた思いを酌み取ったリンは、心の中で老人達に何度も詫びながら、背を向けて走り出した。こだまする老人の叫び声が、リンの心を軋ませ、涙を呼んだ。

 その頃、奇跡的に村を抜け出したバットは、荒野を彷徨っていた。背に矢を刺したまま、どこにいるかも解らないケン達を探すため、バットは気力でその歩を進ませる・・・

 車が見付からずに悩むケン達は、諦めて徒歩で村へ向かうことを決意。だがその旅立ちを邪魔するかのように現れたのは、拳王機動バイク隊と名乗る連中であった。相手が誰とも知らず、呑気にマミヤにツーリングをしないかとナンパし始めるバイク隊。だが会話の中で、病人の名がトキであることを知ったバイク隊は、やっと己たちの相手している相手がケンシロウであることを悟った。病気のトキだけでも倒せれば大手柄だと考え、半ばヤケクソでケン達を襲撃をかけるバイク隊。だがケンの強さは、その刃をトキへ届かせることなくバイク隊を全滅させてしまった。急速に広がる拳王の勢力を思い不安を覚えるケン。とその時、その予感を象徴するかのようにケンの肩当てが砕け散った。

 徒歩にて村へと歩き始めたケン達は、道中とてつもなく大きい馬の蹄を見つけた。これほど大きい馬に乗るのは拳王しかいない。そう確信したケンとトキは、身近に迫る凶星の存在を肌で感じ始めていた。

 レイが廃墟と化した遊園地に通りかかったとき、砂塵の向こうから現れたのは、重傷を負ったバットであった。力尽きて倒れたバットを急いで抱き起こしたレイは、マミヤの村が既に拳王侵攻隊の手に落ちたという事実を知る。

 村では、拳王侵攻隊隊長ガロン指揮の下、捕らえられた人々に拳王への忠誠を誓わせるための儀式が始められようとしていた。彼等が命じた忠誠の証、それは、灼熱の大筒に体を押し当て、その身に拳王軍のマークを焼き付けるというものあった。最初にそれを命じられた村人は、断固としてその焼印を拒否。しかし、忠誠を拒んだ者に対する罰も、彼等はちゃんと用意していた。炎に熱せられた巨大な鉄板の上で、業火に身を踊らす「灼熱のダンス」が、彼等を待っていたのだ。問答無用にその鉄板へと運ばれ、文字通りその熱さに身を躍らせる男。忠誠を誓い、なんとかその命を救われた男だったが、彼のその姿は、村人達から抵抗する意思を奪うには十分であった。忠誠か死か、選ぶが良い。そのガロンの言葉に、村人達の悲痛な叫びがこだましていた。

 リンとアイリの二人は、とある袋小路の奥に潜んでいた。弱者は心を無くし、人形のように生きるしかない。かつて地獄を体験したアイリは、完全に戦う意志というものを失っていたのである。だがリンは、そんなアイリの気弱な心を一喝した。希望を捨ててはいけない。ケンやレイがきっと助けてくれる。決して諦めてはいけない・・・ケンに教えられた戦う勇気を、必死にアイリに伝えようとするリン。そのリンの励まし、そしてふがいない自分に対し、、アイリは涙を流さずにはいられなかった。だがその時、その僅かな希望も打ち砕くかのような声が響き渡った。遂に拳王軍兵がリン達の姿を発見したのである。だがその時、リンは咄嗟にそばにあった毛布でアイリの体を覆い隠した。、自分が犠牲になってでも、せめてアイリだけは拳王軍の手から逃れさせようとしたのだ。鉄パイプを振り回し、なんとか自分へと注意を逸らそうとするリン。その作戦は見事に成功したが、リンは拳王軍兵に強烈な張り手をくらい、そのまま広場のほうへと連れて行かれてしまった。幼いリンの大きな勇気を目にしたアイリの目には、再び涙が溢れていた。

 リンが広場へと連れてこられたのは、捕らえられた村人全員に忠誠の証が焼き付けられた頃であった。侵攻隊が強要する忠誠と死の選択に、激しい嫌悪感を覚えるリン。そしてリンは、誰しもが予想しなかった選択を選んだ。悪魔に忠誠を誓うくらいなら死ぬ。そう言って靴を脱ぎ捨てたリンは、まっすぐに炎の鉄板へとむけて歩き始めたのである。悪魔に屈した時、人は人でなくなる・・・そのケンの教えを信じるリンは、奴隷として生きるよりも死を選んだのだ。

 炎を目の前にし、臆するリンを、無理矢理鉄板の上に載せようとする拳王軍の男。だがその時、その鬼畜な男の顔に、何者かが手を添えた。男が死ぬ間際に見たもの、それは、怒りに打ち震えるレイの表情であった。レイの登場で安心し、力尽きてその場に崩れ落ちるリン。その身を抱きかかえてくれたレイに対しリンは、アイリが無事でいる事を報告した。リンは、自分の事よりもアイリの身を案じていたのだ。その気丈なリンの心に驚愕するレイ。だがそうはいっても、リンはまだ幼い子供であった。安堵したリンの目からは、我慢を続けていた大粒の涙が溢れ出していた。そして、そんなリンをぼろぼろに痛めつけた腐った男たちへの、レイの制裁が始まった。

放映日:85年9月26日


[漫画版との違い]
・老人達がリン達を小屋の裏口から逃がし、その後襲ってきた拳王軍二人と戦って時間を稼ぐシーン追加。
・拳王機動バイク隊とケン達とのやりとり追加
・リンが捕まるところが小屋の中から袋小路に変更
・リンに焼印をしようとしたのを止めた長老が、棒で殴打されるシーン追加
・原作では灼熱ダンスの人は死ぬが、アニメではギリギリで生還。水をかけられて助かる。


・みんなののりもの

拳王機動バイク隊ってバイクに乗って戦うわけじゃないのか・・・
しかしケン達も丁度乗り物探してたんだから、こいつらのバイク拝借したらいいのにねえ。となると、トキはきっとマミヤのケツにのるんだろうなあ。
バットもバギーで助けを求めに行ったら良かったと思うのだが。

・主従関係
今回までただのウザキャラだったリンが唯一輝いた回であり、カサンドラ編では完全に脇に追いやられたレイが主役となった回です。このレイが到着したタイミングも、やはり天帝の血とその守護星である南斗の関係からきたものなのですかねえ・・・


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