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[第33話]
ここが奇跡の村!
堕天使は舞い降りた!!


 1800年の長きに渡り受け継がれてきた一子相伝の秘拳・北斗神拳。男児に恵まれなかった先代リュウケンは、4人の男を養子として迎えた。長兄ラオウ、次兄トキ、三男ジャギ、そして末弟ケンシロウ・・・

 レイがその自ら調べ上げた北斗神拳に関する事を話していたとき、バットが歓声をあげて一同の元へケと駆け寄ってきた。旅の商人がケンシロウからの手紙を村へと届けてくれたのである。しかしそれは、伝承者争いにケリを付けるため、今しばらく旅を続けるとの知らせであった。またしばらくケンと会えない。ショックを受けたリンは、その時、密かにある決意をしていた・・・

 2人の兄のうちの一人、トキに会うために旅を続けるケン。そのケンが立ち寄った街で遭遇したのは、ヘイスタックとゲルツの巨漢二人の殴りあいであった。しかしケンは、我関せずとばかりに2人の間をすり抜け、店のカウンターに着席。こんな状況にもかかわらず、平気な顔でガソリンと食料を交換を要求してきたケンに対し、店のマスター・エラリーはただただ驚くばかりであった。とその時、ゲルツにぶっ飛ばされたヘイスタックが、バーのカウンターを滑って来た。その巨体を難なく片手で受けとめたケンは、助けてくれと言うヘイスタックの頼みを無視し、再びヘイスタックをゲルツの元へと押し返して喧嘩の続行を斡旋。なんとも肝の据わったその男に惚れたエラリーは、この喧嘩の原因をケンに語りはじめた。

 かつて触れるだけで怪我や病気を治していまうという救世主が現れた村、奇跡の村。喧嘩をしている大男の一人、ゲルツは、その村の生き残りだというのだ。触れるだけで・・・ケンが関心を持ったのは、その部分であった。ゲルツに接近したケンは、殴りかかってきたゲルツを軽く放り投げ、秘孔によってその動きを静止。ケンが不思議な力を持つ男だと知ったゲルツは、急におとなしくなり、己が知る奇跡の村の事を洗いざらい話し始めた。

 ゲルツの住んでいた村は、病気が蔓延し、死んだも同然だった。だが、突如村に現れた男は、触れるだけで村人達の病気を治し、村を蘇らた。その男の名はトキと言った。しかし一夜にしてトキは悪魔へと変身した。村人達を木人形とよび、人体実験を始め、次々と村人達を殺し始めたのだ。秘孔を突かれて生き残った者は人間以上の力を得ることができた。しかし彼らは、人間の心を持たぬケモノとなり果てたのであった。

 ゲルツも秘孔を突かれ、あと三日で死ぬと言われたのだという。そして、今日がその三日目であった。死を直前にし、自暴自棄になっていたのが、先ほどの喧嘩の理由だったのだ。助けてくれとは執拗にケンに助けを求めるゲルツ。しかしその時、無情にもその時間がやってきた。ケンの目の前で、苦悶の表情を浮かべつつ、ゲルツはその身を崩壊させたのであった。あの優しかったトキが・・・ケンには、目の前で起こったその事実を、信じることが出来なかった。

 その頃リンは、だった一人でケンを探す旅へと出ようとしていた。己のわがままを心の中で詫びながら、闇の中の荒野へと旅立つリン。そして主人の危機を悟ったぺルもまた、自らを繋ぐ綱を引きちぎり、主の後を追い荒野へと消えていった・・・

 夜―――、エラリーは自らの店に客として居るケンシロウに、夜の荒野に出ることを禁じた。奇跡の村の噂が立ち始めた頃から、夜の荒野にはケモノ達が現れるようになり、通りがかった者達は必ず彼等に無惨な殺され方をするというのだ。だがケンはトキの手がかりを探すため、噂のケモノたちと接触ることを決意。止めても無駄だろうと判断したエラリーは、旅立とうとするケンに、酒をプレゼントした。またあんたと話がしたい。いつか再会する事を誓い、旅立っていったケンの背を見ながら、エラリーはその友の無事を祈るのであった。

 荒野へとやってきたケンは、エラリーから貰った酒を飲みながら、核戦争前の優しかったトキとの想い出を振りかえっていた。人の体にはまだ現代科学では解明されていない神秘がある。自分は北斗神拳を殺人拳ではなく、一つの医学として活かしたい。己が得た北斗神拳の力を使って無償で人々の体の治療を行っていたトキは、嬉しそうにそう話していた。そのトキが悪魔に変わったとはやはり信じられない。自らの中に生まれた矛盾に頭を悩ませるケン。そしてその時、そのケンを影から見つめる3人の男がいた。彼等の目には人間とは思えぬ妖しい光が宿っていた・・・

 ジャギの悪夢によって目を覚ましたアイリは、横に寝ているはずのリンが居ないことに気が付いた。アイリは全員を起こしてリンの捜索に向かうが、村の中をいくら捜索してもその姿はなかった。数時間前にリンは、既に旅立ってしまっていたのだ。ケンからリンのことを頼まれたにもかかわらず、その約束を守れなかった事に対して悔いるレイ。一行は、早速バットのバギーに乗ってリンを探しに村を出るが・・・

 その頃リンは、強い砂嵐が吹き付ける荒野の中を歩いていた。疲労が限界を迎える中、必死でケンの名を叫びつつけるリン。だがその叫びは、吹きすさぶ風の中へと消えていった。過酷すぎる状況に耐えられず、遂にリンはその身を砂の上へと伏してしまうのだった。

 ケンを狙う3人の男は、村で噂のケモノ達であった。最初に襲いかかってきたのはカマキリ男とヘビ男。人間の動きを越えた超スピードをなんとか交わしたケンであったが、更に背後からは、超破壊力を得たクマ男、ゴーダが登場。ゴーダの攻撃力、ダメージを受けないヘビ男の軟体に苦戦するケン。更にヘビに巻き付かれ、動きを封じられてしまう。そのまま崖下へと叩き落されるケンであったが、空中戦で何とかヘビとカマキリを撃退。二人は崖下で、蟷螂の持っていた武器に体を貫かれ、絶命した。

 残されたゴーダは、秘術で得たという破壊力を活かしてケンシロウを攻撃。だが当然パワーだけでケンシロウに勝てる筈もなかった。放った左拳をあっさりかわされた上、顔面に靴の裏をペタリとつけられるゴーダ。怒って放った右拳も簡単に受け止められて握りつぶされ、再び放った左拳は五指烈弾にて再起不能にされてしまう。頭突きも楽々回避され、モヒカンの下に仕込んでいた刃で捨て身の突撃を敢行するが、カウンターで北斗双龍破を喰らい、勝負はついた。死を目前にしたゴーダから、男達をケモノへと変えた者の名を問うケン。しかし、やはりその口から漏らされた名前は、あの優しかったはずの兄、トキの名であった。

 3体のケモノがケンシロウに殺られたとの報は、すぐにトキの耳へと入れられた。しかし、それはトキにとっては吉報であった。ケンシロウはいい木人形になる・・・。無気味に笑うその顔に、昔の面影は何一つ無かった。

 リンを探し、砂嵐の中を進むバット達。しかし嵐は一行の視界を奪い、そしてリンを呼ぶ叫びもかき消してしまう。だが、その最悪の状況の中で奇跡的にリンを発見したのは、一足先に荒野へと飛び出したぺルであった。自らの主人を救うため、吹きすさぶ砂嵐に向かってぺルは、力の限り吠え続ける・・・
放映日:85年6月27日


[漫画版との違い]
・ケンがヘイスタックとゲルツの喧嘩の真下をくぐるシーン追加
・原作ではリンはずっと村に居るが、アニメではケンに会うために村を出て、砂嵐の中力尽きて倒れる。
・レイ、マミヤ、バットの3人がリンを探す旅に出るというイベント追加
・エラリーと親しくなって自己紹介をしたり酒をもらったりするシーン追加
・獣達とのバトル追加

・アミバの元へジャギがケンシロウにやられたという報が入れられるシーンは削除
・核戦争前にトキがケンに己の夢を語るシーン、原作ほどボロボロな所ではない


・秘孔
アニメだけでの話なのだが、核戦争前にトキがケンシロウに己の北斗神拳の使い密を語っているとき、こんな事を言っている。
「経絡秘孔は強く突けば肉体を内部から破壊する。逆に柔らかく押せば体の自然な治癒力を促進させる」
つまり一つの秘孔に2つの効果があるというわけだ。これをふまえて、経絡秘孔の数の話をしたい。経絡秘孔は
708個有る。そして一般的に言われている「ツボ」というものは、大体361〜365だと言われている。丁度経絡秘孔の数の半分くらいではないか?こういうことではないだろうか。360くらいのツボのほとんどに、トキの言う「優しく突けば」と「強く突けば」の効果が存在し、名前も異なっている。つまりツボ一つが秘孔二つ分なのだ。経絡秘孔というものは、針灸師等の知識にあるツボの位置にどういう強さで突くか(どのくらいの気の両を送るか)というものに過ぎないのである。そう、経絡秘孔の位置に関しては全て現代医学で究明されているのだ。ただし365を単純に倍にすれば730。708を22もオーバーしてしまう。これに関しては、「強く弱く似関係ない秘孔が幾つか存在する」と考えるしかない。つまり超特殊な秘孔が20くらいあるのだ。例を挙げると「司宝林」なんかが怪しい。「宗家の文字を解読するための秘孔」なんてどんなに突いても効果は変わらないような気がする。
ま、長々述べたけど仮説なのであんまり信じぬように。ただ、ツボの数は時代と共に増えている。指圧師等は660ものツボを効能によって使い分けているらしい。・・・まあ・・・聞かなかったことにしよう。
・リン
もうツッコむのも疲れたが、おまえが旅出ってケンに会ってどうなるのだと問いたい。本当にケンのためを思うなら、ちゃんと村で待ってレイの面子をたててやれよ!!おまえ、己の色欲のままに動いてるだけじゃねえか!!
・ゴーダ
知っている人は気が付くんだが、今回出ている熊男ゴーダは、読み切り北斗の拳に登場する「剛田」というキャラクターそのままです。ケンシロウ(読み切りの霞拳四郎)との戦いもほとんどそのまま再現されていて、かなり愉しめる。断末魔の「ゴ、ゴウダ〜」は最高。実は剛田の相方の矢崎も、ちょいとだけ蟷螂の化身との戦闘に引用されているんだが、これは相当両方をよく見比べぬとわからない。矢崎もかなりいい味だしてるからそのまま出しても良かったのに・・・


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