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[第31話]
地獄の鉄仮面!
北斗を名のる凶悪なる者よ!!


 ケンシロウの名を騙り、悪行の限りを続けるジャギ。たまたま目に付いた村人を「鼻や目や耳があるところが弟と似ている」という無茶苦茶な理由で殺害するというその異常さは、彼のケンシロウに対する尋常ではない憎悪の量を現していた。

 その時、ジャギは己の部下の荒々しい怒声を耳にした。病気の子供・マコとぶつかった部下の1人が、命を捨てて詫びろと騒ぎ立てていたのである。そのマコをかばう、弟のアキに、ジャギの部下は言った。お前の片足を差し出せば助けてやる、と。そのやりとりに興味をしめす事無く帰路につこうとするジャギであったが、アキがその無茶苦茶な交換条件に応じた途端、ジャキは表情を一変させた。そして、決定打となったのは、二人を助けようと割り込んできた老人の言葉だった。アキは本当に兄思いの、良くできた弟。それは、ジャキにとっての禁句というべき台詞だった。この世に兄より優れた弟など存在しない。それが、ケンを憎むジャギが生んだ信念だったのだ。髪の毛を引っ張るようにして吊り上げたアキに、己が信念を言い聞かせるジャギ。マコの頼みによって一度はアキを解放したジャギだったが、ジャギが思いついた非道な作戦は、2人の兄弟、そしてケンシロウを地獄に叩き落とすことになった・・・

 ジャギの街へと向けて砂漠を行くケンの目に、惨事が飛び込んできた。それは、足に巨大な石を繋がれ、延々と砂漠を歩かされいたアキの姿であった。誰の仕業だと問われたアキは、力無く「ケンシロウ」と返答。ケンは、己の名を語られたことより、ジャギのその非道さに怒りを増幅させるのだった。

 アキを抱えて村へとたどり着いたケンは、路端にあった壁の向こうからとてつもない殺気を察知した。だが、壊した壁の向こうにいたのは、アキの兄・マコであった。子供の物とは思えないその殺気に驚愕するケン。マコはジャギの突いた秘孔 頭芯命によって、ケンシロウを殺すためだけの殺人鬼へと変えられてしまっていたのだ。弱り切った体で必死に兄・マコに中止を呼びかけるアキ。その声によってマコの洗脳は少しずつ解け始めたが、何故かケンは突如両腕を開き、その胸目がけて矢を放てと言い出した。突然の行動に躊躇していたマコも、ケンの迫力に負け、矢を発射。ケンはその痛みの中で、己の甘さによってこの兄弟に悲劇をもたらしたことに責を感じるのだった。

 矢を放ったマコの頭に、激痛が走る。ケンは秘孔によってそれを押さえ込むことが出来たが、もし矢を放っていなければ秘孔頭芯命によって頭は破裂していただろうと話した。ケンはマコを救うためにわざわざ己に矢を放たせたのである。深々と刺さった矢を引き抜き、ケンはこの痛みを必ずジャギに届けることを約束するのだった。

 その模様を見ていたジャギの部下達は、ケンが傷を負ったのを見てチャンスだと判断。物陰に隠れて隙をうかがい、ケンシロウを襲撃しようとする。だが先制攻撃のボウガン攻撃は二指真空把で返され、全員攻撃も全く効果無し。逆に北斗胸殺刺突拳を喰らい。ケンと同じ胸の痛みを与えられて死亡したのだった。

 昼寝をするジャギの元へ、食事の用意が出来たことを告げるため、一人の部下がやってきた。呼びかけに答えないジャギを不思議に思い、顔を覆っていた布をはぎ取る部下。しかしその下にあったのはケンシロウへの恨みが込められた痛々しい傷跡であった。

 ジャギの住むビルへとやってきたケンは、門番達を倒しアジトの中へ。薄暗いビルの中からゆっくりとケンシロウに近づいてきたのは、先程ジャギの素顔を見てしまったあの部下であった。男はケンシロウに助けを求めつつ爆死。己の忌まわしい傷を見た部下に対し、ジャギは既に秘孔を突いて葬っていたのだ。男が死んだと同時に、不敵な笑い声がビル内にこだました。それは、目前に迫った己の復讐劇に嬉しさを爆発させるジャギの嬉しき悲鳴であった。
放映日:85年6月6日


[漫画版との違い]
・「耳がケンシロウに似ている」という理由が「目や鼻や耳があるところがケンシロウに似ている」に変更
・マコは足が悪いという設定が、病気という設定に変更。容姿も微妙に原作と違う。
・ジャギがアキの目がケンに似ていると気づくのは、原作では会って直ぐだが、アニメでは老人の発言に怒った後
・アニメではアキが死なない
・アニメのマコは、秘孔 頭芯命をつかれたためにケンシロウをボウガンで撃とうとした。
・ケンに矢を放った後、マコ達が老人と抱き合うシーン追加
・ジャギの部下達がケンが傷を負ったのを見て襲いかかるシーン追加
・アジト前にいたジャギの部下4人がケンに襲いかかり、うちの一人がシャッターに吹っ飛ばされ、その爆破でシャッターが壊されるシーン追加
・ジャギのアジトに変な奴(ケンシロウ)が来たと飛び込んできた男は登場せず。
・ジャギの素顔を見てしまった男は原作ではグキャッと頭が曲がっただけだが、アニメでは破裂して死亡。


・結果的に
ジャギは、兄のために足を差しだそうとしていたアキを捕らえ、砂漠へと捨てた。アキはその後ケンシロウに救われ、村へと連れて帰られた・・・。結果論とはいえ、ジャギがアキを砂漠に捨てなければ、アキは足を片方失っていたのだ。残念ながら原作ではアキは死んでしまったが、それでももうすこし早くケンと出会っていたなら助かっていただろう。足を失えば、アキの年齢では先ず間違いなく出血多量にて死ぬ。奇跡的に生き延びても、子供があの世紀末を片足で生きていくのは無理だ。そう考えれば、ジャギが行った砂漠放置の方がまだ生き延びれる可能性が高い分だけマシではないだろうか?なんとなくジャギを擁護してみた。


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