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[第27話]
悪党だけが笑っている!
こんな時代が気にいらねえ!!


 牙一族達は殺された仲間達の霊を弔うため、近くの村を襲い、生贄とするための人間をかき集め始めた。ゴジバの命により、次々と村人達を殺害しながら生け贄となる若者達を捕らえていく牙一族達。だがその時、予定外のことが起こった。捕えるはずの若者を、牙一族の中でも最も獣に近い男・マダラが、殺し始めたのだ。鉄球付きの鎖を手足にはめてなんとかマダラの動きを封じたゴジバ達は、かき集めた生け贄達、そしてマダラを護送車に詰め込み、アジトへと帰還した。

 数刻遅れてその村に到着したケン達は、地獄絵図と化した村の様子を目の当たりにした。もはや生き残った者はいないだろうと思われたが、一人の子供が瀕死ながらも生きているのを発見。子供は牙一族の全滅をケン達に依頼した後、レイの差し出した水を飲みながら絶命してしまう。そして、そんなやりとりを傍から見つめる者達がいた。2人の牙一族が、村に残っていたのだ。ここでケン達を倒せば大手柄だ。そう言ってケン達に不意打ちをかけようとする2人。しかし牙一族達に対して更に怒りを増幅させたケンとレイの拳の前に2人は瞬時に肉片と化した。

 牙一族のアジトでは、早速捕えた生贄達を用意しての弔いの儀式が行われていた。死んで天国で息子達に使えてくれ。生贄たちに、滅茶苦茶な要求を真顔で要求する牙大王。当然そんな要求を呑むわけも行かず、拒み続ける生贄達であったが、嫌がろうが承諾しようが彼等が殺されることに変わりはなかった。とその時、突如興奮したマダラが身を震わせて叫びはじめた。マダラの獣並の嗅覚が、ケンシロウ達の接近をかぎつけたのである。

 巣の中に入ってきたケン達を、全員総出で迎える牙一族。先陣を切ってケン達に襲いかかってきたのは興奮を抑えきれなくなったマダラであった。華山分裂拳にて残像を作り出し、隙を突いてケンに飛びかかるマダラ。ケンの腕をその鋭い牙で捕らえたマダラは一気に噛み砕こうとする。が、岩をも砕くはずのその牙は、ケンの腕に全く通らなかった。マダラが噛みつくよりも一瞬早く、ケンはマダラに秘孔 頬内を突いて、アゴの力を奪っていたのだ。しかしマダラには、まだ岩をも切り裂く鋭い爪が残されていた。再び華山分裂拳にて飛びかったマダラは、ケンの肩当てを引き裂くことに成功。しかしマダラの活躍もここまでであった。再び飛びかかってきたマダラに対してケンは、まず五指烈弾にて腕を破壊。更に口を蹴りとばしてマダラの牙を大王に向けて飛ばし、挑発。ラストの北斗破顔拳によって、マダラの肉体は闇に散った。

 ケン達の実力を認めた牙大王は、早速奥の手を出すことを決めた。牙一族達が一点に向かってスポットライトを浴びせた先には、一人の女性が。それを見たレイには衝撃が走った。その女は、レイが探し求めていた自らの妹・アイリだったのだ。信じられない再会に心打ち震えるレイ。レイは、敵が地面に仕掛けている罠にも気が付かず、ただアイリの元に駆け寄ろうとする。その場はなんとかケンのフォローによって命を救われたレイだったが、それでもレイの暴走は止まらなかった。

 レイから自分のケープを受け取ったアイリは、初めて目の前にいる男が、兄だと気が付く。しかし喜ぶべきはずの再会は、アイリの目に哀しみの涙を流させた。自分を買った男達の元で奴隷として生きることに耐えられなくなったアイリは、現実から逃げるため、自らの目を潰してしまっていたのだ。

 ケンとマミヤは必死で説得を試みるが今のレイにその言葉が届くはずはなかった。止めるケン達を振り切り、レイはアイリの元へ。地から飛び出して襲い掛かってきた牙一族の男を瞬殺し、愛しきアイリに手を伸ばす。だがそのレイの手はアイリの体を抱きしめることは出来なかった。一瞬早くアイリに巻き付いた牙大王の鞭は、アイリの体を崖の上に引き上げてしまったのである。牙大王の手中で、刃にいたぶられるアイリ。その様を見たレイは悲痛な叫びあげ、その悲鳴は牙大王の気分を潤わせるのだった・・・
放映日:85年4月25日

[漫画版との違い]
・ゴジバが率いて生贄達を拐いにいくシーン追加
・その村にケン達が訪れるシーン追加
・村に残るリンが、寂しさを覚たり、バットが久しぶりにハーモニカを披露したりするシーン追加

・マミヤに飛んできた矢をケンが間一派で掴む、と言うシーンが削除
・マダラ戦とアイリ登場の順番が原作とは逆
・マダラ牙を牙大王に蹴り飛ばすのが、マダラがやられる寸前に変更
・ケンの肩当てが、原作ではマダラに奪われて握りつぶされるが、アニメ・引き裂かれる


・生贄村
あんな牙一族のアジトの側に住んでいたら危険だろ・・・はやく引っ越せよ・・・
・演出
わざわざアイリを崖下に立たせてスポットライトを浴びせる意味はあったのだろうか。万が一崖の上へと引っ張り上げるのを失敗してレイに保護されてしまう可能性もあるのだから、最初から腕の中に抱えていた方が万全である。しかし一度レイに感動の再会をさせてから再び引き離すという行為は、確かにレイの心情をますます激化させるであろう。あえて危険を冒しても自らの演出にこだわり、皆の喜怒哀楽も思いのまま。牙大王、なかなかの演出家である。


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