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[第16話]
悪党ども歌ってみるか! 
地獄の数え唄!!


 辿り着いた町でバットは、ハーモニカを吹きながらのダンスを披露していた。最初は面白そうに見物していた村人達だったが、此処から先は有料とバットが言い出すと、蜘蛛の子を散らすように四散。作戦の失敗に肩を落とすバットであったが、ただ一人、リンゴを渡してアンコールを要求してきた少年がいた。たった一人とはいえ、大切な客のためにダンスを再開しようとするバット。しかしその時、彼らの前にスネークと名乗る盗賊達が現れた。自分達の領地で勝手なことするそのバットに、不快感を示すスネーク。だが、彼らを止めたのは、先ほどのアンコールを求めてきた少年であった。そしてその少年は、スネーク一人一人に林檎を渡し、見事その場は収めてしまった。彼の名はセラ。セラがバットを助けた理由、それは、ハーモニカダンスの筒義が見たかったことに加え、リンが可愛かったからという理由であった。

 セラは、砂漠の真ん中にある自宅にケン達を招待した。見晴らしのいいその家から見える景色は、死体が転がる凄惨なものであった。この辺りには、先ほどのスネークと、そして同じく野盗スコルピオという二つのチームがあり、街を二つに割って頻繁に抗争を繰り返しているのだというのだ。そして、今日も村では、彼らの圧政に苦しめられる人々の姿があった。交換する物も持たずに水を貰いに来た老人を、容赦なく殴り殺すスネーク軍。凄惨な光景に涙するリンは、ケンに何かを訴えるかのような視線を向けた。その眼差しには、この不幸な村にも幸せを取り戻したいというリンの切実な願いが込められていた。

 その頃、スネークとスコルピオの両軍は、ある場所に呼び出されていた。そちらが呼び出したんだろう。互いにそう主張し、早速口論をはじめる両チーム。だがその時、その喧嘩を止めるかのように、ジョーカーが現れた。両軍を呼んだのはジョーカーであった。ジョーカーは、ケンを倒すために、この二チームに手を組ませようと考えたのだ。互いを忌み嫌う両軍は当然不快感を表すが、KINGの命令とあっては承諾せざるを得なかった。スネークのボス、ジャンクと、スコルピオのボス、バロン。協定の証として、とりあえずその場は握手をした二人であったが・・・

 先にケンの居場所を発見したのはスネーク達であった。セラの家を鉄球で破壊し、ケンを挑発するスネーク。だが、所詮ケンの相手ではなかった。残された一人は、ヤケクソで武器をリンへと投げて逃亡。。鉄の棒は猛スピードでリンの顔面へと飛来したが、身を張ったセラの救助により、なんとか事無きを得たのだった。とその時、後を次ぐようにして、スコルピオの大将・バロンが現れた。子供達を傷つけようとする非道なスネーク達を共に滅ぼそうとケンに仲間入りを求めるバロン。明らかに他意を含んでいそうなその要求であったが、何故かケンはそれを承諾してしまった。強力な助っ人を得たスコルピオは、一気にスネーク壊滅へと動き出す・・・

 スコルピオがケンを抱え込んだと知り、怒り狂うジャンク。もはやジョーカーの命令は、彼らの憎しみの中に完全に消し去られてしまっていた。スネークの襲撃を機に、遂に大戦争が勃発させる二チーム。そんな中、バロンはケンにも参戦を促すが、ケンは全く動こうとはしなかった。最初からケンはスコルピオと手を組む気などなかったのだ。裏切り者(?)のケンを始末せんと、部下達と共にケンに襲い掛かるパロン。だが、部下達はアッサリと全滅させられ、自らの南斗風車斬も全く通用せずに敗北。肘を顔面へと叩き込まれ、ダウンしたバロンは・・・

 スコルピオの全滅を見届けたスネーク達は、総力をあげてケンを襲撃。しかし、これまたケンの翻車爆裂拳にてあっさりと全滅させられ、残るはリーダーのジャンクだけとなった。鞭を生きた蛇のように操る南斗蛇鞭拳で善戦するジャンクだったが、一度目で全てを見切られてしまい、敗北。打つ手を無くしたジャンクに止めをささんと、歩み寄るケン。しかしその時、背後では淡々とケンの命を狙うバロンの姿があった。先程のケンの攻撃を受けても、バロンはまだ絶命していなかったのだ。ヤケクソでケンに襲いかかるジャンクを見て、バロンもまた突撃。期せずしてのコンビプレイを発揮した2人であったが、ケンはそれを待っていたといわんばかりに、2人を同時に撃退した。北斗神拳奥義 繰筋自在拳。互いに相手の体を強く抱きしめあう秘孔を突かれた2人は、仲良く抱擁しながら爆死したのだった。

 刺客達のふがいない結果の連続にシンはとうとうキレた。ケンシロウを絶対にサザンクロスへと入れてはならない。自らとユリアを引き離さんとするその男を倒すために、シンは遂に自らの大軍団の召集を決めたのだった。

 旅立ちの報告をするリンに、セラは、ここに残らないかと持ちかけてきた。しかし、リンはそのセラの想いに応える事はできなかった。セラから餞別の林檎を受け取ったリンは、再び自らの想い人と一緒に、旅に出るのだった。

放映日:85年2月7日


[漫画版との違い]
・アニメオリジナルストーリー



・コイツ何者?
北斗にはあまりない「野党同士の喧嘩」をしてるジャンクとバロンも面白いけど、一見ストーリーにあまり関係なさそうなセラに注目してみる。セラって何者なのだろう。まずダンスが見たいがためにリンゴをバットに渡し、さらに見ず知らずのバットを助けるため、スネークにリンゴを3つも与えている。全く生活には困っていないのだろう。こう考えると、スネークの水交換所で「何も採れんかった、でも水をくれ〜」と懇願しているジジイがアホに見えてくる。こんな子供が上手く世の中を渡っているのに、いい大人がなにしとんじゃろ。更にセラは、悪党達ともそこそこ上手くやっていっているようだ。スネークをリンゴで買収しようとしているときに、スネーク達はセラの名前を呼んでいるのである。タダのいち少年が悪党に名前を覚えてもらうなんてこと、そうはない。相当したたかなバットでさえ、村人達とすら上手くやっていなかったというのに。極めつけは、セラの家は、スネークとスコルピオのアジトが一目で見渡せる砂漠のど真ん中に建っているということだ。さらに家の中は、ベッドだけ。18畳はあろうかという広々とした家なのに、ベッドだけなのである。これはどう考えてもおかしい。とても人の住んでいる家とは思えない。これではまるで両軍の動向を見張るための小屋である。セラ、お前は一体何者!?


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