
一年前、ケンはユリアと共に、師の墓に旅立ちの報告をしていた。恋人同士であった二人は、この先力を合わせて生きていくことを、師に誓っていたのだ。しかしその時、彼らの前に、いかにも悪党面をした男達が現れた。そしてその男たちの中から姿を現したのは、ケンの修行仲間でもあったシンであった。力こそが正義・・・そんな時代の流れに沿うかのように、シンはユリアを力ずくで奪いに来たのだ。北斗と南斗は争ってはならない。師のその言葉を糧に、戦いの中止を呼びかけるケン。だが、その教えを戯言と言い放ち、墓を粉々に蹴り砕くその男に、もはや昔のシンの面影はなかった。南斗獄殺拳。北斗飛衛拳。二人の奥義が空中で交錯する。勝ったのはシンであった。両手両足の腱を切られたケンは、惨めにその地に伏したのであった。シンの勝因、それは執念であった。ユリアを手に入れたいというシンの執念が、ケンシロウに勝っていたのだった。
俺を愛していると言ってみろ。そのシンの言葉に当然ユリアは首を振るが、シンはその首を縦に振らす方法を知っていた。部下にケンの体を引き起こさせたシンは、その体に目掛け、指を突き入れ始めたのだ。一つ、二つ、三つ・・・言葉にならぬ痛みにみを悶えさせるケン。その処刑を止める方法、それはユリアがシンを愛すと言う他になかった。ユリア、生きてくれ・・・俺のために生き続けてくれ・・・。ケンのその言葉は、自らが死を覚悟したという意味であった。しかし、ユリアにはその非情の決断は選べなかった。愛します!一生何処へでも付いて行きます!自らの愛を犠牲にし、ユリアは恋人の命を救ったのだった。高笑いをあげてユリアを連れ去るシンを、ケンはただ泣きながら見送ることしか出来なかった。
不意打ちさせた部下達を事もなく撃退されたジョーカーは、この城に仕掛けられた最後の罠を使うことに決めた。いつの間にかジョーカーは、広間の床に石油を張り巡らせていたのだ。ジョーカーの燃えるトランプによって、広間はたちまち炎上。跳躍で何とか逃れたケンは、逃亡したジョーカーを追って屋上へと走る。しかし、追い詰めたと思ったその時、ジョーカーはペットの鷹に掴まり、空高く逃亡してしまった。そしてその去り際、ジョーカーはこの城の地下が石油の倉庫になっていることを告げた。爆発炎上するシンの居城。その燃えさかる城の屋上から、ケンは決死のダイブを敢行する・・・
ケンの華やかな弔いを見届け、満足げに高笑いを上げるシン。そして、そのあまりにも辛い現実に、ユリアは再び頬を涙でぬらした。哀しみに暮れるユリアを乗せ、車は一路サザンクロスへ・・・| [漫画版との違い] ・一年前のケンVSシン以外はアニメオリジナル ・リュウケンの墓には、『北斗神拳師の墓』と書かれている。原作では意味不明な文字。 ・獄屠拳が獄殺拳に名前変更 |
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