北斗の拳シリーズ大解剖
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2023年10月7日 |
本日より大原画展スタートですね。
訪れる方々は是非お楽しみください。
私は10月末にのこのこ行く予定です。
それはそうと、なんか一昨日くらいにこんな本が出てました。
「北斗の拳シリーズ大解剖」
40周年…というか大原画展に合わせて発行したのであろう、超久しぶりの北斗ムック本。お値段1100円。
それにしても
凄いサイレント出版だったな。Xの北斗公式系アカウントも何一つ呟いてなかったよ多分。ていうか5日くらい前に「最近北斗の本出ねえな〜何か発売予定ないのかな〜」とAmazonで検索した気がするんだが、そんときも何もヒットしなかったのよね。何なのマジで。あまり知られたくないん?
大解剖シリーズは、三栄書房が定期的に発行しているムック本で、これまでにも数多くの漫画・アニメの本が作られている。
北斗の拳もこれまでに
「北斗の拳大解剖(2014)」と、それを若干修正した
「北斗の拳大解剖 改訂版(2017)」の2冊が発行されている。いずれもレビュー済。
内容は基本的に作品紹介に終始しており、深く踏み込んだ記事もあまりないためコアなファンには物足りないが、とにかく文字数が凄いのと、全頁フルカラーが豪華なので、個人的には評価は高め。そして真偽はともかく結構重要な作品設定も載っているので、資料としても割と貴重。ちょっと誤字多めなのがたまに傷、てな感じ。
その第三弾が今回のやつって事ですね。
ならば当然レビューするよね。しなきゃね。
【概要】
ザッと流して読んだところ、
これまでの内容に蒼天の拳も足したよといった感じ。
「北斗の拳シリーズ」というタイトルなのでスピンオフも含めて取扱っているのかと思ったが、全然そんな事は無かった。それなら「北斗の拳・蒼天の拳大解剖」で良いと思うんだが。
しかし蒼天が増えたにも関わらず、ページ数自体はそこまで増えてはいない。何故かと思ったら、他の漫画家先生へのインタビューやミニコーナー等がいくつか削られており、むしろボリュームダウンしているという側面も。蒼天は別に要らん!という人はむしろ前号の方がオススメかもしれない。
【内容】
●イラストギャラリー
カラーイラスト色々。
ラインナップが前回からガラッと変わっているのは良いですね。あと蒼天の大判カラーイラストはかなりレアなので助かる。これだけで価格の半分以上の価値があると言っても過言ではない。
●北斗神拳を継ぐ者たちの物語
二作品の概要や繋がり等を紹介。
年齢設定について言及されてる!!
これはケンシロウ18歳説を否定する決定的な証拠になる!!ありがとう!!
●ケンシロウと拳志郎
2作品の主人公を色々な面で比較。
>ケンシロウとの戦いに敗れた後に、実は単なる悪ではなく、哀しい理由を背負っていたとか、実はそんなに悪い奴では無かったという設定が付与され、ケンシロウが敵を「強敵(とも)」と呼んでリスペクトすることが多くなった。
いや間違っちゃねえけどそんなメタメタしい言い方やめてよ……
>初期のケンシロウは民衆を苦しめる悪党を制裁する闘いが主流だった。北斗神拳伝承者の役割がその時代の英雄を守護することなら、世紀末における英雄は一般民衆だったと捉えることができる。
なにその素敵な考え方。上のと同じ人が書いたとは思えん。
●時代背景・世界観比較
2作品の世界観比較。未読の人が読む前に入れておく事前知識としては中々優秀な纏めだと思う。
北斗の拳の物語の舞台が199X年と表記されること結構あるんだけど、一応これは核が落ちた年なのよね。でもXは未知数でかつ舞台が世紀末なので、間違いってわけでもないんだよな。うーん。
●北斗神拳の系譜
北斗神拳を主題にした北斗・蒼天のキャラの相関図。
一番気になったのは南斗のところ。「北斗の拳VS蒼天の拳オフィシャルガイドブック」の記述から引用したのだろうが、
「南斗聖拳は最盛期に1000派を超えるが、核戦争の影響で20世紀末には108派にまで激減した」っていうやつ。これ流石に無理があると思うんだよねえ。
だってこれだと
「南斗108派」という呼称が生まれたのは原作から数年前ってことになるよね。でも南斗六聖拳が皇帝の居城の衛将だったころから108派だったってレイが言ってるんだよね。それに情報網もろくにない荒廃した世界で、そんなすぐに「南斗が108派になりました!」なんてのが浸透するもんかね。生き残った流派を正確に把握するだけで数年かかるでしょ。だからこの説はありえないと思う。
他に細かい所としては、北斗神拳の歴代伝承者の中に龍斎(織田信長の時代の伝承者)の名前があるのが良かった。ただ同じパチスロ台で明らかになったヤーマの兄の名前(イザヤ)は何故か採用されてないな。
あと南斗双斬拳の双子の名前、
ベジ・ギジと書いちゃってるけどええんか?アニメ設定やぞ?ええんやな?
【PART1 北斗の拳】
こっからは北斗の拳メイン
…なのだが、ここの内容は前号の
「北斗の拳大解剖 改訂版」と全く一緒のようだ。掲載順と色合いだけ変えて目新しくはしているが、文章は何一つ変わっていない。
ちなみに第一弾にあった誤植は、改訂版になって幾つか修正されていたのだが、まだいくつも残っていた。それがこの第三弾になってどうなっているのか注目していたのだが、どうやら
何一つ修正されていないぽい。
「南斗弧鷲拳」も「北斗百烈拳」も「破天の構え」も「殺活孔」も、全部そのまま残っていた。特に後ろの二つは重大なインシデントだ。
その中でも一番ヤベーのがこれだね
これはちょっと無いよねー
俺は北斗の拳でこういう洒落にならん誤字を見つけると脳汁が出て気持ちよくなっちゃう変態なので良いんだけど、普通のファンはまあ落胆するか怒るかのどっちかだよね。こんな人気キャラの名前間違うのは流石にアカンよ。もう殆どショウザやん。息子の方やん。
ただこの誤字も前号からの引き続きなのに、俺そんとき気付いてないのよね……だからあまり強くも言えなかったりする。
まあともかくこんなミスすら直って無いんだから、本文は何一つ再校正してないんでしょう。なので確認する必要もなし!
【PART2 蒼天の拳】
続いて蒼天。
内容は、舞台となる世界、拳志郎紹介、人物紹介、バトル内容、天授の儀解説、北斗神拳創始の秘話、そしてストーリー紹介といったところ。
もちろんこちらは全て新規の内容なのでじっくり読み込んだが、まあ正直言ってここでやいやい語れるような内容でも無かった…。
だって真面目な作品紹介に終始してて筆者の私見とかも全く無いし、致命的なミスなんかも全然無かったからね。人はそれを良作というわけだが、ちょっと私の舌には物足りなかった。
唯一気付いたミスは、北斗鎧破掌が「鎧
波掌」になってたくらいかな。
まあこれは気付けなくても仕方ないと思うけど、
下に敷いてるコマに思いっきり正解書いてあるんだから見ろよとは思う。
ラストの方にもちょっと新作記事が。
●北斗神拳誕生と伝承の歴史
北斗と蒼天の紹介を経て、その中で明かされた情報を合わせて北斗神拳の歴史をまとめてみましたの巻。
そんなに変な所はないけど、少し気になる所はあったので幾つかピックアップ。
>北斗宗家の拳は受け技が極められた。同じ拳を身に付けた者同士では勝敗がつかない。そのため威を喪失した。
いや……別に受け技が極められたからって「同じ拳を身に付けた」ことにはならんし、例えそうだとしても勝敗がつかんことはないでしょ。
>シュケンは西斗月拳を修得し北斗神拳を創り出したが、それが絶対的優位に保つために十二人の高弟達を皆殺しにした。
うーん、これだと月氏の所にいるときに北斗神拳が完成したみたいな言い方だが、実際は
北斗神拳が誕生した明確な瞬間って不明なんだよな。少なくともシュケンがヤーマと出会った時は「北斗宗家の拳」と言ってるし、その後も北斗神拳とは口にしていないんだよな。
けどまあ名前が決まってなかったというだけで、シュケンが宗家の拳と西斗月拳を身に付けた時点で北斗神拳誕生と言えない事もない……のか?
>三国時代において劉家から北斗神拳伝承者が生まれ、以降も継続。残る二家はそれを支え、劉家に伝承者なき場合は二家から出す仕組みが出来上がった。唐の時代に劉家拳の三兄弟が日本に渡り、以降北斗神拳は日本で伝承。中国に残った劉家拳の使い手たちも引き続き拳法を伝承し続けた。
これも原作に記述はないものの、オフィシャルガイドブックの拳法概論にあったことから、半ば公式設定として語られてるやつですね。
まあ劉家が本家になったのは良いんですよ。ウイグルも「劉家北斗神拳」って言ってたから伏線回収みたいな感じで素敵だし。
気になるのは、
劉家が本家となってから日本に渡るまでの約600年間、正規の「北斗神拳」とはどんな拳法だったのかという点。現代の北斗神拳に近いのか、それとも劉家拳に近かったのか。本家と劉家拳に別れた後、スタイルが変わっていったのはどちらなのか。奥義マニアとしては実に気になるところ。
あと劉家拳もさあ、才能アリアリの子供らが3人とも日本行っちゃったら、ヘボい後継者しか残ってなかったんじゃないの。衰退の危機だったろうに、よく盛り返したよね。雑草魂じゃん。偉いよ。まあそういうのが後々の魔界に繋がった可能性もあるけど。
>織田信長、豊臣秀吉、徳川家康ら三英傑を密かに守護していたとされている。
あ、そうなの?秀吉と家康は龍斎から次代の天下人候補として名前は挙げられてたけど、実際に守護してたかどうかは語られてなかったよね。
しかし龍斎は晩年の秀吉を見てどう思ってたんだろうね。
●蒼天の拳リジェネシス
リジェネシス(漫画版)の紹介。
これも紹介するんなら、
北斗神拳の起源の所に天斗聖陰拳の記述も入れて欲しかったね。コンテンツとして不完全になるじゃん。
ちなみに辻先生によると、リジェネシスは一旦最終回までネームを完成させてからペン入れという形になったようです。つまりネームが仕上がれば間もなく連載再開……と考えて良さそうですかね。これは吉報。超吉報。
で、記事の内容はと言うと
ゴール……
いやもう、「ファン・デル」から「ゴール」ときたらそれはもうサッカー以外の何者でもないのよ。ていうかファン・デル・サールってキーパーだからゴールはむしろ不名誉なのよ。
その濁点、さっさとシュウザに返してきてください。
【総括】
「北斗の拳大解剖 改訂版」からの流用がかなり多く、誤字も直す気が無い手抜き具合は否めないが、新しい記事もそれなりにあるし、まあ買って損というような内容では無かった。
少なくとも前のを持ってないって人には十分オススメできる一冊ですね。何よりこのボリュームで1100円というのはかなりリーズナブルだし、それでいて内容的に大きな間違いも無いし。
ただボリュームがあるとは言っても、作品紹介、人物紹介、ストーリー紹介とやっていくと、どうしても内容的に重複する部分が多くなっちゃうんですよね。だから途中から同じことの繰り返して飽きてくる部分もあり、読み物としてはイマイチかも。どちらかというと調べものとかしたいときの方が役立つと思います。
以上。