1985年にバンダイより発売された対戦型ボードゲーム。
スネ夫御用達の最大3人プレイ仕様だ。

プレイヤーは「ケン＆レイチーム」と「牙一族チーム」に分かれて対戦する。

後にも先にも牙一族がメインを張るゲームはこれだけであろう。
しかし誰が好き好んで牙一族チームなぞ選ぶのか。

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ゲームの舞台となるのは、この9×4のボード。
ここに各キャラクターを配置し、ターン毎に移動。
敵と同じマスに入れば攻撃が可能となる。





こちらはボードの裏面。
多数のイラストと共に奥義の紹介がされている。

ゲームには全く関係ない部分にこれだけ力を入れたオマケを用意するとは流石は天下のバンダイである。できれば今度はその情熱をPS版北斗のリメイク版に注いでほしい。






こちらがゲームに使用するコマ。
ケンシロウとレイには御覧の通りの立派な人形があるのだが、牙大王を含む他のコマは小さい紙の切れ端しか用意されていない。なかなか酷い格差社会である。






これが、ゲームに用いるカードやシート。
いずれもカラフルで子供の好奇心を存分に掻き立ててくれる。



そんな中、やけに無骨な物体がひとつ。




はじめまして。
マイコン判定機
と申します。

簡単に言うと、このゲームを司る神です。


この「対決牙一族」に「コンピュータ･ウォーゲーム」というタイトルが付けられているのも、このマイコンさんの存在ゆえ。彼が下すハイテクノロジーな判定が、ゲームの展開全てを握っているからなのだ。



その性能は、なんと

1から6までの数字を
ランダムで選んでくれる

という画期的なもの。

なんとこれ一台でサイコロが不要になるのだ！！


すごい


目が出るまでの待機時間や、
その間に発せられるビープ音が、
プレイヤーのテンションを更に高めてくれる。


すごい




見た目こそ無機質だが、ゲームを始めるときには左のようにカラフリーなセルシートをはめ込んでハイカラなアイテムに変身するので安心だ。

この安心のためならば、各チームのターン度にシートをはめ変えなきゃならないという手間も全く惜しくは無いだろう。

すごい

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では簡単にルールを説明しよう。

ゲームは全20ターン。
この間に 牙大王の体力をゼロにすればケンシロウ＆レイチームの勝利。
一方で牙大王が20ターン耐え抜けば牙一族チームの勝利となる。


その他にも牙一族チームは、
ケンシロウとレイの体力をゼロにするか
6人の村人を抹殺＆井戸を占拠という条件を満たしても勝利となる。


6人の村人というのは
リン、バット、ミスミ、トヨ、ジョニー、タキといった面々。



彼らはボードの各所に配置されるNPC。
ケン＆レイは彼らを守り、牙一族は彼らを抹殺して回るのが目的となる。

子供3人を含む一般人の抹殺を勝利条件に設定するというこの斬新すぎるシステムに震えがとまらない。



ちなみに、なぜタキだけ紙の色が違うのかと言うと、彼が「井戸の場所を知っている唯一の村人」という重要キャラだからだ。

タキをぶっ殺すと、フィールドのどこかに井戸が出現する。そこを占拠することで、牙一族チームは5点を獲得できる。村人1キルで2点なので、これはかなり重要なポイントとなるのだ。


つまり牙一族チームとにとっては、村人の中でも最年少であるタキを最優先に殺すことが基本戦術となるわけだ。

世が世なら発禁待ったなしの凄惨過ぎるルールである。

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では実践に入ろう。

まずはゲーム開始前の準備だ。
マイコン判定機を用いて、各コマの初期位置を決定する。

結果、以下のような配置となった。



牙一族（全員）のすぐ横に
ババアが配置された。

バット・・・・最期だ。かあさんと言ってやれ。




【1順目】

まずは牙一族チームのターンからスタート。



牙一族チームの移動は1ターンで1マス。
ナナメ移動はできない。


とりあえず牙息子3人をトヨの抹殺へと送り込み、順当に撲殺。攻撃の成功確率は2/3なので、生き残る可能性も僅かにあったが、すんなり2撃喰らってトヨは逝った。ちなみに1撃で負傷、2撃で死亡となる。


牙大王とマダラは東へ。
ケンシロウ達から距離をおかねばならない。

残りは南にいるタキを狙って進軍させてみた。




次はケンシロウ・レイのターン。
ケン達は、牙大王達の倍の2マス進むことができる。



まずは牙ムスコ達の抹殺へと向かおうとするが・・・
この位置からではケンは牙一族×3のマスまで到達できない。

しかし隣接するコマまでいってしまうと、次のターンでケンシロウは一気に3匹からの先制攻撃を受けてしまうことになる。ケンとレイの体力は8なので、もし全弾命中で3ダメージ食らってしまうと、相当ヤバい。




というわけで、このターンはあえてケンの移動を1マスに留めてこの位置。

レイは敵陣に飛び込ませ、１人をシャオった。

・・・とまあこんな感じで戦略をたてていくのだろう。
うん、中々面白いかもしれん。





ちなみにケンとレイは、ターンの最後にやらねばならないことがある。
マミヤとアイリの脱出準備だ。

　

マミヤとアイリ・・・の・・・

お前ら誰やねん？
色おかしくない？



二人は牙一族に人質にとられているという設定。
ケン＆レイチームは彼女らを解放するため、準備を進めなければならない。

ただ二人を解放するメリットが微妙だ。

細かい説明は省くが、それぞれのキャラは「アルファベット」が設定されており、その相性によってマイコン判定の確率が変動するらしい。で、このマミヤをアイリを二人とも救出すると、ケンとレイのアルファベットが「D」から「B」へと変化し、それに伴い牙大王への攻撃命中確率が微妙に上昇するというのだ。

この二人の救出してそれだけ？
レイにとっちゃほぼ最重要事項な気もするんだが。



とりあえずこのターンではマミヤだけが脱出準備成功となった。
これを6回成功させれば解放となる。




【2順目】

このターンでは、まず最初に牙一族チームに仲間が一人追加される。

召還可能なのは
KING軍のシン、スペード、ダイヤ、クラブ、ハート
GOLANの大佐、マッド軍曹、少佐
ウォリアーズのジャッカル、デビルリバース
の10名。

助っ人陣のほうが牙一族より遥かに豪華だな。



特に順番などはないので、とりあえずシンをチョイス。
初期位置はバットのいるマスの右下になった。

続いてレイと同じコマにいる牙息子二人がレイに攻撃。
ここで「複数攻撃」という、一回のマイコン判定で全員分の攻撃を一括判定する機能を用いてみるが、結果は見事な「返り討ち」。自ターンだというのに相手にダメージを与えるどころか逆に2名の兵隊が自滅してしまった。

これは痛いですぞ。形勢はケン達有利か。




【3順目】

カーネル出現！
すぐさま隣のマスにいたジョニーを攻撃！
アニメじゃ助っ人雇って命狙ったからね。自業自得だね。



更に東へと歩を進めていた牙大王とマダラがミスミを惨殺。
ついでにシンもバットをぶんなぐって瀕死状態に。
面白い展開になってきたゾ。


しかしここでレイがバットの救援に参上！
怪我を負ったバットをレイが助けるという原作オマージュ展開！
しかもレイvsシンという夢の南斗対決も実現！
つってもシンも牙一族達と同じ体力1の雑魚なので、あっさりと即死しました。




【4順目】

まずは助っ人として、デビルリバース出現。

一方、大佐は瀕死のジョニーをあえて殺さず、生殺しに。
何故ならもうすぐここに牙大王とマダラ、そしてそれを追うケンも来るからだ。

つまりここが決戦の場。そうなった場合、「村人が同じコマにいるとケンシロウの戦闘力がダウンする」という仕様が発動し、牙一族側が有利になるのだ。

リンとかならともかく、ジョニーなんかがケンの足かせになってしまう辺りに若干違和感は感じるものの、それもまた一興。このゲームならではよ。




【5順目】

予定通り牙大王とマダラが大佐と合流。
どえらい三人に取り囲まれてしまったジョニーの運命は。

そしてそこに誘い込まれる形で駆けつけたケンシロウ。
人質ジョニーのせいで戦闘力が落ちているものの、なんとか大佐の撃破に成功したケンシロウであったが、これが地獄の始まりであった。

一方では南に向かった牙息子2人が、最重要村人であるタキに攻撃を開始。
一人がミスしてなんとかタキが生き延びた瞬間、レイが救援に到着！カッコイイ！
しかしこの盛り上がる展開の中、レイまさかの攻撃失敗！
それどころか反撃を喰らって被ダメ！

牙息子に押されるレイ・・・それもまた一興。




5順目終了時の状況。
東と南で熱い展開が繰り広げられている。
そんな中、バットの背後に迫る巨人。




【6順目】

ジャッカルがレイのいるマスの右隣に出現。
そのままレイのもとへと特攻し、体力を削る。

ケンも牙大王とマダラの攻撃を受けるが、自ターンでマダラを撃破。
これで牙大王と1対1の形になった。

だがレイのほうはまたもや牙息子にカウンターを取られる大苦戦。
どうした？アイリが解放されてないから踏み込みが甘いのか？




【7順目】

ハートが2-3に出現。
近くにいる牙大王の加勢に向かう。

レイはジャッカルと牙息子の攻撃を受け、残り体力3にまで減少。
もう死兆星が落ちてきそうだ・・・！

一方、進撃の巨人していたデビルリバースがバットのもとへと到着。
既にシンにやられて瀕死状態の少年にトドメの一撃をぶっぱなすデビルさんマジデビル。




かなりピンチになってきた主人公チームは、ここで必殺技カードを使用。

ケンシロウとレイにはそれぞれ必殺技を使用できるカードが4枚ずつ用意されており、マイコン判定前にこれを提示することで、互いの戦力差を無視した攻撃が出来るのだ。
要約すると攻撃が当たりやすくなるのだ。
せめてダメージ増加とか、複数人に攻撃できるとかにしてほしかった・・・


北斗百裂拳で牙大王に念願の初ダメージ！
レイも南斗水鳥拳でジャッカルを撃破！
更にここでマミヤ、アイリともに脱出にリーチ！
これで風向きが変わるか。




【8順目】

マッド軍曹が5-4に出現。
そのまま5-5にいるリンを惨殺。
ゲームに勝利するためとはいえ女子供や老人をガンガンぶっ殺さざるをえないこのシステムに80年代ならではのバイオレンスさを感じる。

その頃、ハートが牙大王の加勢に到着。
カチカチ＆ブヨブヨの夢のコンビ誕生だ。

しかしケンシロウへの攻撃はミスに終わり、その隙にケンシロウは柔破斬・・・・のカードが無かったので、北斗残悔拳でハートを返り討ちに。

レイも水鳥拳カードを使用し、どうにかタキを守り抜いた。




【9順目】

ケンが牙大王に北斗壊骨拳を炸裂。
これで体力はお互い3ポイントずつに。

いい勝負のようにも思えるが、牙一族チームのほうが先行であり、かつジョニーが生きている所為でケンシロウが本来の実力を出せない今の状況では、やはりケン達の圧倒的不利な流れに変わりはない。




ここでケン＆レイチームは、考えを変えることにした。

ケンシロウが生きている以上、牙大王はジョニーに攻撃は出来ない。
つまりケンシロウさえ生きていれば、「村人全滅」の敗北条件は起こりえない。
タキが殺され、井戸を占有されようとも、ケンシロウさえ生きていれば負けないのだ。

ならば優先すべきは・・・
タキの命ではなくケンシロウの命！


急げレイ！強敵のもとへ！
水泥棒のガキなんて捨て置け！


人質が妹じゃないと途端に強気なレイ氏


ちなみにこのターンで、マミヤ、アイリともに脱出成功。
本来ならこれでケン達は牙大王相手に有利に戦うことが出来るようになるのだが、ジョニーという人質が同じコマにいる以上、状況に全く変化はなかった。

二人の扱い軽すぎ！！




【10順目】

孤立無援となったタキは、軍曹のニードルナイフを受け死亡。
死に行く中でタキが吐いた隠れ井戸の場所・・・・それは
ケンと牙大王が闘っている所から北に一歩の場所であった。



これはケンシロウにとって大きなチャンス！

ジョニーを見捨て、守る対象を井戸へと変えれば、「同じコマに村人がいると弱体化する」という条件が無くなり、優位に闘いを進められるようになる！
反撃の時間だ！


しかしその井戸の隣には、デビルリバースが。
もしケンが井戸のコマに留まった場合、次のターンでケンはデビルから先制攻撃を受けることになる。体力2の今の状況で、その1撃は致命傷だ。


ならばここでの選ぶ道は・・・・一つしかない！
ジョニーを守るでも、井戸を守るでもない。
デビル退治！この一手だ！

牙大王一人では、ジョニーと井戸を同時に制圧することは出来ない。
ならばケンシロウは、どちらかを捨ててでもまずは援軍であるデビルを片付け、次のターンで生き残った方を守ればそれでいい。
また2マス離れた場所までいくことで、牙大王の移動範囲外となり、次ターンの先制攻撃を回避することができる。

こ　れ　ぞ　神　の　一　手　！




【11順目】

もう村人の命とかいいからゲームに勝ちたい。
最低な非情の闘気を纏いはじめた世紀末救世主。

だがそんな魔道に堕ちた主人公に、神が味方するはずも無かった。



このターンで召還されたのは、スペード。

その初期位置は・・・3-5！牙大王のいる場所！

「牙大王一人ではジョニーと井戸の二つを両方制圧出来ない」というケンの目論みが、助っ人の登場により完全に瓦解してしまうというヤラセのような展開。


更にスペード、そのまま井戸の場所へと進み
成功確率1/3という井戸制圧ミッションを一発クリア！
すげえ！わずか1ターンでMVPもっていきそうな活躍ぶり！




これで牙大王がジョニーを殺せば牙一族チームの勝利だったのだが、ジョニーこれを脅威の粘りで回避。さすが原作でも生きながらえた男。

首の皮一枚繋がったケンシロウはトンボ帰りで3-5へと戻り、牙大王に岩山両斬波を炸裂。トドメにとっておいたのだがもうそんな事は言っていられない。これで体力は2-2に。




【12順目】

ケンシロウのピンチは続く。
牙大王の攻撃を喰らい、遂に残り体力1に。

だがスペード、トドメの一撃を痛恨のミス！
やはりスペードはスペードでしかないのか！


ケンも執念で牙大王に攻撃をヒット！
これで体力は遂に両者とも1！
まさに死闘！



そして運命のレイのターン。
ここでレイが挑むのは「山越え」と呼ばれるシステム。



上の図にある、ケンシロウ達のいるマスの西側に走る山脈。通常、これを飛び越えて移動することは出来ないため、レイがケンの元へ行くには北から迂回せねばねらない。


だが「山越え」に挑み、もしこれに成功すれば
山を跨いで平地同様に進むことが出来るのだ。


その成功確率は1/3。この難関をくぐり抜け、山の向こうにいる牙大王にトドメの一撃を炸裂させられればケンレイチームの大逆転勝利となる。レイにはまだ必殺技カードが残っているので、攻撃成功はほぼ間違いない。つまり山さえ超えられれば勝利はほぼ確定となる。


うーんまさに最高の山場。山越えだけに。
まさか北斗の拳で登山が運命を分かつなんて展開になろうとは。



さあ、運命のマイコンタイム。
果たしてレイはこの山岳を攻略することはできるのか！？



















































滑　　　落




だめでした




【13順目】

ここで敵二人のどちらかが攻撃を失敗すれば再びレイに山越えチャンスもあったのだが、牙大王の頭突きでケンシロウ斃れ、スペードの斧でジョニーも遂に逝った。



ゲームセット！！



村人全滅＆井戸制圧の17点獲得により

WINNER　牙一族チーム！！

MVPはスペードに贈られます！！




漫画的には絶対にあってはならない結末だが、ケンシロウ＆レイのほうも大概外道だったし、まあしょうがないよね。





【総評】

思いのほか白熱した展開になった点からも、かなり良いゲームバランスに仕上がってると思う。どこに敵が出現するか全く解らないために先の展開が読めず、形勢が二転三転するのも良い。どこぞの似たようなゲームとは違い、ルールも非常に明瞭で、マイコン判定もなんだかんだで結構楽しかったりする。今回のような村人生殺し作戦になりがちになルールを少し独自に改良してやれば、何度でも楽しく遊べるだろう。

ただどっちのチームを選んでも多くの村人の命を犠牲にしないと勝利を得ることは出来ない、夢も希望も無いゲームであることは間違いない。