「非情の荒野」
こんなメランコリックなタイトルのゲーム、誰が買うねん。
「タカシ!非情の荒野、買って来たぞ!」って言ってるおじいちゃん、見たことあるか?
しかしこいつは、数ある北斗グッズの中でも私が一番手に入れたかったブツだと言っても過言ではない。勿論商品への興味もあるが、なにより
「入手難度が高い」というのが大きな理由だった。レビュー企画を始めてからはかなりネットオークションの出品物などもチェックするようになっていたのだが、この非情の荒野は全くと言っていいほど出品されなかったのだ。やっと発見したその日はもう全力で入札しましたよ。
それにしても、何故こいつがそれほど入手し難いのか。
現存数が少ないという理由もあるだろう。
だが私は単純に
「人気があるから」ではないかと思う。
人気の理由、それはもう明白だ。
見てこの豊潤たるホクケシの山!!
その数、実に
23体!
これだけでも十分に魅力的なのに、更にこれを用いてゲームまで楽しめるというのだから、そりゃ人気が出るというものである。きっとこの多くの北斗キャラ達が縦横無尽に盤上を駆け巡り、各地で夢のバトルを繰り広げる活火激発な戦略ゲームが用意されているのだろう。
人形には2種類のカラーがある。
こちらは肌色の7体。
なんかケンシロウのポーズに既視感があると思ったら、
カサンドラ伝説のやつの使いまわしでした。どっちが先かは知らんけど。
で、こちらがクリーム色の人形。
通常のキン消しサイズよりも若干大きめ。
正直・・・クオリティは高くないですね。
左の人とかすげえモブ雑魚っぽい雰囲気を醸してますが、一応
レイです。
本日のピックアップ・フェイス
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こちらはKING軍団5名。
本日のピックアップ・フェイス2
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本日のピックアップ・フェイス3
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どうでもいいけどこのシン、
写真によって目玉の向きが変わるんですけど。
超こええ
マジでどういう仕組み?
こちらはGOLAN3名とジャッカル&デビル。
大佐、軍曹はともかく、少佐がこういうのに選ばれるのって珍しい。
本日のピックアップ・フェイス4
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本日のピックアップ・フェイス5
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残りの面子。
右上のは肩当っぽいのしてるからアミバだと思ったのだが、よくよく見返してみると、アミバが老人の足をアレした所を嗜めるトキの格好↓ではないかという結論に至りました。
「トキとアミバの見分けがつかないとかケンシロウかよ」
と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが
本日のピックアップ・フェイス6
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微妙すぎる
私的には6:4……いや7:3でアミバかな
以上がこのゲームに付属されている23体の人形です。
ここでひとつ、別の北斗グッズも御覧頂きましょう。
ほぼ同時期にバンダイから発売された
「地獄の拳士 第一巻」です。
人形のラインナップが全く一緒!
数も丁度23体で符合するし。
これを流用して非情の荒野を作ったのか。
それとも非情の荒野で作りすぎた人形を包装を変えて販売したのがコレなのか。
真相は不明だが、それに気付かずに両方を購入してしまった当時のお子様の哀しみたるや凄まじかったであろう。ま、両方手に入れるガキなんて金持ちだから別に気にしなくてもいいだろうけど。
上記の通り、このゲーム最大の魅力である人形群は、フェイス的にちょっと残念な部分もあるわけだが、こいつの魅力は他にもある
それが、ゲームで使用するこの
ジオラマだ。
タイトル通りの"荒野"を再現した造形となっている。
付属のホクケシは勿論、同サイズの他の人形を使っても非常に"しっくりくる"シーンを作り出すことが出来る。所有者の声を見てみると、写真撮影を行ったりする際にかなり役立つらしい。
四隅の高い岩山、中央の低い岩山を利用すれば、色々と妄想が捗る構図も作り出せるよね。
パッケージに使われているケンとマッドの対峙もが良い使用例だと思う。
DBのベジータ戦を髣髴とさせる、名場面的演出だ。
何故マッドなのかは不明だが。
箱側面には、彩色した人形を使ってのジオラマ使用例も載っているのだが
カオスすぎて何がなにやらわからん。
これは悪い例だと思います。
その他の付属品もサラッと御紹介。
こちらの花びら大回転は、組み立てて先程のジオラマの台座にする部分らしい。
盤の四方にはゲームに使用する奥義表が。
岩山両斬波と北斗七死星点が当ゲームにおける最大威力技らしい。
七死星点っつったらアレですよ。
「呼吸法によって極限にまで力を溜め深く秘孔を突き全ての肋骨を内側にへし折る」という北斗神拳の中でも屈指の威力を誇る奥義ですよ。極限まで力溜めて秘孔突くんですよ。あのデビルを一撃で葬る破壊力ですよ。
それに岩山両斬波が比肩するというのか!?
やけに評価高いな・・・
こちらのボードがメインステージ。
ジオラマの上に嵌め込んで使うらしい。
表と裏でそれぞれ別のゲームが愉しめるらしい。
残りは、お馴染みの四人のコマと、
キャプテンアメリカの盾みたいなデザインの紙チップ。
以上が全ての部品となります。
うーん・・・なんか人形の方が豊潤すぎて・・・
肝心のボードのほうが凄くアッサリした感じがするなあ。
まあ、とりあえず実践あるのみだ。
早速プレイしてみよう。
と思って、説明書に目をやったのだが・・・・
ん? なんだこれ……
えっ……まさか……
これが説明書!?
このA4の片面紙が当ゲームのルールの全てだと言うのか!?
最近のTVゲームの説明書でももう少しあるぞ!?
あの豪華セットをこの単純ルールで活かしきれるのか!?
しかもこの短い中で
2種類のゲームの説明してるし、おまけに最後には
「ジオラマで遊ぼう」とかいう全く不要な紹介まで入ってるから更に内容薄まってるじゃねーか!
●ゲーム1「カサンドラスクランブル」
2〜4人用。
各プレイヤーが4個ずつ所持している「星」を相手と奪い合うゲーム。
タイトルが秀逸だ。
プレイヤーは
ケンシロウ、シン、レイ、トキの中から自分のキャラクターを選択。ジオラマの四隅にある
「正義の山」という名の高台にそれぞれの人形をセットし、そこをスタート地点として、サイコロの目の数だけマスを進行していく。
正義の山にシンが居ていいのか?
ちなみに高台に上るのは開始時のみ。
スタートして一度降りると
完全に不要になる。
この大味な感じ、好き。
最初は外周の紫色のマスを進行。(画像の黄線)
このルートには
対決マスがあり、ここに止まるとバトルが勃発。
マスに記されている相手と同時にサイコロを振り、
出た目と、左図の奥義表を照らし合わせ、技の
「強度(星の数)」が高いほうが勝利となり、相手から星を奪うことができる。
もし★3の技で★1に勝利した場合は、その差分である星2個を奪うことが出来る。
対決は、プレイヤーが同じマスに止まった場合にも発生する。
黄色の丸のマスに止まると、強制的に、もしくは1/2の確率で、内側の緑色マスゾーンへと突入。青丸のひでぶマスで退去させられるまでは、以降はこの内周を進むことになる。
内周には、リン達4人が人質として捕らわれている
「ワルの丘」があり、ここに止まると彼らを解放することができる。解放すると彼らのチップを頂戴し、星1つ分として勘定する。
空白となった丘は沼へと変化。
以降そこに止まってしまうと
二回休みとなる。
更にその動けない状態の時に他プレイヤーに同じマスに止まられると星一つを無条件で奪われるという憂き目に遭う。
こうして醜い星の奪い合いを繰り返し、
最初に星を7つ揃えた者が勝者となる。
うん・・・・・・・ま、
普通だ。
とりたててコメントしようもない。
ルールにほぼ北斗の拳が関係無いのがね・・・
タイトルと人形しか北斗要素が無いんだもん。
シンがバットやリンを解放してポイントゲットとか言われても、釈然としねえ。
ゲームとしても、戦略的要素が全く無い完全なる運ゲーだが、まあスゴロクってなそういうもんだしなぁ。あまり複雑にしても子供は食いつかないよね。早く終わりすぎる事も無く、そこまでダレることない、良いバランスに仕上がっているんじゃないかしら。
まあ問題は、
人形を4体しか使わない事だね。
あと19体の人形、どうすんだよこれ。
完全に余剰アイテムじゃねえか。
次のゲームではちゃんと出番あるんだろうな?
●ゲーム2 「シンvsケン 真剣勝負」
オヤジギャグだー!!
オヤジギャグが出たぞー!!
こちらも2〜4人用ゲーム。
先程のカサンドラスクランブルで使用したボードを裏返して使う。
23体の人形の中から好きな自駒を選び、各スタートゾーンに設置。
スタート位置にはそれぞれ3つのサイコロの目が書いてあり、サイコロを振ってその目が出たら一歩前進。右回り順にサイコロを振っていき、
三歩進んだ位置にある「対決ゾーン」に誰かが辿り着いた時点でターン終了となる。
到達者は、「親」になり、他のプレイヤー全員と対決。
対決方法は先程のカサンドラスクランブルと同じ。サイコロの目で出た技の星の数で勝負し、勝ったものはその星の差分だけ相手からポイントを奪うことが出来る。到達者のサイの目が1だった場合はボーナスで全員から無条件でポイントを1つずつ奪うことが出来る。
全対決が終ったらスタート位置に戻り、次ターン開始。
これを繰り返し、誰か一人のポイントがゼロになった時点でゲーム終了となる。
以上!!
うん!つまんねえ!!
駆け引きも逆転要素もないからコクも深みも無い。
まごう事なきクソゲーである。
ていうかジオラマ、一切使用してねえし!
邪魔なだけだし!
まあ、印刷面が二色カラーになってる点を見ても、こっちのゲームは全然力入れられて無い、無理矢理ねじこまれた「オマケ」だってことは明白だからなあ。ルールがちゃんと練られてないのも当然っちゃ当然なんだよなあ。
つか、最初にキャラの指定が無いって事は、人形の中から自由に駒を選べるってことで、それつまり
「シンvsケン」なんて謳ってるくせに、シンもケンも全然ゲームに関係ないってことだよね。
クラブや少佐をマイキャラに出来るというレア体験ができるというのはプラスポイントだけど、逆に言うと、どのキャラを選んでも全く関係ない・・・つまりさっき以上に北斗要素ゼロのゲームであることの裏返しでもあるんだよな・・・。
しかし御安心ください。
先程のゲームで持て余した数多の人形、
今回はちゃんとゲームに活かしております!
なんと
今回のゲームで取り合うポイントが、人形になっているのです!
開始前に各プレイヤーに均等に人形を配り、花いちもんめが如く奪い合うのです!
相手からどのキャラクターを強奪し、自分のチームの中からどいつを切り捨てるのか・・・。やり方によってはかなり面白そうなゲームになりえる要素ではある。しかし残念ながらこのゲームでは
ケンシロウでもジードでも1体1点でしかないため、個々の魅力は全くない。オンリーワンなど存在しない。人類皆平等。人間の命に重い軽いなどないというバンダイからの有難い教えなのだ。
そしてそれは北斗の世界だけには留まらない。
人の命の重さは、作品の枠を超えても変わらない・・・・
それを証明したのが、説明書の中のこの一文だった。
「キン肉マン人形などもまぜて」って……
それ言っちゃう?言っちゃうんだ?
何が凄いって、これで遊ぶ人が
キン消し持ってんの前提で言ってるところが凄いよね。こんなマイナーゲーム持ってんなら、当時バカ売れ中だったキン消しなんてモチロン持ってんだろおめーらって事だからね。傘とか醤油レベルで何処のご家庭にもあるって認識なわけですよ。いやもちろんうちにもあったけどさ・・・
北斗ボードゲームの中でも随一のレア度を誇るこのゲームは、23体ものホク消しは全くと言っていいほど使いこなせなかった代わりに、キン消しの偉大さはだけ十分に示してくれた、謎のゲームなのでありました。
【総評】
正直、多くの北斗グッズの中でもかなり期待していた一品だったのでレビューやるのも最後の方にとっておいたんですが、なんとも残念な結果に。おそらくは人形ありきで後から無理矢理作った突貫ゲーム故の手抜き仕様なんだと思いますが・・・。最悪、つまんなくても北斗要素へのツッコミどころが豊富ならネタにもなるんですが、それすらさせてもらえないという・・・・。不本意ながら普通の文句しか出てこないんですよね。なんともレビュワー泣かせのゲームよ。
しかしこのゲーム、発想力を育てるには最適だと思うんですよ。こんなクッソつまんねえゲームやるくらいなら自分でルール考えるわ!ってね。そして実際にそうやって遊んだほうが面白い事に気付き、どんなゲームでもメーカーが示すルールに従って遊ぶだけでは勿体無いということを知るのです。普段はそんなことを考えもしない子供でも、このゲームの初見の「ワクワク感」と、実際のゲームの「ガッカリ感」の大きな落差が、それに気付かせてくれるわけですね。クリエイティブに富んだ天才が生まれるのには、案外こういうクソゲーが起因しているのではないかと私は思います。何のフォローにもなりませんが。