ストーリー | 登場人物 | 流派・奥義 | STAFF |
全ての警告は真実だった。 全ての予言は現実となった。 核戦争により崩壊した混沌の世界を、恐怖が支配していた。 かつての誉れ高き拳法の印、南十字星の幟は、今や恐怖政治の象徴となった。 この世に残された只一つ希望は、北斗七星の拳、北斗神拳であった・・・ |
南斗聖拳の男、シン。彼には、この荒廃した世界の王となるという野望があった。そんな彼にとって最も邪魔な存在・・・それは、南斗と対を成す北斗の者であった。先代北斗神拳伝承者リュウケンを銃殺したシンは、その後一年を待たずして圧倒的な権力を手に入れた。彼の造り上げたサザンクロスの街は、新世界を支配するまでに台頭し、世はシンの軍団・クロスマン達の支配下に置かれたのであった。 宮殿の北300キロにある村、パラダイスバレー。そこでは、崩壊した世界の中で、たくましく暮らす人々の姿があった。そしてその中には、目の見えない少女リンと、兄であるコソ泥バットの姿もあった。 村の中にバイクの音が響き渡った瞬間、人々の顔は恐怖に慄いた。その音は、クロスマン達の襲来の合図だったのである。彼らが去った後、そこに残されていたのは、数多くの人々の死骸と、炎上するトラックの残骸であった。そして追い討ちをかけるかのように、酸を含んだ「死の雨」が、村にふりそそいだ。炎に焼き尽くされた地球は、今や人類の墓場とも言うべき姿へと変わり果てていたのだった。 |
砂嵐の中を旅する一人の男。民家で宿を借りたその旅人は、翌朝、女性の叫び声に目を覚ました。突如現れた三人のクロスマンが、この家に住む夫婦の妻・ジルを無理矢理犯そうとしていたのである。男達がジルを家の中へ連れ込もうとしたその時―――扉を破って放たれた蹴りが、一人の顎をひん曲げた。瞬く間にもう一人を倒したその旅人は、残る一人に高速の拳を叩き込む。撫でるかのようなそのパンチは、くすぐっているようにしか見えなかった。だが次の瞬間、その悪党の頭は異形に膨れ上がり、ボンと爆ぜた。最強の暗殺拳、北斗神拳。人体にある経絡秘孔を突くことにより、体の内部からの破壊を極意とした一撃必殺の拳法。その男―――ケンシロウは、この世に残された唯一の北斗神拳伝承者であった。しかし、彼は未だ己の宿命に目覚めてはいなかった。胸の傷に残る苦悩と葛藤を抱え、ケンはただ荒野を彷徨い続けていた・・・ 食べ物を求め、シンの宮殿を徘徊する一人の男。彼は、かつてシンと同じ南斗聖拳の伝承者の一人であった。男の力を認めていたシンは、彼をこの城に繋ぎとめ、自らの野望に協力させようとしていたのだ。しかし男は、シンの圧政に手を貸すことなど出来なかった。この城を出たければ、俺を倒せ。煽るシンの言葉に覚悟を決め、全力の攻撃を叩き込む男。だがいくら攻撃しても、シンの身体に傷一つつけることは出来なかった。闘気を込めたシンの突きを叩き込まれた男は、身体のいたるところから血を噴出し、骸となってその場に倒れたのであった。 |
ねぐらへと帰ってきたリンとバットは、そこで雨宿りをする一人の男―――ケンシロウと出会う。リンが盲目である事を知ったケンは、リンのこめかみを軽く突き、去って行った。それはケンが父リュウケンから教えられた技、経絡秘孔と呼ばれるものであった。リンの目には、毒の雨の中を平然と去っていくケンシロウの姿が、ハッキリと映っていた。 サザンクロスに捕らわれる女、ユリア。シンが権力を握ったのも、すべては彼女のためであった。文明の力を取り戻し、光の時代の中でユリアと生きる。それがシンの描く未来であった。だがユリアはそれを否定した。野望を実現させるためには、大勢の人の命が失われることを、彼女は知っていた。ユリアの心は、今でもまだ、ケンシロウという名の過去に囚われ続けていた・・・ ケンシロウの心は、憎悪と復讐の炎に支配されていた。そんなケンに、亡霊となったリュウケンが語りかける。運命を拒んではならない。私が死んだ今、"北斗の拳"となったお前の運命は、人々の希望となる事なのだと。だが、今のケンにはその運命を受け入れることは出来なかった。 リュウケンの言葉を振り払うかのように、修行に励むケンシロウ。だがその時、遠方で盗賊達の声が響いた。廃墟となった遊園地でクロスマンに絡まれていたのは、あのバットであった。妹のリンに頼まれ、ケンシロウの後を追いかけてきたのである。リンを動かしたのは、村人の身体に憑依したリュウケンの言葉であった。ケンシロウの閉ざされた心の扉を開くこと・・・それが幼きリンに託された役目であった。 ケンに救われたバットは、クロスマン達との戦いに力を貸してほしいと頼みこむ。だが今のケンには、サザンクロスに向かう以外の選択肢は無かった。なんとしてもケンを連れて行こうとと、必死にその後を追いかけるバットであったが・・・ |
訪れた決戦の時。クロスマン達による、パラダイスバレーへの総攻撃が始まった。血に餓えた男達の前には、恐怖した村人達など敵ではなかった。次々に殺され、焼かれ、捕らえられる村人達。惨劇の中に、リンの悲鳴がこだまする。その心の叫びは、遠く離れたケンの耳にも届いていた。彼らの悲痛な声を止められるのは自分しかいない。父リュウケンの言葉の意味を、今やっとケンシロウは理解したのであった。救世主の宿命に目覚めたケンシロウは、バットと共にパラダイスバレーへと向けて歩き出す・・・ 陥落したパラダイスバレーを、我が物顔で支配するクロスマン達。楯突いてきたリンを躊躇無く断頭台へとかけたジャッカルは、彼女が口にした「ケンシロウ」という名に反応した。彼もまた、ケンシロウと因縁を持つ男の一人であった。 |
水路、鉄道、近代都市・・・。失われた文明を、シンは今、ユリアのために蘇らそうとしていた。しかし、ユリアはそんな世界を望んではいなかった。彼女が求めるもの、それは恋人ケンシロウとの幸せに生きることであった。 一年前・・・ケンとユリアは、共に未来を創っていくことを誓い合っていた。しかし、そこに現れたのは、シンとその部下達であった。ユリアを手に入れ、そして北斗をこの世から抹殺する。それが、シンがこの世の指導者となるための、最初の仕事であった。 嗾けられたジャッカルを、秘孔を突いて撃退したケンシロウ。しかし、シンの南斗聖拳の前には、全く歯が立たなかった。ケンの胸に一本ずつ指を突きいれながら、ユリアに自らへの愛を誓わせるシン。彼女が涙を流してそれを受け入れたとき、ケンシロウの胸には無惨な七つの痕が刻まれていた。 ユリアが大事に抱える小さな袋。それはケンシロウから預かった、花の種が入った麻袋であった。ケンとの繋がりにいつまでも囚われるユリアに、手を挙げようとするシン。しかし、ユリアは何も抵抗しようとはしなかった。ケンシロウと失った今、彼女の心はすでに死人と化していたのだった。 |
かつてケンに秘孔を突かれ、頭の拘束具無しでは生きられない身体と化したジャッカル。彼の心は、ケンへの憎しみで満たされていた。リンが何も話さないことに苛立つジャッカルは、部下のゴライアスに命じ、無理矢理ケンの事を吐かせようとする。だがそのとき、目的の男は、既に村の中へと潜入していた。 ゴライアスを倒し、リンを救出したケン。襲い掛かるクロスマン達も、次々とケンの拳の前に倒されていく。だがその時、建物の中では、悲劇が起きていた。ジャッカルに挑みかかったバットが、ナイフで腹を貫かれていたのだ。続けざまにライフルを手にしたジャッカルは、物陰からケンの頭を撃ち抜こうとする。だがそれを助けたのは、バットの最期の一撃であった。村を、そしてケンを救った英雄は、誇りの中で静かに息耐えたのであった。 ケンがジャッカルに止めを刺そうとしたその時、リュウケンの声が響き渡った。ケンを宿命に導くため、リンの体を借り、今再びリュウケンはケンの前へと現れたのである。復讐のためではなく、この世の秩序を取り戻すために戦う。それが、北斗の男に課せられた宿命なのであった。 |
ケンからの宣戦布告を、シンへと報告するジャッカル。ケンシロウとの戦いが近いことを感じるシンは、ジャッカルにユリアの監視を命じる。だがジャッカルは、シンにこき使われる事に嫌気が差していた。動力室へと連れ込まれたユリアに、ジャッカルの魔の手が迫る・・・ バイクを駆り、サザンクロスへとたどり着いたケンシロウ。襲い掛かるクロスマンの大軍勢を蹴散らしたケンは、遂に宿敵・シンとの再会を果たす。ユリアを取り戻すため、そしてシンの儚き夢を打ち砕くため、ケンは今、死の淵から蘇ってきたのだった。 互いに譲らぬ互角の戦い。だが戦況は、徐々にケンシロウに傾き始めていた。シンに敗れたあの日、既にケンはシンの拳を見切っていたのである。放たれる蹴りの威力に、たまらずダウンするシン。だがその形勢は、たった一言で逆転した。ユリアは死んだ・・・。シンがついたその"嘘"の効果は、あまりにも大きかった。放心状態のケンシロウに、シンの怒涛の反撃が始まる。まるで戦う意思を失ったかのように、一方的に攻め立てられるケンシロウ。闘気の一撃で、両腕を破壊されたケンは、ゆっくりと地面に崩れ落ちた。だがその時、ケンの目があるものを捉えた。石廊の裂け目から生えた一本の芽・・・。それは、かつて己がユリアに託したあの種の芽であった。 逃げ惑うユリアを捕らえ、その顔を嬲り続けるジャッカル。だが、今のユリアの目には生きるための力が宿っていた。この宮殿の中にいるケンがいる・・・その事を知った今、ケンともう一度会うまで、ユリアは死ぬわけにはいかなかった。ジャッカルの頭を覆うバンドを掴んだユリアは、その端を歯車へと絡ませる。力に負け、バンドが外れた瞬間、ジャッカルの頭は一年前のケンの秘孔により、弾け飛んだ。勝ったのは、ユリアの執念であった―――。 再び立ち上がってきたケンの気迫に、シンの闘気はかき消された。覚醒したケンシロウの攻撃を全くガードできず、その身に受け続けるシン。北斗の男として・・・ケンの拳が倒したのは、南斗の男ではなく、ただの野望に狂った一人の男、・シンであった。 ユリアは死んだ。シンは、最期の問いかけにもそう答えた。シンに止めを刺し、哀しみの中、サザンクロスを去ろうとするケン。その行く手に、クロスマンの残党が立ちはだかる。だが次の瞬間、彼等は一斉に跪いた。ケンの背後にあったのは、生きたユリアの姿であった。 |
ストーリー要点抜粋&考察 | |
|