ZERO ケンシロウ伝 |
ストーリー | 登場人物 | 流派・奥義 | STAFF |
この世に平和が戻った後―――。 黒王号に乗って旅立ったケンシロウとユリアは、廃墟となった教会へと辿り付いていた。そこは、ケンがかつてユリアとの結婚の契りを交わそうと夢みた場所であった。時を経て、今、二人だけの結婚式が執り行われる。レイ、トキ、ラオウ、ジュウザ、サウザー、シュウ、リュウガ、リュウケン・・・。二人の幸せを願う男達の、祝福の鐘を鳴り響く。だが、その幸せが永遠ではない事を、二人は知っていた。死の病に犯されたユリアには、もう僅かな時間しか残されていなかった。だが命尽きる前に、ユリアはどうしても聞いておかなければならない事があった。ケンシロウが歩いてきた、救世主としての生き様を。いつかそれは、伝説となって語り継がれる。ユリアの中に宿る、新たなる生命によって・・・ |
ユリアを失った絶望の中、ケンシロウは一人荒野を彷徨っていた。シンに受けた傷で動くことも出来ず、身を横たえるケンシロウに、餓えた狼が一斉に襲い掛かる。だが次の瞬間、狼たちは血飛沫を上げてその身を飛び散らせた。北斗神拳―――。その拳の伝承者が背負う救世主としての宿命に、ケンは未だ目覚めてはいなかった。 斃れたケンシロウの姿を発見したのは、ヤマンとサヤの夫婦と、その子供のダンとアモの一家であった。まだ息があるとしてケンを救おうとする四人であったが、その背後には刃を手にした男たちが迫っていた。賊のリーダーの名はグルマ。奴隷商人であるその男は、各地を回って商品となる奴隷をかき集めている男であった。早速ヤマン一家を「商品」として捕らえたグルマは、さらにケンシロウの狼殺しの腕前を見込み、奴隷売買の街「ゲッソーシティー」へと運ぶのであった。 先に捕らわれていた老人フウゲンと共に、グルマの店の牢屋へと閉じ込められるヤマン達とケンシロウ。家族が囚われの身となったことに、己の無力さを嘆き、涙を流すヤマン。その時、意識のないはずのケンシロウの目にも、哀しみの涙が流れていた。 『狼殺しの戦士』として大々的にケンシロウを売り出そうとするグルマ。だがその時、この街を支配する将軍シスカから、グルマに呼び出しが入った。かつてシスカは、パソコンソフト会社の課長に過ぎない男であった。だが核戦争の後、自分だけがパスワードを知る浄水装置を占領し、この村の支配者となったのである。かつてその会社の社長であったグルマも、今やシスカの部下に成り果てた、可哀想な男なのであった。売り上げが落ちているとしてシスカにいびられたグルマは、なんとかしてケンを高値で売ろうとする。しかし、傷だらけで横たわる男に、客は誰も興味を示そうとはしなかった。 お前の甘さではユリアを守っていく事はできない。悪夢の中のそのシンの言葉で、ケンシロウは目を覚ました。自らの置かれた状況を理解し、ヤマン一家に礼を述べるケンシロウ。未だ素性が知れぬとして警戒を解かぬヤマンであったが、アモはそんな父に言った。父の涙に呼応し、自らも哀しみの涙を流したこの人は、優しい人に違いない、と。 |
グルマの店に難癖をつけてきたのは、向かいに店を構えるジニアであった。客を巡り対立する二人は、決着をつけるため、互いの店の奴隷を戦わせるという方法を選択。グルマ側の代表は、勿論ケンシロウであった。 翌日、街の闘技場には、ジニアによって多数の観客が集められていた。大衆の前でグルマの店の評判を貶めることで、店ごと自分のものにしようと企んだのである。その中には特等席で観戦するシスカの姿もあった。だがその頃―――、警備が手薄になったシスカの城に進入する謎の二人組の姿があった。 ケンシロウの相手として連れて来こられたのは、熊殺しを自称する巨漢ガデスであった。半ば負けを確信するグルマは、負けたときの言い訳のため、ケンに手錠を外さず戦うよう命じる。これでは勝てるはずがないと絶望を感じるダン達であったが、只一人、フウゲンだけはケンシロウの勝利を確信していた。 開始の合図と同時に、ガデスの強烈な体当たりで吹っ飛ばされるケンシロウ。だがケンの身体にダメージはなかった。続けざまに振り下ろされた剣を、手錠の鎖で絡めとったケンは、ガデスの額に指を押し当てる。しかし―――ガデスの身体には何の変化もなかった。傷が快復しきっていないケンには、まだ正確に経絡秘孔を突く事が出来なかったのである。だがそれでも、ケンにとってガデスは敵ではなかった。奪った剣を蹴飛ばし、ガデスの足を止めたケンは、そのまま顔面に回し蹴りを叩き込んで勝負を決したのであった。 一方、城に潜入した昆虫姿の二人組は、シスカのパソコンにまで辿り付いていた。そのモニターに映っていたのは、この城に捕らわれている人々の姿であった。シスカは村人たちの家族を人質にとることで、民の反乱を防いでいたのである。そしてもう一つ、シスカはこの街を吹き飛ばす爆弾という奥の手を持っていた。昆虫男達の狙いは、己達が仕える"ある男"のため、その爆弾の起爆装置を奪うことであった。 ケンシロウの派手な勝利により、グルマの店は野次馬で溢れかえっていた。一転して客に強気に出るグルマであったが、ケンの強さは、店主と奴隷の立場を逆転させてしまう程のものだった。己とヤマン一家、そしてフウゲンをセット販売にしろ―――。そのケンの命令に、もはやグルマは逆らう事はできなかった。これでもう一家が離れ離れになる事はない。そう考えての提案であったが、フウゲンはそのケンの行為に疑問を投げかけた。弱き者達は、いずれまた奴隷として捕らえられる。あのガデスも、傷が癒えればまた誰かをその手にかける。ケンのしたことは、強者の一時凌ぎの身勝手に過ぎないのではないか、と。己の甘さを指摘されたケンシロウに、返す言葉は無かった。 |
軍閥の王として覇を唱える男、ジュガイ。ゲッソーシティを我が物にせんがため、昆虫男たちを送り込んだのは、この男であった。だがジュガイは、その昆虫男の一人が持つ謀反の殺気を見抜いていた。襲い掛かってきた昆虫男の身体を、ジュガイの拳が一撃で切り刻む。それはまさしく、あの南斗聖拳の切れ味に他ならなかった。 翌朝、ゲッソーシティの城壁は、圧倒的な数のジュガイ軍よって取り囲まれていた。食糧と女を差し出して追い返すよう命じるシスカであったが、門を出た奴隷達は、一瞬にして矢に撃ち抜かれた。それは、ジュガイ軍がいつもの「たかり」に来たわけではなく、本気でこの街を落としに来たのであるという意思表示に他ならなかった。 籠城戦になれば水が豊富な街側のほうが有利―――。ゲッソーシティの人々はそう考えていたが、ケンはその村の水から毒の臭いを嗅ぎ取った。既に井戸の周りには、水を飲んで死に絶えた人々の死骸が散乱していた。すべては、籠城を長引せまいとするジュガイ軍の所業であった。あまりの惨劇に、言葉を失うダン。そんなダンの目を覆いながら、ケンは言った。女のお前には耐えられぬ光景だ―――と。男の格好の下に隠された少女の本性を、ケンは見抜いていたのだった。 |
もはやジュガイ軍との決戦は避けられないとして、兵や民達に戦闘の準備を命じるシスカ。家族を人質に取られている民達には、それを拒む権利などなかった。それは、2歳になる息子を囚われたグルマもまた同じであった。皆を救うにはシスカを殺すしかない―――。そう決意したケンは、未だ万全ではないその身体を押し、シスカの城へと向かおうとする。だがそれを制したのはフウゲンであった。フウゲンは、かつてシンに拳を教えた、南斗孤鷲拳の先代伝承者であった。フウゲンの足の腱を切り、そしてユリアの強奪したシンの狂気も、この時代が生み出した心の歪みに他ならなかった。南斗乱れる時、北斗現れり。この暴力の世界を終わらせることがケンシロウの宿命であると、フウゲンは感じていた。そして今のケンシロウの状態では、シスカを暗殺する事は出来ないであろうことも。今は逃げろ。そう告げるフウゲンであったが、ケンシロウの「甘さ」はそれを許さなかった。ダン達やこの街の人々を見過ごす非情さを、ケンシロウは持ち合わせてはいなかった。 警備兵を眠らせながら、シスカの城内を進むケンシロウ。だがシスカの寝室へと踏み込んだその時―――、二人を隔てる鉄格子が降ろされ、ケンの周りを警備兵が取り囲んだ。ケンの姿は、防犯カメラによって全て捉えられていたのである。この街の全てを吹き飛ばす起爆装置―――。そのボタンに指をかけるシスカの前に、もはやケンシロウは何もすることが出来なかった。 翌朝、村の広場にあったのは、痛めつけられ、張りつけにされたケンシロウの姿であった。シスカに反逆した者はこうなる―――。それを思い知らせるための極刑であったが、人々はそのケンシロウの姿に、もっと別の思いを抱いていた。己達の為に命を賭けたケンシロウの行為に、彼等は久しぶりに「人間らしさ」を感じていたのだった。 |
ジュガイ軍との決戦が迫る中、ダンもまた戦場へと赴かんとしていた。サヤとアモを人質に取られた今、彼女もまた、シスカの兵士として戦わねばならない立場にあったのである。磔にされるケンに駆け寄ったダンは、その左腕のバンテージを千切り、自らの腕に巻きつけた。それは、戦場に向かうための「勇気」をケンシロウから分けてもらおうという、少女"ダンネ"の想いであった。 門を爆破し、一気に街中へと攻め入るジュガイ軍。迎え撃つシスカ軍との、血で血を洗う闘いが繰り広げられる。そんな中、ケンのもとへと訪れたフウゲンは、敵の親玉―――ジュガイについて語り始めた。なんとジュガイもまた、かつてのフウゲンの弟子だったというのである。だがシンと互角の腕を持っていたにもかかわらず、ジュガイは伝承者への道を閉ざした。盗賊に妻と子供を殺されたジュガイは、その者達の命を奪い、活人拳としての禁忌を犯したのである。そしてジュガイは悟った。この世は地獄。血塗られた己には、もはやその地獄の主となるしか生きる道が残されてはいないことを・・・ その時、遂にケンシロウ達のいる広場にまでジュガイ軍が攻め込んできた。放たれた無数の矢が、ケンシロウに向けて飛来する。だがその危機を救ったのは、グルマ達、ゲッソーシティの人々であった。己達のために命を張ってくれたケンシロウを、今度は自分達が守る―――。民衆の心を動かしたもの、それは彼等が、ケンシロウという男に見た「救世主」としての希望であった。ケンの盾となり、その背に矢を受けたグルマは、ケンシロウという希望に息子の事を託し、絶命。天がお前を生かそうとしている―――。そのフウゲンの言葉を聞いたケンシロウは、かつての師の言葉を思い出していた。 おまえがこれより第64代北斗神拳伝承者じゃ。あの日、リュウケンはそうケンに告げた。ラオウやトキより劣る自分が何故伝承者なのか、ケンシロウは判らなかった。ましてやその甘き性格は、とても暗殺拳の使い手には相応しくないように思えた。しかし、リュウケンは言った。北斗神拳は死神の拳。死神は私情ではなく、世の為に人を殺す。死神でありながら、人間であり続ける事・・・それが出来るのはケンシロウしかいない。それが、リュウケンの聞いた天の声であった。 哀しき者達の祈りに応える『救世主』となる事・・・。それが北斗神拳伝承者に課せられた宿命。それを知ったケンの目には、いつしか涙が流れていた。轟く雄叫びに応えるかのように、天空からの光がケンに穿たれる。それはまるで、天がケンシロウに力を与えているかのようであった。サウザー、トキ、そしてラオウ。遠く離れた猛者達も、いまこの瞬間、天に導かれた『救世主』の誕生を感じていた。 |
寝返った熊殺しのガデスを先頭に、街の中へと侵攻するジュガイ軍。だがその時、爆音と共にケンシロウが姿を現した。リベンジとばかりに襲い掛かってきたガデスに対し、再びケンの指が額を捉える。結果は、あの日とは違っていた。寸分狂わぬ経絡秘孔を突かれたガデスは、血飛沫と共にその身を四散させたのであった。 たった一人、ジュガイ軍の大軍勢に向けて歩き出すケンシロウ。後を追おうとするダンネを制止し、フウゲンは言った。もはやケンシロウの前には、何千何万の大軍も意味を成さないと。そして人々は目撃した。無数の矢を跳ね返す二指真空把。目にも留まらぬ速さで敵を薙倒す軽功術。鬼神の如き強さを持つ一人の男の前に、ジュガイ軍は完全に圧倒されていた。 思わぬケンシロウの活躍に、モニター室で歓声を送るシスカ。だがその背後には、あの昆虫男の姿が迫っていた。シスカがもつ起爆装置は二つ―――。先日の潜入でその片方を手に入れていた昆虫男は、もうひとつのリモコンをシスカが晒すその瞬間を待ち続けていたのである。手首もろともリモコンを奪われたシスカに、もはや抵抗する術はなかった。浄水装置のパスワードを吐かされたシスカは、もはや用済みとばかりにその身体を貫かれたのであった。 相手が北斗神拳の伝承者だと知っても、ジュガイは全く怯まなかった。シンに女を奪われたような男に己が負けるはずがない。そう確信していたのである。だが、かつてケンに敗北を与えたあの南斗獄屠拳も、今のケンシロウには全く通用しなかった。あの日、シンに敗れたケンシロウとは何もかもが違っていた。無数の拳を放ちながら、二人の身体が宙で交錯する。勝ったのは―――ケンシロウであった。ジュガイの身体に浮かび上がった無数の拳痕は、確実に致命の秘孔を捕えていた。それは、天が命じるがままにケンが放った、無想の一撃であった。 届けられた起爆リモコンを、ジュガイはケンシロウへと託した。彼もまた、ケンシロウが持つ時代を変える力を見抜いていたのである。その甘さがどこまで通用するか、地獄の底から見物させてもらう。そう言い残し、ジュガイはゆっくりとその場に崩れ落ちたのであった。 訪れた真の平和に歓喜するゲッソーシティの人々。家族の下へ走る者達の中には、笑顔のダンも姿もあった。だがその時―――悲劇が訪れた。事切れる直前、玉座に隠してあった最後の起爆装置を、シスカが起動させたのである。轟音とともに、凄まじい衝撃と炎がゲッソータウンを包み込む。数刻後―――、瓦礫の中から這い出たケンシロウが見たのは、すべてが失われた街の残骸であった。信じられぬ目の前の光景に、呆然とするケンシロウ。そんなケンに、フウゲンは最後の力を振り絞り、告げた。我等が哀しみを、祈りを心に刻め。さすれば我等がお前の盾となろう。それが哀しみを背負うという事なのだ、と。人々の死を乗り越えて歩む救世主の道・・・・。崩れ落ちたゲッソーシティには、いつまでもケンシロウの慟哭が響いていた。 |
そしてケンシロウは再び荒野へ。 村人たちの罠に捕らえられたケンシロウは、村の牢屋で、バット、リンと出会う。 リンが言葉を失っている事を知ったケンは、そっと触れ、言った。 「あとは彼女の心しだいだ。」 村に攻め入る盗賊集団『Z』。 捕らえられたリンは、歩み寄ろうとするケンに向かい、叫ぶ。 「ケーン!! 来ちゃだめーーーーっ!!」 彼女に声を取り戻させたもの、それはリンの心の叫びと、ケンの北斗神拳であった。 「北斗百裂拳」 無数の拳に吹き飛ばされたZEEDであったが、まるで痛みはなかった。 だが彼が再び身を起こしたとき、ケンシロウは言った。 「おまえはもう、死んでいる」 |
ストーリー要点抜粋&考察 | |
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