
1800年前の三国志の時代…。
李に銃をつけつけ、閻王の居場所を吐かせようとする禁衛隊。だが彼等は知らなかった。その場に居合わせた冴えない教師・拳志郎こそが、かつて閻王と呼ばれた男であることを。
その日の夜、皇帝溥儀のいる赤坂離宮に、一人の男が侵入した。見張りたちを全滅させ、溥儀の前に立ったその男は、まさに溥儀が求めていた男・閻王であった。だが勿論、拳志郎は、溥儀の禁衛隊に加わりにきたわけではなかった。朋友である李を命の危険に晒した溥儀に、報いを受けさせに来たのである。だがその理由を聞いた瞬間、溥儀は大声を上げて泣き始めた。今や名ばかりの皇帝である溥儀にとって、朋友と呼び合える拳志郎と李の関係が、何より羨ましかったのである。死すならば闘いの中で死にたい。一人の男として戦いを挑んできた溥儀に、拳士としてそれに応える拳志郎。秘孔を突かれ、意識を失う溥儀であったが、拳志郎はその命を奪ってはいなかった。それは閻王が、溥儀はまだ死ぬべきではない男だと認めた証であった。
拳志郎が駆けつけたとき、既に李は力なくその身体を横たえていた。李を利用した金克栄に怒りを覚えながらも、かつての拳力比べの際の非礼を詫びる拳志郎は、改めて「北斗神拳伝承者」として闘いに臨む。だが対峙した瞬間、金の身体を、見えない何かが縛りつけた。金が持つ拳法家としての本能が、二人の格の違いを、そして自らの死を感じていたのである。迫り来る拳志郎の拳を前に、ピクリとも身体を動かす事のできなかった金は、ただ為すがままに秘孔を突かれ、敗北したのだった。
数日後、友人である北大路剛士に旅立ちの報告を済ませた拳志郎は、上海行きの船が出る横浜港へと訪れていた。だがそこには、怪しく目を光らせる男たちが屯していた。閻王が日本にいる情報を掴んだ紅華会の面々が、日本に部下を送り込み、網を張らせていたのである。見送りにきた北大路の娘・綾に、彼等の手が伸びようとしたその時、一人の少年がその危機を救った。彼の名前は霞羅門。幼くして北斗神拳を使うその少年は、綾を守るために拳志郎が遣わせた、彼の弟であった。
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| 霊王編≫ |