
雨中を進むケンは、荒天に浮かぶユリアの泣き顔を見る。とその時、黒王はその歩を止めた。幾多もの戦いの中を潜り抜けてきたその戦士にも、最期の時が訪れたのであった。次の瞬間、突如ケンの七つの傷が光ったかと思うと、落雷によって足元の崖が崩落した・・・
駆けつけたマミヤと共に帰路につくバット。しかしその道中、二人は無残に殺されたゾルド軍の死体の山に遭遇した。彼等は目を一文字に切り裂かれ、ケンと同じ胸に七つの傷をつけられていた。殺人鬼の名はボルゲ。かつてケンシロウに敗北し、目の光を奪われた男であった。復讐の鬼と化し、ケンシロウを追い続けるボルゲは、自らの憎しみを表現するためにゾルドにも同じ処刑を行うのだった。今のケンではボルゲに勝てないかもしれない。そう思ったバットは、自らの胸に七つの傷を作り、自らがケンの身代わりとなる事を決めた。自分がボルゲに勝てればそれでいい。負けてもそれでケンが死んだことになれば、ケンに危害は及ばない。それがケンとリンへの恩を返すために選んだ、バットの死に様であった。
自らのために命をも投げ出してくれたバットの心に涙するケン。おまえは俺にとって弟だ。それは、ケンを兄と慕い続けてきたバットにとって最高の賞賛であった。その涙を怒りへと変えたケンの拳が、ボルゲに炸裂する。装甲に装甲を重ねた頭部をふっ飛ばされるボルゲ。だが
バットの望んだ通り、ケンと共に旅立とうとするリン。しかし、リンはその歩を止めた。リンは今初めて気がついたのだった。自分が誰を愛すべきなのかということを。バットの元へと駆け戻り、その最後を己の手で送ろうとするリン。しかしその身を抱きしめた時、リンはバットの体から聞こえるかすかな鼓動を捉えた。それは、ケンの秘孔が起こした奇跡であった。ケンが見上げた空には、笑みを浮かべたユリアが映っていた。完
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| ≪ブランカ編 |