
レイが死んで数日後の朝。ケンは、眠るバットとリンに別れの言葉を残し、旅立とうとしていた。そのケンを町外れで待っていたのは、トキであった。荒野の果てでケンを呼ぶ何か。それは北斗神拳伝承者としての宿命。南斗乱れるとき、北斗現れり。シン、レイ、ユダ、そしてあと三人を含めた南斗六聖拳は、かつて皇帝の居城の六つの門を守る衛将と呼ばれ、そして北斗神拳は、その六星を見守る最強の拳と呼ばれた。南斗六星が生きるも死ぬも、その命運を握るのは、北斗神拳。核戦争の後、ユダの裏切りによって分裂した南斗六星と戦うことが、ケンに待つ宿命だとトキは語った。己の運命を示してくれたトキ、そして数々の恩恵に対しての感謝の気持ちを伝えに来たマミヤに別れを告げ、ケンは再び荒野へと旅立った。
聖帝正規軍。金色の鎧に身を包んだ彼らは、ウルの町の呼ばれる地で、非情な殺戮と侵攻を行っていた。彼らの目的は、D地区と呼ばれるその地方の征圧と、年端も行かぬ子供達であった。聖帝こと南斗六星拳の一人、サウザーは、あらゆる町や村から子供達を集め、聖帝十字陵と呼ばれる巨大な建造物の建築を強制させていたのである。子供達の血と涙の入り混じるその作業場を、満足そうに見下ろすサウザー。彼もまた拳王と同じく、この世紀末に覇天を目指す男の一人であった。拳王ですら戦いを避けたと言われるその男の正体とは・・・
水が戻ってきたことで祭騒ぎのウルの町。そんな中、ケンは先程の老人達に村を出るよう勧められていた。先程逃げ延びた兵が援軍を要請し、ケンを殺しに来ることは明らかだったからだ。しかしケンは、動かなかった。今村を出れば、村の人たちに迷惑が掛かることを理解していたからである。そうこうしているうち、遂に聖帝軍の援軍が到着。先程とは桁違いの数の兵に、何の躊躇もなく向かっていくケンの姿は、村人達の目には無謀にしか映らなかった。だが、次に彼らが目にしたのは、一人の男が何十人もの武装した男をなぎ倒していくという信じられない光景であった。あっという間に半数程を片付けたケンは、高々と跳躍したかと思うと、装甲車の上にいた隊長の背後へ。抵抗する間もなく秘孔を突かれた隊長は、手にした火炎放射器を使うこともなく爆死。相手が化物であることを悟った兵達は一斉に逃げ出し、町には再び平和が訪れたのだった。それに伴い、ケンにも新たな目的が生まれようとしていた。隊長が死に際に残した、南斗六聖拳聖帝サウザー。己の倒すべき新たな敵に向け、ケン再び歩き出す・・・
大きな玉座をあしらえた特製バイクに乗り、峡谷を行進する聖帝サウザー。その一団を崖の上から監視する3人の男。彼らは、子供達をサウザーに奪われ、それを取り戻しに来たゲリラであった。聖帝十字陵を一望するサウザーに向かい、背後から矢を放つゲリラ。だがサウザーは、首の動きだけでその矢を交わしてしまう。既にゲリラ達の気配を感じ取っていたのだ。なんとしてもサウザーは倒さねばならない。執念に後押しされて飛び出した3人は、用意していた銃などで雑魚を蹴散らし、一気にサウザーの元へ。だが、至近距離で放ったはずの散弾銃の弾は、虚しくサウザーの残像を通り抜けていった。信じられぬスピードで男の横に回りこんだサウザーは、ゲリラの一人を殺傷。更に瀕死のその男の顔を踏みつけ、残りの者達に武器を捨てるよう指示する。だがゲリラの二人は動けなかった。仲間への情け、そして子供達への情けが、二人の歩を止めさせていたのだ。その情けの元を断ち切ってやろう。そう言って無慈悲にも男の顔を踏み潰すサウザーに、怒りを爆発させるゲリラ達。しかしその力の差はあまりにも大きすぎた。情けさえ無ければお前達だけでも生き延びられたものを。切り裂かれ、崖下へと落下した二人の姿を見て、サウザーはそう呟いた。愛や情け、それは、帝王の星に生まれついたサウザーには無価値に等しいものであった。| [漫画版との違い] ・アニメオリジナルストーリー |
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